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1-5 前途多難

1-5 前途多難

NAさんがHP先輩にビールの缶を投げつけた理由は
お客様の待機で飲食禁止なのに缶ビールの飲みかけが待機室のテーブルに置いてあったからだった

HP先輩も痛そうだったが5分後には何事もなかったようにしている

そう

後にこの時以上に確信に至るのだが

この店はNAさんの独裁国家
と言っても過言ではなかったのだ

飲食店ではキッチン、レジ、ホールと各々配置が分かれているように

📍サロには

①フロントマン
②受付
③ホール
④キャスト待機
⑤レジ(キャッシャー)
の主に5箇所の配置がある

覚える順番としては
大体どこの店舗でも
①→②→③→④→⑤の順番がスタンダードで
数字が大きくなるにつれて重要度や女の子と接する
機会が増えるとされる

⑤ができるようになると次は女の子の管理を任される事になる

キャバクラと違い📍サロでは一人の人間がお店の女の子全員分の
シフトやメンタルケアをするキャスト担当というのがあるのだ

①に関してはお客様が来たらドアを開けるだけだから難しくなかったのだが②からちょっと難易度が上がる

そして俺がいた店では配置は
①と②と⑤の配置が物理的に近く
③と④が違うフロアという感じだった

📍サロの花形である⑤には幹部の人が中心にいるだが
OPEN〜18:00の間はNAさんが主にいるので
みんなが②の配置に入りたがらないのがすぐにわかった
営業開始と共にみんなが③と④の配置に入りたがるのだ。

俺と同期と言える入社3ヶ月未満の人間は5人いたが
1ヶ月足らずでいつの間にか俺だけになるのだ

理由は先ほどのビール缶の件もあったように
ミスをするとNAさん中心に罵声を浴びせさせられる

というより
この店には上の人間が下の人間に罵声を浴びさせるというのが
当然のような風習なんだとわかった

今だから冷静になって言えるが
誰がどう見ても劣悪な環境だったと思う
風俗業界といえど普通では決してない

入社して数日で

“来るところを間違えた”

と思ったのは言うまでもない

今でこそパワハラという言葉が一般的に認知されていたが
当時はそこまでそういうのがダメとされる世の中ではなかった気がする

暴力こそなかったが俺も含め同期の人間が色んな人から罵声を浴びせさせられいつしかミスをする事が本当に恐くなっていた
このような罵声を飛び交う環境は今までの人生で経験してこなかった為、夢に出てくるくらいこの仕事と職場に対してネガティブな気持ちが大きくなっていった

自分では意識していなかったがここに入社して一年以内に一度友達の結婚式に行った時に、俺は周りの友達から見るとか

今にも自害をするのではないか
鬱っぽい人間の顔つきで普通の状態ではなかったという

家から電車に向かって駅に着くと吐き気が起きて
時間まで駅のトイレに閉じこもるのがいつもの習慣になっていた

俺は学生時代、いじめられたことはなかったから
この例えが合ってるか分からないが
いじめってターゲットが潰れたら次のターゲットに変えて
いじめが起きたりするというイメージがある

まさにここもそれに近いものがあって
一定の間はある人がずっと怒られたり罵声を浴びせられさせられ
また違う人、そしてまた違う人

そしていよいよ
その順番が俺にもやってくるようになる

最初の1ヶ月〜2ヶ月はNAさんには勤務時間が終わった後に
ご飯をご馳走になったりお酒を飲みながら色んな話を聞かせてくれたりしたが

2ヶ月後には同期がほとんどいなくなった自分に
初めて後輩ができるのだ

その男の子の名前はN沢君

いわゆるイケメンで男から見ても女から見ても好感を持たれるタイプ

そのN沢君が入ってきて慣れてきたあたりから

NAさんの風向きが変わってくる

今まで違う人に向けられていた“あたり”が
とうとう俺に向けれたのだ

今より地獄に思える環境がとうとう始まったのだ

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