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平井プロ酷使問題を考える

早いものでオールスターが終わりシーズンは後半戦へ。
ライオンズ前半戦最大の話題と言えば「平井酷使問題」。やみくもに投げまくりファンからは心配の声とと首脳陣への疑問が上がり続ける状態。
7月にはライターの中島大輔さんによる小野コーチへのインタビューもあって大きな議論になりました。

そんな中でもいずれもリーグ最多44試合、48.2回を投げ、防御率1.85、被弾0は見事としか言いようがありません。ここでは平井プロの起用について色々考察していこうと思います。


①投手陣の状況


平井個人について見る前にライオンズ投手陣全体の状況を確認していきます。

■投手陣概況

先発=高橋光成、今井達也、十亀剣、本田圭佑、松本航、Z.ニール
リリーフAチーム=平井克典、増田達至、K.マーティン
リリーフBチーム=D.ヒース、森脇亮介、佐野泰雄、松本直晃

優勝した昨シーズンもリーグワーストの防御率4.24と大いに苦しみました。
そこからエースの菊池雄星が抜け、やり繰りに苦戦するのは正直分かり切っていました。と言いつつ高橋光、今井、本田の奮闘もあり先発は思ったより崩れていない印象。

■ライオンズ先発成績
2018年=防御率4.17、平均6.0回
2019年=防御率4.71、平均5.8回

いや防御率を見ると酷いんですけどね?
でも菊池が抜け、エースと目された多和田真三郎が絶不調、榎田大樹が離脱してる割には頑張ってます。
つまりリリーフが受け持つイニング数は去年とほぼ変わらない状況です。

そんな中でなぜここまで平井プロに負担が集中しているのか?
最大の理由はマーティン、ヒースが安定感に欠けること。
いずれも昨シーズン途中にチームに加わり、圧倒的な投球で優勝に大きく貢献しました。
今年はオープン戦の時点で増田・平井の状態がいいことが分かっていたので、「勝ちパクラスが4枚いれば大きなアドバンテージになる!」と思っていたのですが…。

■マーティン、ヒース成績

K.マーティン
2018年=22試合21.2回防御率2.08 K29.5% BB13.6%
2019年=29試合30.2回防御率2.93 K20.8% BB12.5%

D.ヒース
2018年=42試合39.2回防御率2.50 K33.5% BB5.1%
2019年=22試合20.2回防御率4.79 K24.0% BB12.5%

マーティンは一時期よりは安定してきましたが、奪三振率を大きく落としている状態。開幕当初からコントロールがアバウトだったのですが、契約の問題なのかずっと一軍にいます。
今井が先発を回避してブルペンデーとなった6月11日のジャイアンツ戦で3イニングを無失点に抑えるなど、意外とロングリリーフに適正を見せたりしました。

ヒースは開幕戦で1アウトも取れずにサヨナラ負けを喫すると約1か月の二軍調整。復帰して一時期は安定感を見せたものの、去年と比較するとコントロールを大きく乱しています。

ここで一つ疑問なのが2人の開幕までの調整について
外国人なのでスロー調整で行くのは分かるけど、それにしてもスローすぎた。オープン戦ではともに4試合4イニングを投げたのみでヒースは連投もなし。平井プロの8試合7.1回とは大きな開きがあります。


これが首脳陣の方針だったのか?本人たちの希望だったのか?投げられる状態じゃなかったのか?
理由はともかく2人の調整遅れは平井プロに大きな影響を与えてしまいました。

そしてリリーフBチームの不振も原因となっています。
開幕当初は平井プロと左右セットで起用されていた野田昇吾は5月2日に二軍落ち。
同じく左殺しの小川龍也は左打者を抑えられず、6月22日に二軍落ち。
5月に昇格してきたオールドルーキー森脇を勇気を持って大事な場面で使ってみたりしましたが結果はイマイチ。
結果的に平井プロ・増田という「どんな場面でも自信を持って出せる」ピッチャーと、それ以外の「接戦で出すには怖い」ピッチャーの2つにクッキリ二分されてしまいました。

②起用について


肝心の平井プロの起用について見ていこうと思います。
登板結果と登板時の状況をまとめたのがこちら。


例えば3登板目の4月2日であれば、3点リードの6回1アウトからマウンドに上がり、1.2回を投げて4点リードとなって降板したという感じです。
更に登板間隔と回跨ぎの有無についても調べてみました。

その上で一般的なセットアッパーであればあまりないであろう、
「30球以上」「6回以前の登板」「4点リードからの登板」「ビハインドからの登板」を色付けしてみました。

■登板間隔
回跨ぎ…16回
2連投…11回
3連投…2回

■登板イニング
6回…11回
7回…15回
8回…17回
10回…1回

■登板状況
同点…8回
1~3点リード…14回
4点以上リード…12回
1~3点ビハインド…8回
4点以上ビハインド…2回

うーんこれは・・・・・・。
恐る恐る一般的なセットアッパーの役目である「同点~3点リードの7・8回に登板して回跨ぎなし」でソートしてみました。

4月24日 ロッテ
4月25日 ロッテ
5月17日 オリックス
5月21日 ソフトバンク
5月26日 日本ハム
5月29日 楽天
6月4日 広島
6月19日 中日
6月20日 中日
7月5日 ロッテ

わずか10試合!44試合投げておいて本来の役目が10試合!すっくねえ!!!
いつも試合見てる方なら分かっているでしょうけど、「セットアッパー」「6回の火消し」「Bチームが行くべき場面」全てを担っているのが平井プロなのです。

そんな平井プロの起用ですが交流戦明けは多少落ち着いてきています。
7試合に登板していて、1度だけ7回2アウトから登板したもののその他は8回からの登板。まあ点差はまちまちなんですけど…。
それでも登板するイニングがある程度ハッキリしていれば準備の負担も減るので光明と捉えたいです。

③小野コーチインタビューについて


最初の話に戻って文集野球で中島大輔さんがされていた小野コーチへのインタビューについて。
今年から現場に戻った小野コーチはファンの懸念通り根性論の人という印象。
「管理は投手個人の仕事」「5点差6点差でも他にいない」「70試合投げて自信を付けさせる」などなど。
まあ正直予想通り過ぎて…。

まず「多少疲れは出ているだろうけど、我々はあくまでプロフェッショナルで、そういう自己管理をきちんとやらないと」という発言と、「ブルペンで肩を作る回数は各自に任せられ」と中島さんが記している部分。
それを管理するのがコーチの仕事じゃないの?

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201712160000152.html
阪神のブルペンにはルールがある。「肩を作るのは1度だけ」。金本阪神誕生からブルペンを任される金村暁投手コーチ(41)はその常識を覆した。
金村コーチ シーズンを戦う上で全然違ってくると思う。それは選手が体で感じているんじゃないかな。もっと言えば、選手寿命にも関わってくる

https://www.baseballchannel.jp/npb/27780/2/
吉井コーチ「3回以上、肩を作り直すようなときは、選手の疲労を考え、登板するべきではない」「選手の疲労面をコーチが考えるのは当たり前のことだと思います。選手には野球人生がある。長く野球を続けてもらうためには必要なことだと思います」

金村・吉井コーチは「令和の常識」、小野コーチは「昭和の常識」と言った感じ。
故障を予防するための研究が進むとともに、野手の打力が年々上がっている令和の時代。
CSが導入されて消化試合が減ったこともあり現代の野球は消耗戦。
選手がムダに疲労を溜めないようにコントロールするのが現代のコーチの常識だと思うんですが…。

次に「5点差6点差でも他にいない」。
これは球団の編成の責任と現場の責任とそれぞれあるかなという印象。
一応リリーフ4枚揃っている体で始まった今季ですが、リリーフはずっと手薄なのがライオンズ。
リリーフを軽視してそもそも駒がいないという編成サイドの責任は大きいと思います。

一方でいくらBチームが頼りないとはいえ、Bチームを出す勇気がなさすぎる起用も問題。
思い返してほしいんですけど、今年はリリーフが頼りない割に「勝ち試合をリリーフで落とした」ことって少なくないでしょうか。
単純に負け数で振り返れない部分もあるけど、リリーフに負けがついたのは10試合。
平井プロは6月1日の同点のマリーンズ戦でサヨナラ負けを喫した1試合。
増田は6月15日のスワローズ戦でリードを守り切れなかった1試合。
他にも同点のシーンから打たれて負けた小川や佐野の例もありますが、
リードをひっくり返されたのはヒースが横浜でグラスラ食らった試合くらいで数えるほど。

これはもちろんその場面で登板した投手(主に平井プロ)が頑張っているのもあるけど、
「ランナー出したら点があるけど平井」「昨日30球投げたけど平井」
「森脇がランナー出してHR打たれたら同点だから平井」みたいな「石橋を叩きまくる」継投をして、平井プロが何とか抑えてくれていることも理由の一つ。
首脳陣に本来求められているのは、
「5点リードしてるけどBチームが4失点までなら最後は増田が抑えてくれる」
「逆転される可能性はあるけど、平井の疲労リスクのほうが大きいからBチームを投げさせる」
「8回1点ビハインドで逆転できる可能性はあるけど、9回に松井裕樹を打てる可能性の少なさを考えて平井は温存」
みたいな大局観なんですがそれがまるでない。

「70試合投げる体力」なんて言ってますが、大局観を持ち合わせていればそんなに投げる必要がないのが分かりそうなものなんですが。
そりゃもちろん平井プロを温存して負ける可能性はありますが、
後半戦の平井プロに投げてもらうために、平井プロに来年以降も長く活躍してもらうために、
そしてそんな平井プロが仮に離脱した時のためにに他のピッチャーを育てておくために、もっと大事に使ってほしいものです。

どのチームにも短い期間だけ活躍したけど疲労によって壊れてしまったピッチャーがいます。
ライオンズでいえば岩崎哲也、豊田拓矢。2シーズンは持ちましたが残念ながら高橋朋己も同じようなものです。


「回跨ぎは楽しくなっちゃう」平井プロは極端な例ですが、プロ野球選手は誰しも試合に出たいもの。
いくら酷使で選手生命が短くなった例がたくさんあるとはいえ、自分は特別と思うのがプロの性でしょう。
一方でそんな例をたくさん見てきた首脳陣たちにはそれを止める責任がある。

ライオンズは補強が望めず育成で戦力を揃えていくチームです。選手を使い潰していたのでは安定した戦力を維持することはできません。
平井プロのために、そしてライオンズの未来のために、平井プロの起用法がまともになり、彼が太く長いプロ野球生活を送れることを願っています。


参考:


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