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おさんぽファミリーコンサートの楽屋話

はじめに

2019年8月9日金曜日、おさんぽリトミックファミリーコンサートが無事に終了しました。ご来場くださったみなさま、ありがとうございました。感想をお聞かせいただけると嬉しいです。

こんなプログラムでお送りしました。(リンク先に裏話があります)

1.パーカッションアンサンブル
2.プラスティックアニメ
3.懐かしの歌謡曲
4.か〜ちゃんず令和
5.中高生のガチ合唱「虹」
6.ピアノアラカルト(名曲を少しずつ)
7.ディズニーメドレー

終わってみたら、いろいろと反省点が出てきまして、来年度は、もっと違う形でやってみようと今から計画しています。大きな反省点のひとつとして、「わたしが何を伝えたかったのか、もっと言葉にして伝えればよかった」ということです。そうしたら、せっかくお越しくださった方に、もっと何か受け取っていただけたのになぁと思いました。

そこで、今日は、リベンジとして、読んでくださっている方だけにでも楽屋話をお伝えしようと思います!

新聞の取材と音楽のかたち

200名を超える親子に観覧いただき、また、新聞2社から取材していただきました。途中で、なんだか話が噛み合わないなぁ〜と思っていたら、どうやら、次から次へと違う子たちが出てきたと思っていたようで、「いえいえ、全部同じ子が着替えて出演していたんですよ」とお伝えしたらびっくりしていました。

確かに、そう言われてみれば、歌あり、創作ダンスあり、ガチ合唱あり、太鼓あり。そして、MCから舞台セッティング、音響まですべてをこなす子どもたちなんて、珍しいよなと思いました。リトミックはあらゆる音楽の基礎になるから、その後、どういう表現になるかはいろいろなんですね。わたしは、音響もMCも、その延長線上にあると思っています。

「この演目は出るより音響やりたい」という子も、「MCが一番楽しかった」という子もいて、そういうことを見つけることができたのはとても良いことだと思います。出演者になり、センターになることばかりが夢ではないんですね。他にもDVD撮影、照明、受付、誘導など、ひとつのステージは数多くの仕事で成り立っています。

本来は裏方の仕事も、紹介してあげればよかったなぁと後悔。出て歌うことには興味がないけど、カメラに喰いつく子がいても面白かったかもしれません。

段取りに囚われない

前日、音響テストのため、中高生とか〜ちゃんずのみが同じホールでリハーサルを行いました。

ひとつ、事件が起こりました。

中高生のオープニングで、パーカッションに合わせて、会場の子どもたちと一緒にボディーパーカッションを行うことにしていました。見本となって、子どもたちを盛り上げる役の子が6〜7人いました。

すると、リハーサルでは、その子たちがいないのです。

「え?どこでやってんの?」と聞くと、教室でのリハで、「まずはステージの横で見本を見せて、途中で客席に出て行く、ということに決めたから」と言って、パーテーションの裏、誰にも見えないところでやっていたのです!

わたしは「何のためにやるの?」と聞きました。「お客さんを盛り上げるため」「会場の子どもたちと一緒にやるため」と答えが出てきました。「だとしたら、決めた段取りなんかどうでもいいから、結果だけを考えなさい」と伝えました。

どうもうっかりしていると、こういうことが起きます。わたしは教育に問題があると思っていて、段取りをきっちり決めると、その通りにこなすことが重視され過ぎて、こんな風に、実際には意味のないことが行われてしまっていることは、子どものみならず、行政にも感じることがあります。仕事でもあります。

その後も、MCのしゃべりや、振り付けなど、「慣れてしまってこなしているだけ」になっていることは、「意味を考えなさい」と何度も思い出させました。

たとえば、しゃべりの中で「○○って知ってる?」というのが、繰り返すうちにセリフとなってしまい、そのあと、(テンパって)どんな反応か聞こうとしなくなることもあります。(やってみたら、大人でもそうなると思います)

子どもたちには、これから大人になって働くようになったときのために、「MCの子だけじゃなく、全員、聞いてね」と、以下のように教えました。

人の前で反応を伺いながら話すというのは、思ったよりもずっとずっと難しい。まだ自分が未熟だと思ううちは、自分の言葉になるまで、徹底的に練習すること。どこからでも言えるくらい。そうして、本番ではそれを1回壊して、自分の言葉で語ること。そうしないと、相手ありき、ということを忘れて、独りよがりになってしまう。

今回は、もう間に合わないから、「何を伝えるかということだけ考えて、つたなくてもいいから、自分の言葉で言ってごらん」と伝えました。本番は、それまでのセリフとは全然違う言い回しでしたが、一番よかったです。

子どもの誇りを信じる

か〜ちゃんずのリハには、子どもたちが付いてきている方もいらっしゃいました。せっかくだから、「やむを得ず連れてきた」だけじゃなく、子どももか〜ちゃんたちも、学びの場にしたらいいと思いました。

大きなホールに興奮して、子どもたちはキャーっと声を上げて走り回っていました。

ちょっと話は脱線するけど、本番中も騒いだりザワザワと落ち着かなかったりする子がいましたね。「親子コンサート」と謳っている以上、それも想定内だから、即座に出て行け、ということはありません。ある程度は許容されます。

でも、だからと言って、野放しでいいの?

日常、すごく気になります。電車の中、病院、レストラン。「日本は子連れに冷たい」っていう声がよく上がります。それもそうだと思います。わたしたち、子育てが終わった世代は、できるだけ手を貸してあげたいと思っています。

でも、だからと言って、親は何もしなくていいの?

みなさんは、どう思われますか?
わたしは、親は、たとえ無理だと分かっていても、「こういう場では静かにするものですよ」とマナーを教えなくてはいけないと思うのです。でも、簡単には聞かない。それは分かってますよ、経験済みだから。分かっているから、一生懸命、おとなしくさせようとする親には「いいですよ、お互い様だから」って言えると思うんです。

人に迷惑をかけようが騒ごうが、何の手も打たず放置して、世の中の温かさだけに期待するのは、わたしは違うと思います。

おとなしくさせるために鬼みたいな怒り方をして、うまくいかなければキレて子どもに暴力をふるい、もう2度と出かけない。

「大丈夫、子どもだからいいんですよ」と言われたら、「あ、そっか。いいんだ」と思って、今度は何もせずに放置。

あまりにも極端じゃない?って思います。

親としては、やはり、マナーを教えようとする。できる範囲でいいです。そうすると、世間が「社会で少しずつ覚えていけばいいよ」って許容してくれます。2歳の子供がじっとするのは難しいですよ、だけど、そのまま誰も何も教えなければ、その子が10歳になってもできるようにはなりません。

話をリハに戻しましょう。

簡単には言うこと聞かないですよ、子どもだもん。そして、お母さんたちもまだ新米なんだから、魔法みたいな言葉を持ち合わせていませんよ。

でも、やるんです!!自分なりに。言い過ぎ、やり過ぎもあるかもしれません。それでも。

「うるさーい!」でも「静かにしなさい!」「じっとして!」「走らない!!」「約束したでしょ!」「もう連れてこないよ!」でも、何でもいいですよ。

まず、やってみる。「うまくいかないなぁ〜。なんで言うこと聞かないんだろう」、考えることがとても大事。

しばらく様子を見ていたけど、ちっとも収まらないから、わたしが鶴の一声。

「人の音楽を邪魔してはいけません!」

全員が年齢に関係なく、ピタッ!シーン・・・となりまして、その後はちゃんと座っておりこうに見ていました。「座りなさい」も「走らない」も「静かにしなさい」も言っていません。

わたしは、子どもはみんな、「より良く生きていきたい」と願っていると信じています。だから、こういうときは、子どものプライド、誇りに訴えかけます。

参考にしてもいいけど、これは、わたしが20年に渡るリトミック指導の経験から身につけた技です。お母さんたちは試行錯誤し、悩み、失敗し、その上で、こういう参考事例をほんの少しのエッセンスとして取り入れたらいいんです。わたしだって、お母さんの時は七転八倒してたんだから。

開演前のアナウンスで、わたしはこういうことを言いました。

みなさん、今日は「おさんぽリトミック ファミリーコンサート」へ来てくださって、本当にありがとうございます。
コンサートを始める前にお願いがあります。
今日はお子さまも楽しめる会ですから、仕方のないことはお互いさまですが、これから大きくなって、音楽のコンサートを聴きに行く練習を少しだけしてみましょうね。

まず、写真やビデオの撮影はしないでください。

このホールの中では、食べたり飲んだりしないでください。でも今日は、お子さまが喉が渇いてぐずってしまう時、赤ちゃんにミルクをあげるときは、みなさんが「これなら大丈夫かな」と思うやり方で、そっと飲ませてあげてください。

お子さまが大きな声で泣いたりぐずったりしたときは、とても残念に思うと思いますが、少しお外に出て気分を変えてから戻って来てください。そのまま黙らせたり我慢させたりする方がかわいそうかもしれません。

トイレなどでお外に出るときは、できるだけ音楽が鳴っていないときにしましょう。

それから、音楽の途中に携帯電話の音が鳴ってしまうと、音楽の邪魔になってしまいますから、電源を切っておいてください。

それでは、もうすぐ始まりますので、お席について待っていてください。

来年からは、こんなことも付け加えようと、原稿に追記しました。

お父さん、お母さん、年齢的に静かに聞くのが無理でも、マナーを教え続けることはとても大事です。「静かにしなさい」と注意するのは、まずは親の役目です。親が注意しているからこそ、周囲は「いいですよ」と寛大に許してくれます。

みんな、ごめんなさい

当日は、中高生が朝9時から、幼稚園・小学生は10時から、か〜ちゃんずは12時に集合しました。

中高生には、「今から練習してうまくなるということはないんだから、"形づくる"ということを意識して演じること」と話しました。

実は、わたしの研修などが重なり、最終練習日が7月27日、10日間も空いていたのです。中高生はともかく、幼・小はきっとグダグダ、大騒ぎで来るだろうと思っていました。ところが、初めての広いリハ室なのに、来た順から奥に荷物を置き、しずかに座って待っているのです!(もちろん、中高生が誘導しました)

わたしは、まず、こんな話をしました。

「先生ね、まず、みんなに謝らないといけないことがある。最後の練習のとき、先生になんて言われたか、覚えてる?」

ここで、子どもたちが「目線!」「お客様のことを考える!」「立ち位置!」いろんなことを言ってくれました(笑)。心の中で「いっちょまえにかわいい〜」とほくそ笑みました。でも、全部違います。

「違うよ、もっとすごいこと言われたでしょう?」そしたら、伴奏してくれる裕美先生が、「もう出さへんで!って言われたんやろ?」とさすがの大正解を出してくれました。裕美先生はお仕事の都合で、最後のレッスンに来られなかったのに。

子どもたちは「あぁ〜〜、言われた、言われた」と照れ笑い。

「あのときね、自分の立つ位置すら把握できてなくて、自覚がない子は本当に出せないって思ってたの。そして、あれから10日間も空いてたでしょう。今日、絶対にみんなはさらに自覚なしで来るに違いない、だから、ドッカーンって雷落とさないといけないだろうと思って、もう、い〜〜っぱい、電気を貯めて来たんだよ。
でもさ、みんな、荷物置いてきちんと座って、"今日が本番だ"って、すごく気持ちを作って来たんだね。電気、全然要らんかった!みんなを信じていなくてごめんなさい」

それから歌を歌ったら、今までで一番良かったのです。実は、「恋のバカンス」という曲で、ディズニーランドで歌った子7名がコーラスで入っていたのですが、コーラスの方がうますぎて、まとまり過ぎて、声も出過ぎて、メインメロディーが聞こえないほどでした。

「みんな、先生、もう一個、謝らないといけない!先生、この曲がこういうメロディーだったって、今日初めて知ったよ!今まではコーラスがメインかと思ってた!こういう曲だったんだね。
10日も空いて、忘れてるに違いないって思っててごめんなさい。今までで一番良かった!この調子で歌ってね」

レッスン中、ふざけてばかりの子たちに対して、真面目にやりたい子が悩んでしまい、何度も「家で泣いている」と聞いていました。その子が、感動で涙を浮かべていました。

集団のバランスと持っている力

か〜ちゃんずに参加してくれたのは、17名のママたちでした。子どもの手が離れている方も、まだおっぱいを飲んでいる赤ちゃんも、パパが協力的な方も反対の方も、働いている方もパートの方も専業の方も、いろいろいらっしゃいました。

条件がいろいろなだけではなく、自然に笑顔になる方、笑顔がうまく作れない方、声が大きい方、声を出すのもやっという方、楽譜が読める方、読めない方、いろいろでした。

衣装を買いに行くことに積極的なアイデアを出し、どんどん動ける方もいれば、消極的な方もいました。

これは、わたしの教室、音楽教室ミューレ(サイトはこちら)でのひとつのポリシーでもあるのですが、明るく元気、活発で積極的、礼儀正しく、何をやらせても上手、歌もリズムも全部できる、そういう子はわざわざわたしの教室に来なくても、活躍できる場がいっぱいあるから、好きなところへ行けばいいと思うんです。わたしが成長を見守りたいのは、「これから伸びる子」です。「ミューレ以外に行くところがない」とか「ミューレじゃなかったら芽が出なかったかも」という子は大歓迎。

か〜ちゃんずも、歌いたい、楽譜読める、声が出る、笑顔が自然、衣装選びに苦労しない、積極的、そういう方はボーカル教室に行けばもっと本格的に教えてくれます。

わたしは、「こんな機会でもなければ、もしかしたら、一生、ステージに立って人前で歌う経験なんてなかったかもしれない」という方こそ、企画に乗っかって欲しかった。だって、そういうお母さんが歌っている姿こそ、おさんぽリトミックに連れてきてくれているお母さんたちは見たかったと思うんですね。

17名の中で、「声が出ていて、ピッチが正確に取れている方」は、おそらく数名だったと思います。これは、集団の不思議で、じゃあ、この人たちだけで組んだらもっと上手くなるのかというと、それはそれで別な粗が出てきて、バランスが崩れるのです。(それに、そうは言ってもどんぐりの背比べで、さほど差があるわけでもありません)

ミューレの子どもたちには、この「集団の在り方」をいつも教えます。目立つ子ばかりが良いのではなく、その周りを固めてくれる子がいるからこそ、バランスが良くなる。そして、世の中は前に出たい子ばかりじゃなく、脇を固めるのが好きという子がいます。そのポジションに最適な子がいます。その子たちの価値をきちんと理解し、尊重した上で自分がソロを取ったりセンターに立ったりすることが大事。

集団のポジションは、どこが欠けても成り立ちません。

だから、終わった後の感想で、「○○ができなくてすみませんでした」なんていうコメントがいくつもあったのですが、そんなことは気にしなくて良いんです。その方々の存在がなければ、ステージは成り立たなかったと思います。

それからもうひとつ、歌を教える上で、わたしが一番伝えたいことは、「まずは持っているものを最大限に活かす方法を教える」ということです。

みんな、「歌を習う」っていうと、ボイトレとか、技術的なことを学べば上手くなるって思っているんだけど、わたしは、大勢の合唱やコーラスを教えてきた経験から、それよりも、ひとりひとりが「今、ほんの30%くらいしか使えていない体の使い方を学んで、50%や60%に上げていくのが一番てっとり早い」と学びました。

これって、日常生活のあらゆる場面でも同じことが言えると思いませんか?

(1)集団のパワーは、いろんな人がいることでアップする
(2)今すでに持っている力を最大限に発揮するようにする

ステージでは、十分に体験できたと思うけど、それを、か〜ちゃんずがどのくらい自覚するかで、今後の人生はすごく変わるんじゃないかなって思いました。

次回やりたいこと

こうして書いてみると、わたしは、本番がどのくらい素晴らしかったかではなく、「ここへ行き着くまでの体験」を最も価値のあるものだと感じているんだな、と思いました。そして、お客様にも、本当はこれを体験してもらうことが、一番やりたいのです。

そこで!!

まだアイデア段階だけど、来年度は、レッスンをセットにしたらどうかなと思ってます。幼児、小学生、パパ&ママに分かれて、それぞれ練習して、リハーサルも体験して、本番のステージに上がってみよう!という企画。

即興が特徴のリトミックだから、きっと、何らかの形にはなると思うのです。来年に向けて、アイデアを固めてみます。

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