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名古屋市立大学図書館総合情報センター(愛知県)

 訪問した日から随分遅くなってしまいたが、今回は名古屋市立の大学図書館を覗いてみようと思い、4つの分館からなる名古屋市立大学図書館・総合情報センターを訪れた。
 この図書館は名古屋市立大学の4つのキャンパスにそれぞれ建てられており、それぞれのキャンパスが受け持つ学問分野に分けられた、本館の存在しない珍しい運営方針の図書館だった。4つの分館の中で今回小生が訪れたのは下の2館。

↑川澄分館(桜山) 名古屋市立大学医学部付属病院のすぐ隣に立地

↑山の畑分館 川澄分館から徒歩20分くらいの距離


1.開館日時と利用対象者

 川澄分館・山の畑分館の開館時間は共に9時~21時。山の畑分館は日曜日休館だが、川澄分館は学生のみ日曜日も利用できるというちょっと変わった開館日時を定めている。
 学外者は全館共通で身分証明証を提示のうえ手続きすれば閲覧可能、貸出は3冊までとされている。「児童、生徒およびお子さま連れの方のご利用や、受験勉強のための座席利用等、施設のみの利用はお断りいたします」という一文があるが、これは愛知県在住の18歳以上のみ利用できるという愛知県立大学よりも利用対象者の範囲がかなり広い。何より住所の制限なく貸出まで可能というのは公共図書館を含めても他に類を見ない。ただし、小生が受付で手続きをした際の対応を鑑みると、そこまで学外者を歓迎しているとは思えなかった。

2.立地条件とアクセス

 川澄分館は地下鉄桜通線の桜山駅真上なので、アクセスはとても良い。しかし山の畑分館は同駅から割りと離れており、ホームページで公開されているマップを見て感じるよりも体感的に歩くことになる。訪問した日は大変な猛暑日で、熱中症になりかけたのには閉口した。
 敷地内の立地だが、川澄分館は大学の校舎と付属病院の建物で少し迷った。建物の外観も他の建物と統一されたデザインで、あまり見栄えのするデザインではない。全体的に歴史を感じる建物だった。そして山の畑分館だが……こちらは本格的にわかりづらい立地だ。体育館やグラウンドを含むキャンパス内は植物が生い茂り、スマホでマップを見ながらでも完全に迷ってしまった。図書館の建物も他の校舎と繋がっており、見付けるのが大変だ。入り口も階段を上がって2階にあると、不便を感じる。率直に言って、全体的に古い印象を受けた。

3.館内設備と検索性

 川澄分館はかなり珍しい内部構造をした図書館でした。洋館のように入り口から入って目の前に2階へと続く大きな階段があり、今にもドレスをきた令嬢が降りてきそうな雰囲気がありました。ならばデザイン重視の内装なのかといわれればそうではなく、どちらかというと増え続ける蔵書に押されて利用者のスペースが侵略されているような圧迫感のある内部構造でした。特徴的なのは書庫に入るのに手続きが一切いらず、普通に館内から歩いて入れるという点でした。素知らぬ顔で学外者でも入れるようなセキュリティで、この構造は本当に大丈夫なのだろうかと思ってしまう。逆に考えれば、研究者にとっては書庫を気軽にブラウジングできるというのは強みなのだろう。
 山の畑分館は川澄分館よりも比較的わかりやすい内部構造をしていた。こちらも気軽に書庫へ入れてしまう。地階(入り口が2階なので実際は1階、一部は半地下)には洋書が大きな可動式書庫で大量に蔵書されていた。地階は人気が殆どなく、学生が一人静かな場所ですやすや寝ていた。
 どちらの分館も建物が古く、ブラウジングによる検索に不便を感じた。ただし書庫に気軽に入れるという構造は、セキュリティの問題を無視すれば利用者にとっては大変便利である。

4.図書資料とその他資料

 ここまで色々書いたが、実はこの大学図書館を訪れて最も驚いたのは蔵書だ。なにせこれら分館がそれぞれ立地するキャンパスの学問分野に特化した専門図書館のような蔵書を有していたのだから。川澄分館は川澄キャンパス(医学部)にあるだけあって圧倒的に医学の蔵書が多い。というより、医学以外の蔵書が殆どなかった。同じように山の畑分館も山の畑キャンパス(人文学部)にあるからか立地するからか、歴史、社会科学、文学に関する蔵書がほぼ全てだった。
 正直言って川澄分館などは文系出身である小生には目が回るような蔵書ばかりで、いくつか手にとって見たがドイツ語の文献が多いうえ、なかなかグロテスクな図表が掲載されている文献ばかりだ。逆に山の畑分館はウキウキで館内を探索したものだ。本館が存在せず、こうした専門分野に特化した複数の分館で構成される図書館というのも斬新だと感じた。
 ただ、川澄分館に関しては折角附属病院が近くにあるのだから、治療・病気に関する知識を求める患者向けにもっと利用しやすくなるようなシステムにすればいいのではないかと思った。(因みに付属病院には「愛の図書館」という病院図書館が備わっているらしいが、こちらは訪問できなかった)

5.サービスと総評

 接客はあまり良いとは言えない様子だった。恐らく学外の利用者をそれほど想定していないのか、川澄分館では学外者の入館手続きに不慣れさを感じたうえ、山の畑分館では何やら男性職員に不審そうに見られた。また、愛知県立大学でもそうであったが学外者の閲覧は申告制であり、余程目立つ外見でない限り、無言で学外者が入り口を通過しても止められるようなことはなさそうだった。地方自治体が母体の大学図書館独特のセキュリティの甘さとでも呼ぶべきものなのかもしれない。それにしたところで、書庫にまで簡単に入れてしまうこの図書館でこれはあまりにも無防備ではないか? 良い蔵書になんらかの不幸が起きる前に入口のセキュリティを見直して欲しい。
 特定主題についての図書を網羅的に探したいのであれば、特定主題に沿った
主題を扱うここの分館を利用するのも良い選択だと思うが、もう少し色々と改善して欲しい部分の多い図書館だった。


2017/08/04 ネロ造

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