5分前は14日

受験勉強も大詰めに差し掛かり塾帰りはいつも夜で真っ暗な星空が綺麗な頃だ。いつも日付が変わる前には家に着くのだがその日は母から連絡が来た。

1つ上の幼馴染は大学生になって遊んでばかりいるらしく、気が強いとは言っても女の子だからといつも心配されている。親同士も仲がいいので母からLINEで「塾終わったら迎えに行ってあげな」と来てる。今日も夜まで遊んでるらしい。

駅に行けば幼馴染がベンチに座っていて「おそい」といつも通りの言い方。急いで来ましたと言わんばかりに5メートルもない距離を小走りで駆け寄る。「いらないからあげる」といって飲みかけの缶コーヒーを僕に押し付け歩き始める。彼女の背を見ながらもらったコーヒーを飲むが「あまっ。ココアかよ。」一口飲んでコーヒーではないことに驚く。「ちゃんと見ろよ。てか飲んだら分かれ。」っていつもみたいに冷たく突っ込んでくる。缶を見ればチョコと書いてあってココアですらなかった。「チョコの缶なんてうってるんだ」とただ感心してると「なんじ?」と聞かれる。腕時計を見て「12時3分」と答えると幼馴染は「あ〜」と言って、じゃあいいやとそのまま黙りつづけ、5分もしないうちに家に着く。家の前で「バレンタインはもらえたの?」と聞かれて、「なんだっけそのイベント。」ととぼけるが、昼間も勉強ばかりでバレンタインだったことなんてすっかり忘れていたし、1つももらっていないなんて言えなかった。「そっか」と言って玄関を開け、またね。と言ってドアの閉まる音を聞く。

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やけに寝付けなくて次の朝寝坊していた。30分にはホームルームの鐘がなる。朝ごはんを食べなければギリギリかと急いだが3階の教室に向かう階段で鐘がなった。急いで教室に入るとまだ先生はいなくて、間に合ったことを喜びながら席に着き息を整える。その後すぐに先生がきて鐘が鳴り、ホームルームが始まる。なんだよさっきの予鈴かよと思いながら5分早めていた腕時計を見た。

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