アイウカオ

物語や詩などを書きます/長編ファンタジー『璦憑姫と渦蛇辜』を連載中/サブカルとアングラ…

アイウカオ

物語や詩などを書きます/長編ファンタジー『璦憑姫と渦蛇辜』を連載中/サブカルとアングラで育ちました/好きな作家はブルーノ・シュルツ

マガジン

  • のちほどゆっくり読みます。

    自分用。すぐ読めないとき、後でゆっくり読めるように保存させていただいてます。 (無言で入れてしまってごめんなさい!)

  • 連載小説「璦憑姫と渦蛇辜」

    <神代のはざまに 還ることのない故郷を夢見た。これは 少女の家族を探す旅。> 夏休みの冒険ファンタジー映画のノベライズをイメージした、神話世界の冒険譚。 タマヨリが嵐の後、島に漂着した男を助けたことから運命は一変する。

  • 詩。

    つまり、皮フと心臓です。

  • 雑記です。

    徒然なるままであったり。発作的であったり。読書感想文だったり。エッセイであったり、炸裂する脳内であったり。

  • 短編です。

    自作の短い小説、童話をまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

アイウカオをご案内します。

はじめまして もしくは やあ どうも お久しぶり 元気してた? 数ある中からどういうわけかアイウカオという人のページへ流れついてしまったあなたへ。 生きづらさに纏いつかれながら健やかに創作活動を続けている物書きです。 2019年からnoteに物語などを掲載しています。 とてもスーローペースですが作品も増えてきたので案内を設けることにしました。 気になるものがあったら、ぜひ読んでみて下さい。 ◇短編小説 マガジン『短編です。』にこれまでの作品をまとめました。 400字

    • 毛玉と木の芽とハンカチ[短編]

      あるいは4月について  桜は満開なのに季節が回れ右!をして突然寒くなった。 積み上がった洗濯待ちの洋服の中から、アヲがひっぱり出したのは毛玉の浮いたセーターだ。 あっちにもこっちにも丸い毛玉がぷつぷつ浮いているが、暖かさにはかえられない。 シーズンの始めは毛玉もまめに取っていたが、3月を過ぎ出番が少なくなるにつれて手入れもおろそかになってしまう。 それでもクリーニングに出さないのは、突如やってくる思いがけない寒い日に備えてのこと。 毎年この“最後の一回”が着納めとなる。

      • 再生

        物語をくれた歌

        こんばんは。連載中の璦憑姫と渦蛇辜を少しの間お休みします。 19章③までお読みいただくとピンとくるかも…と言うよりそのままですが元ちとせさんのワダツミの木にインスピレーションを得ています。元さんはもちろんですが城南海さんの歌は巫女のようでため息が出ます。 いつも読んでくださったり気にしてくれてありがとうございます。 中断多くてすみませんが脳ミソのキャパシティを確保できたらまた戻ります。ウカオ🪼

        • 璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」③

          「竜宮城………」 とタマヨリは呟いた。 「きものの中にある物を寄越せ」 とワダツミに云われ、タマヨリはすっと宝珠を差し出した。 ここへ来る前、賽果座の王の側近から取り上げたものだ。タマヨリにはただのきれいな玉に過ぎない。 しかし乙姫が鴉雀の兄烏鵲を使って手に入れた首飾りと、肚竭穢土が持つ王盃とその子格にあたるこの宝珠、三つを揃えると竜宮の門『海境』を開くことができるとされる。ただしそれ相応の術師が手順を踏まねば開かぬのが神の門だ。 「俺にこれは扱えぬが………」 ワダ

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        • のちほどゆっくり読みます。
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        • 連載小説「璦憑姫と渦蛇辜」
          64本
        • 詩。
          21本
        • 雑記です。
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        • 短編です。
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        • 読みかえしたいnote
          25本

        記事

          璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」②

           海賊達の視線がワダツミと浪の間を行き来する中で、タマヨリは震えていた。 それまで船上にどれだけ大声がとびかっても眠り続けていた亜呼弥が、火がついたように泣き出した。 「おうおうどうした、どうした」 コトウがあやしても海上に甲高い声をまき散らすばかりで、赤ん坊は一向に泣き止まない。 「ほらほらかしてご覧」 と舟を跨いでイオメが受け取り、乳を含ませようとするが赤ん坊は見向きもしない。 訴えるように泣く赤子のすぐ近くで、タマヨリの影が膨らんでいた。この時はまだ海賊達は礁玉

          璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」②

          璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」①

           白い月と黒い海のはざまを死人に守られた舟がどこかを目指して進むのを、磯螺は見ていた。 その少し前、海の東に鮮血が広がるのも見た。 鯱が人を食ったのだ。ひとりを食いかけ、その脚を齧ったたところに別のひとりが飛び込んだ。 食うと食われるは海の中では絶え間なく起こっていることで珍しくもない。見るべきものはひとつだけだった。水鏡を橋渡しとした<道>からワダツミが現れたがその腕を失っていた。 鯱が咥えた『波濤』を追ってきたのだろう。水鏡の道を開いた術者の姿はない。代わりに人の男が同じ

          璦憑姫と渦蛇辜 19章「父と娘」①

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」④

           白々とした月に照らされて賽果座から出た舟は二艘きりだった。  賽果座の王は和睦の受け入れへと迷わず舵を切った。海賊達を岐勿鹿皇子と、おそらく相伴っているであろう『大海神』のいる沖の小島に近づけさせぬよう計らっていた。 昨日、小島の包囲に水軍として出した舟は、王の配下によって陸に撤収され、見張りのため沖に出された数隻にも王直下の水夫が配されている。 淤緑耳は礁玉が逃げたと聞いたが驚きはしなかった。 ワダツミの残した威光を最大限に利用することで、王族を手懐け、海賊の頭はどうや

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」④

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」③

           波座の様子がいつもと違うと礁玉は感じていた。 口に『波濤』を咥え、鯱はあらん限りの速さで陸から離れていく。咥えられた鉾の柄に掴まった礁玉はその速さに振りきられないように鯱の腹に身を寄せ、水の圧の中を進んだ。 切り落とされたワダツミの腕は固い意志で未だ『波濤』を握っていた。 ワダツミがどの程度の距離なら鉾を呼び戻すことができるのか分からない。だからできるだけ遠くへ離れなければならない。『波濤』がなければ水の獣や水柱を生み出すことができないのは、共に戦場にいた日々から予測がつ

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」③

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」②

           昨日の狂乱が嘘のように鎮まりかえった浜辺にタマヨリとワダツミは腰をおろしていた。いつもよりいくらか波の高い鈍色の海を眼前に、浅い眠りを繰り返していた。どちらかが眠ればどちらかが覚める。 何も問わず何も語らないふたりの間を小蟹が横切っていく。寄せる波に洗われる小石は引く波にカタカタと鳴った。 陽が天頂に届こうとするころ、歩み寄ってくる人影が見えた。 「久しいな」 とワダツミに向けて声を発したのは礁玉だった。 「礁姐………!」 「よくここが分かったな」とワダツミは応じた

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」②

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」①

          「それが和睦の条件というのだな、淤緑耳殿」 死者の行軍から一夜明けようとする頃、巫女の社を訪れる者があった。夜通し焚かれた松明が熾火になったまま忘れ去られ、社の護人もこの黎明の客人の動向ばかり気にかけている。 謁見の間の、そのまた奥の間に通されたのは肚竭穢土 の皇子の側近淤緑耳とその息子の黄耳である。 岐勿鹿皇子の命を受けた老爺は息子に自らを担がせ夜の海を渡った。月明かりだけを頼りに敵の最奥まで辿りついた密使に、賽果座の王一派は肝を抜かれた。 海を割って肚竭穢土が攻めいって

          璦憑姫と渦蛇辜 18章「月代の船出」①

          連載再開するよー

          気を抜くと間があいてしまう連載長編「タマヨリヒメとワダツミ」の掲載の準備に入りました。 いまさら誰が読んでくれるんだよーという気もしつつ、やはり最後まで書くのが務めと心を強くして書いてます。 おさらいとして大事なポイントと、トリビアとしてさほど大事でないことをそれぞれ書きました。 本編再開までのウォーミングアップにご利用下さい。 Q.礁玉一味の関係性ってどうなっているの? では生い立ちからみていきましょう〜 A.礁玉と亥去火→同じ村の出身。(いとこにあたる) A.浪

          連載再開するよー

          我等の騎士と錬金術師{序}#三つの願い

          ➖序文➖ むかしむかし、ある国のある街のある路地裏に乞食娼婦がいました。 ある時、娼婦はその路地裏で三つ子を産みました。 三つ子のうち最初に母のお腹から出てきた子は、目が見えませんでした。 次に出てきた子は耳が聞こえませんでした。 最後に出てきた子は口がきけませんでした。 娼婦は乞食仲間に子どもを貸し出しそれで幾らかを得ました。 同じ乞食なら赤ん坊を抱いていた方が貰いが多いのです。 赤ん坊は四つ五つの年になると自分で物乞いをするようになりました。 ある日、娼婦は客の荷物

          我等の騎士と錬金術師{序}#三つの願い

          今、私のいるところ

          2023年も終わるし年末はなにかと忙しいのでちょっと早いけど、ふりかえりをしてみます。 特筆することは、文学フリマ36へのお出かけとムラサキ氏の企画 #NEMURENUにおじゃまさせていただいたこと、全期間のスキが5500に到達したこと(そのキリ番のスキをくださった方がまたうれしかった)かな。 ◇意味のないこと同士が手を取りあったら脳に余裕を感じた2023年 毎年嫌でも歳をとる。 見た目の老化は見れば分かるが(泣)、見えない老化も結構厄介。 例えば脳!固有名詞が出てこない

          今、私のいるところ

          そらノート[写真と言葉]

          そらノート[写真と言葉]

          璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」③

          「ああワダツミか………」 還っていく魂の丸く白く光る幽けき光の群れの中にふたりはいた。 しばし彼の腕の中でそれを見送った後、 「兄ぃさも還ったのか……」 とタマヨリは尋ねた。ワダツミはうなづく。 「会ったか?」 「ああ、会った」 「なんか、話したか?」 「俺をタマとよんだ」 「……そうか」 タマヨリは満足そうに笑った。晴れ晴れとした、八重の蕾がほころぶにも似た笑みだった。 「そうか、そうか……じゃあもうなんてことないさぁなぁ」 ワダツミの腕から降りたタマ

          璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」③

          璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」②

           砂の上にぴくりともせず横たわっている妹を見ながら海彦は思案した。 「地べたで寝るは風邪の元ってお婆さがよく云っとったでな」 キョロキョロと首を動かすが見えているのかいないのか、いずれにせよタマヨリを寝かせて置くような場所はない。 「うううむ」 と唸ってうろつきはじめると、背後から大挙して上陸する魚類に驚きふらついて、足元にある『いさら』を踏みつけた。 今にも影にーーー巨大な魚影の中に『いさら』が吸い込まれそうになっているのに気づき、何を思うよりも先に飛びついて影から

          璦憑姫と渦蛇辜 17章「おまえが唄ってくれるなら」②