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BUCK-TICK全アルバムレビュー③肉からMETALまでOK(補助教材付き)




山田です。
BUCK-TICKの全アルバムのレビューをやっています。


前回は『BUCK-TICKが黒つったら白でも黒』と題し、「悪の華」〜「darker than darkness」のBUCK-TICKの理不尽さについて書きました。


ぽつぽつ増えていくいいね欄を見ながら、全部のアルバムにそれぞれファンがいるのを感じました。分かる。
読んでくれる人がいると分かったので、誰が読むねん…みたいな余計なことは考えずに自由に楽しく書くことができました。やったー

今回は「Six/Nine」〜「Mona Lisa OVERDRIVE」までをやっていきます。

引き続き、各作品を深く理解するために参考にした他アーティストの作品を(音楽に限らずに)書いておくことにします。
BUCK-TICKが好きな人にもそうでない人にもぜひ読んでいただきたいです。
それでは早速いきます。


●Six/Nine(1995)
エロと自意識とブラックユーモアと死がぐちゃぐちゃに混ざったあまりにも痛快なグランジ夢芝居。
櫻井敦司が演じるどうしようもない男のくだらないワンマンショーを見てる感じがする。
露骨に性的であったり、道化を演じておきながら気を引くように自死を仄めかしてきたりと、負のナルシシズムがエスカレートして最終的に被害妄想で自爆してる感じがクソ情けない。
明らかに大丈夫じゃなさそうなのにパフォーマンスは妙にイキイキしていて、どこまで本気でどこまでがジョークなのか有耶無耶にしてる感じもかえって臆病さを際立たせている。
しかしこの櫻井敦司のインチキ臭さこそが今作の命綱として機能しているように思う。
インチキ臭いからこそ彼が無茶すればするだけ馬鹿馬鹿しくなってくるし、彼の言葉を笑えば笑うほど鼓動の「ごめんなさい ありがとう」の輝きが増してきていつまでも心の中に残る。
こんな危ないブラックユーモアの成立のさせ方、メッセージの忍ばせ方はバンドメンバーが信頼し合ってないと成立しないはず。
櫻井敦司の表現者としての凄さを嫌でも思い知らされるし、このアルバムはこの先も決して色褪せることはなく聴かれ続けると思う。
シックスナインフォーエバー
余談:あっちゃんって限りなくおっぱい派なんだと思う

○参考にしたもの
同じ時期のTHE YELLOW MONKEYのライブでのパフォーマンス
吉井和哉と櫻井敦司って同じ雰囲気持ってるよなと思う

●COSMOS(1996)
Six/Nineで拗ね終わったのか、今までの作品の中で一番言葉がストレートに響いてくる。
メンバーのビジュアルも(ヤガミトール以外)魔界の方みたいな感じからカッコいいお兄ちゃんぽくなっていて、カッコいい。
全体的に気取っていない感じというか、悪の華で必死に完封しようとしていた素直さやポップな感じが垣間見える。
とは言え「darker than darkness」以降のエクスペリメンタルな雰囲気は続いていて、Tight Ropeは「悪の華」のPREASURE LANDにあった浮遊感を思わせるし、今までの持ち味が全部活かされた集大成的なアルバムにも思える。
キャンディはとびきりキュートな胸キュングランジで、手放しに愛を讃える多幸感に溢れた感じはABRACADABRAのユリイカに通ずるものがあると思う。
サウンド面については、私は90年代のオルタナにあまり明るくないというかそもそも今の子なので、King GnuやGEZAN、踊ってばかりの国など2010年代の一筋縄では行かないオルタナバンドを聴くようなテンションで聴くのがいちばんしっくり来た。
ここら辺で私の中で今井寿×櫻井敦司は常田×井口説というのが浮上してきて、後のOLODでそれが確信に変わる。King Gnuの新譜良かったねえ。

○参考にしたもの
・The Breeders 「Last Spanish」
・Sonic Youth「Dirty」
・踊ってばかりの国「世界が見たい」
・1996年発行「GIGS」のBUCK-TICK特集記事(ギタリスト2名はなんのエフェクターを使ったのかほぼ憶えてないってか分かってなかったらしい。ビックリした。)


●SEXY STREAM NINER(1997)
この良さを分かってる人ってなんか通っぽくてかっこいい。BUCK-TICKのアルバムの中でもツンかデレかで言うと完全にツンだから。
BUCK-TICKは我々を試し続ける。そして打ちのめす。分かってきた。
ドラムのタイトな音の処理やトランスっぽいビヨビヨシンセが入ったミクスチャロックのタナトスで幕を開けるとは、1曲目からかなり飛ばしている。ずっと追っていたファンは面食らったに違いない。
間髪入れずにブレイクコアとギターのノイズだけでいききってしまうインストの表題曲SEXY STREAM LENERとかもかなり容赦がない。
前作のノイズはどこかぬくもりがあったが、今作のそれは冷たくて無慈悲である。
EBM〜インダストリアルを経てダンスミュージックに接近しているこの感じは流石SOFT BALLETとICONOCLASMで互角にやり合っただけあるなという骨太さ。SOFT BALLETが孤立せずに孤高のグループとしていられたのはBUCK-TICKのおかげである。
それにしてもこのアルバムの質感は独特で、
バンドとしての強い肉体性を保ちながらも浮遊感があって、ポーティスヘッドのDUMMY、マッシヴアタックのBlue Linesに並ぶようなトリップポップの名盤としても聴ける。
同年リリースのSUGIZOとINORANのソロもこういう雰囲気があって、97年のV系は今聴くと楽しい。

○参考にしたもの
・King Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」
・SOFT BALLETのベスト盤
・ポーティスヘッド「DUMMY」
・マッシヴアタック「Blue Lines」
・SUGIZO「TRUTH?」←必聴‼︎‼︎
・INORAN「想」


●ONE LIFE,ONE DEATH(2000)
前作にあったデジタル×バンド感はそのまま、よりアッパーで弾けてるカッッッッコよすぎるアルバム。
ミクスチャと言ってもいいけど、BUCK-TICKにはチェケラッチョな感じというかR&Bの要素をほぼ感じないのでここはデジタル×バンド感と言い切りたい。
サイバーパンク×死という世界観は00年前後の日本の他のカルチャーからも感じていて、リングとかserial experiments lainの同じ匂いがする。攻殻機動隊とかもそうなのかな。
まそれはいいとして、ヤガミトールはこの頃にクリックを体内に埋め込む手術をしてサイボーグになったらしい。そして両手が空いた樋口豊はより歪みまくり動きまくりで、本当に恐ろしい兄弟である。
CHECK UP?や細胞具:ドリー:PHAMTOMでの今井寿の歪んだボーカルもカッコよくて、このニヒルでサディスティックな色気とノイジーな感じはKing Gnuの常田に通じるものがあるし、この癖のある合いの手にも負けないフロントマンとしての流石の存在感を放つ櫻井敦司もヤバいし、この感じは井口理も持っている。
このアルバムを聴いてすぐに良さに気づけたのは20歳そこそこでKing Gnuに出会い、Y2Kリバイバルに完全に乗っかってるZ世代ならではの感性だと思う。
このアルバムはすごく今っぽい。再評価するなら今。

○参考にしたもの
・King Gnu「THE GREATEST UNKNOWN」
・リング
・serial experiments lain
・Apple Musicにある2000年邦楽のプレイリスト


●極東I LOVE YOU(2002)
時代性を孕んだシリアスなアルバムで、これを聴くのは気合いがいる。疾風のブレードランナーからの21st Cherry Boyで新時代を迎えたワクワクドキドキで胸いっぱいになる。
しかし謝肉祭-カーニバル-でハッとさせられる。2002年の混沌と現在の混沌はまた別物なんだろうけど、現実の残酷さに打ちひしがれながらそれでも出来るだけ世界を愛したいというメッセージは今を生きる私に必要だった。
極東より愛を込めての危機迫るような叫びも、brilliantの優しさも必要だった。
もう少し聴き込みたいけどこの切実さがしんどい時がある。目を背けずにいるには、あまりにも世界は残酷。燃え盛る火の中で高らかに歌う彼のような強さが欲しい。
そしてこのアルバムが古臭くて時代遅れに聴こえるような未来を望んでる。
これはもはやレビューというか、率直な感想です。

○参考にしたもの
・ファイトクラブ


●Mona Lisa OVERDRIVE(2003)
今井寿のレインボーな部分が全開になっている超ホットなガンギマリアルバム。
紫色のカレーとか睡眠薬で真っ青になった舌を見た時に感じる不気味さというか、人工的で過剰にポップなものが持つ独特の怖さに満ちていて、しかしその感じがたまらなくかっこいい。
ガバかと思ったらヘビメタ、とか怖いだろ。
今井寿が捕まったのって絶対この時期だと思ってた。LSDって一生体内に残るのか?
ノイジーなテンションはdarker than darknessから続いているものの、今作は極彩色で甘ったるい感じがある。
インダストリアルにちなんで鉄で例えると、鉄板をハンマーでガンガン叩いているような音から、変な色で塗られたバネがボヨンボヨン跳ねている音に変わったような。妙な多幸感が癖になる。
歌詞がエロい曲が多いのも多幸感を加速させていて、Sid Vicious ON THE BEACHは今井寿のキュートでアシッドな魅力が詰まっていてかなりかわいい。櫻井敦司のパートがフック部分だけなのも、「あっちゃんがバカンス中なので、仕方なく今井が歌ってます」感があって萌える。
ピカピカ光る電球のグラスに入ったピンク色のソーダとかを飲みながらギャル神輿(ギャル神輿って知ってるか?)に乗ってるみたいなハピハピ極楽アルバムなので、元気のない時はこれを聴いて盛り上がろう!

○参考にしたもの
・岡崎京子「ヘルタースケルター」
・チャーリーとチョコレート工場
・真夜中の弥次さん喜多さん
もっとこういう系の音楽聴いてみたい。このアルバム好きならこれ聴くといいよみたいなのあったら、匂わせ程度でも良いから教えてください


今回はここまで。
この時期が一番好きなので熱が入りました。

次は「十三階は月光」だ!

引き続きお付き合いください。
ありがとうございます。
以上ですニャ

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