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BUCK-TICK全アルバムレビュー⑥Go-Go B-T TRAIN(補助教材付き)



山田です。
BUCK-TICKの全アルバムのレビューをやっています。

前回は『未来しか見えねぇ!』と題し、「夢見る宇宙」〜「No.0」について書きました。

おかげさまで悪意のある批判などに全く触れることなくここまで来れました。
続けて読んでくださった方、ありがとうございます。
改めてBUCK-TICKファンの方の懐の大きさを感じました。

今回は「ABRACADABRA」「異空」をやっていきます。

引き続き、各作品を深く理解するために参考にした他アーティストの作品を(音楽に限らずに)書いておくことにします。
BUCK-TICKが好きな人にもそうでない人にもぜひ読んでいただきたいです。
それでは早速いきます。


●ABRACADABRA(2020)
初めてリアルタイムで聴いたアルバムなので思い入れがある。
当時の音楽鑑賞メモには「魔王、日光を克服」と書かれてあった。自分ってこの頃からバカなんだ
当時はコロナ禍真っ只中でどうしていいか分からなかった。
応援ソング、内省的な音楽、どれも聴きたくなくて家でNiziUの縄跳びダンスだけやってた。そんな時にこのアルバムに触れようと思ったのは、新譜の中で1番ジャケットが明るかったから。
聴いてびっくりした。希望に満ち溢れている音楽をやってることが意外だった。
頼もしかった。どこにも嘘がないし、空元気とかじゃなくてバンドの中から漲るパワーがアルバム全体にぎゅうぎゅうに詰まってる感じがした。
このアルバムを聴いている時だけは正気に戻れた。現実逃避にすら疲れてたんだと思う。
キラキラのシンセとヒロイックなエレキギター、うねるベース。ついつい大きい音で聴きたくなる。
それでいて音の一つ一つが分離していてミックスがごちゃごちゃしてないのもすごい。
エンジニアの技術はもちろん、アンサンブルと音色の組み合わせが絶妙なんだと思う。
歪みもリバーブもしっかり伝わってくる。
これだけ音を重ねて尚、透き通っていて爽やかに聴こえるのってどういうことなんだ?
アルバムを通して聴くと、淀んだ心を浄化してくれるようなイントロダクションPEACEから徐々にエネルギーが充電されていくのが分かる。
あでもダンス天国は最初びっくりした。CREAM SODA、狂気のデッドヒート、薔薇色十字団を経た今ならすぐ星野の仕業だと分かるけど。もう慣れたもんよ
そしてMoonlight Escapeからのユリイカは何度聴いてもグッとくる。
ここから逃げてしまいたい気持ちと、ガタガタ文句言わないで前に進みたい気持ちは自分の中で相反するものだった。
この2曲はどちらの自分もまとめて抱きしめてくれる。
現状を変えたいしもっと楽しくなりたい!とかシラフで思える。そして忘却で深呼吸する。
気づけばBUCK-TICKが好きになっていた。
BUCK-TICKを応援してるといいことがあるんだろうと思うようになっていた。

○参考にしたもの
・THE NOVEMBERS「At The Beginning」
ずっと好きなバンドで、彼らをよく理解するためにBUCK-TICKを聴き始めた。根底にある打たれ強さのようなものが似てるなと思っていて、2組とも信頼している。
・Apple Musicにある2020年邦楽プレイリスト
嫌なこと全部思い出した。日高屋で毎日聴いた


●異空(2023)
黒い。洗練された暗黒の美に、恍惚として聴き入ってしまう。
上質な洋服は黒がとにかく黒いらしい。
絵の具を全部混ぜると黒になる。
黒の漆器は使えば使うほど艶が出る。
異空の黒もそんな感じだ。
10月のあの日から今に至るまで現実逃避のタイムスリップのようにBUCK-TICKの過去作品を聴いていたが、緊張感の続くこのアルバムを聴いて2023年の今この瞬間に帰ってきた。
コロナ禍の希望だったABRACADABRAと対になるようなシリアスで重厚な世界観に、深淵とずっと目が合い続けているような気まずさを覚える。
極東より愛を込めてにあった、拳を突き上げたくなるような疾走感は鳴りを潜め、混乱や争いや死の香りがアルバム全体に横たわっている。
しかし彼らは死を美化しない。命の尊さを知っていて生きることに誠実であるからこそ、このアルバムはこんなにも重くてあたたかい。
彼らはエンタテイナーとしても天才なのにものすごく正直だ。
正直でいるのは難しい。彼らが唯一無二の存在なのは、正直を貫いたからだと思う。
さよならシェルターでの自己犠牲の精神、太陽とイカロスでの為すべきことのために命を使い果たしても後悔は無いとする精神、櫻井敦司の詞にも何ひとつ嘘は無かったはずだ。
彼はB-T TRAINから銀河鉄道の車両に移って、よだかの星になったのだろうか?
このアルバムを感動的な作品とするにはまだ早い。
忘れたくないことを黒に染み込ませるように、そして艶が出るまでこのアルバムを聴く。
早くライブに行ってこのアルバムの曲が本来持っている鮮やかさを知りたい。
喜びで上塗りしていきたいし、その機会はある。深淵よりも魅力的な景色が必ず観られる。
2024年のBUCK-TICKよ、異空を超えてくれ!

○参考にしたもの
・映画「老ナルキソス」
・2012年のプラダのランウェイ
・THE NOVEMBERS「THE NOVEMBERS」


今回はここまでです。
次回以降は、新譜のリリースやライブの感想など、その都度書いていくつもりです。


最後に自分語りを…

この記事が多くの方に届くことは全くの予想外でした。
なぜならこれは未来の新規ファンに向けて書いたものだからです。

私は音楽や映画について書かれた個人ブログを読んで育ちました。
10年以上前のブログに書かれた映画の詳細なレビューや当時のライブレポからその作品に触れることもあるし、愛に溢れた文章を読んでいるとなんとも言えない感謝と愛おしさを感じます。
名前も知らないオタクへの恩返しとして、数年後の新規ファンがもっとBUCK-TICK好きになれる手助けになるようなものを残したくて、この企画をはじめました。
アルバムを理解するにあたって参考にしたものをわざわざ列挙したのもそのためです。
読み手としてこういうのが欲しいなと常々思っていたし面白い試みだとも思ってました。

数年後の誰かのためになればいいから、別に今誰かに評価されたいとも思っていませんでした。

ところが第一回から、恐らく私よりファン歴も長くBUCK-TICKをよく知っている方からの好意的なリアクションがありました。
ファンの方が私の記事をきっかけにして彼らの魅力を語っているのをリアルタイムで見ると、自分もバクチク現象のひとつになれたような気がしてわくわくしました。
やっぱり書いて良かったです。
全てのアルバムを愛せる自信がありましたから、必ず書き切れるとも思っていました。

HURRY UP MODEも
SEXAL ×××××!も
SEVENTH HEAVENも
TABOOも
悪の華も
狂った太陽も
殺シの調べも
darker than darknessも
Six/Nineも
COSMOSも
SEXY STRAM LINERも
ONE,LIFE ONE,DEATHも
極東 I LOVE YOUも
Mona Lisa OVERDRIVEも
十三階は月光も
天使のリボルバーも
memento moriも
RAZZLE DAZZLEも
夢見る宇宙も
或いはアナーキーも
アトム 未来派 No.9も
No.0も
ABRACADABRAも
異空も全部好きです。
全部がかっこよくて嬉しかった。
だからレビューを書くのが楽しかった。
たくさん聴いたから、今後BUCK-TICKのライブに行ってもあっちゃんの歌は心の中から聴こえてくるはずだ。
悲しいことはなにもない!



ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
良い年末年始をお過ごしください。
以上ですニャ

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