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BUCK-TICK全アルバムレビュー②BUCK-TICKが黒つったら白でも黒(補助教材付き)


山田です。
BUCK-TICKの全アルバムのレビューをやっています。


前回は『誕生から羽化』と題し、「HARRY UP MODE」〜「TABOO」のレビューを書きました。
読んでくださった方がどんどん広めてくれたおかげで、想像以上に多くの人に届きました。ありがとうございます。
今回は「悪の華」〜「darker than darkness」について書きます。
引き続き、各作品を深く理解するために参考にした他アーティストの作品を(音楽に限らずに)書いておくことにします。

それでは早速いきます。



●悪の華(1990)
お勉強から帰ってきたばかりの今井寿が、またやってくれた。復帰作のタイトルが「悪の華」というのは人を舐めすぎている。
デカダンでオカルティックでカビ臭く、全てがBUCK-TICKにしかない要素で出来たハンパないアルバムだと思う。
特にLOVE ME〜PLEASURE LANDのリードギターの微妙に真ん中を外しているような独特のピッチとか超ニューウェーブで天才的にかっこいい。
ただ、自分たちのシャバい部分を何が何でも封印しようとしてる極端なストイックさがたまに猛烈に面白い時があって、絶対に茶化してはいけないダークな雰囲気がかえって面白さに拍車をかけている。
多少無理があると分かりつつも引っ込みがつかなくなって群馬の不良魂で周りを黙らせ続けた結果.「BUCK-TICKが言うには、ゴスってこういうものらしい」ということになり、そのままV系の様式美として定着したものとか結構あると思う。
年末にバクチク現象の開催が発表された時はなんて頑固なバンドなんだと思ったけど、この頃からだったんだ。これからもそうあって欲しい。


○参考にしたもの/やったこと
・夜中に聴いたらもっとかっこよかった
・コクトーツインズ「Treasure」
・ニューオーダー「Technique」
・ボードレールの詩 「酔へ!」
・あがた森魚「冬のサナトリウム」
あがた森魚は日本語×哀愁×耽美のドンだと思っていて、UKの耽美さよりも個人的にしっくりくる。90年代の邦楽が好きなら聴いた方がいい。吸収できる耽美の量が増えた。



●狂った太陽(1991)
悪の華で貫いた暗黒の美に、刹那的で衝動的なブチギレエナジーがプラスされた冴えた一枚。
初めて聴いた時はよく分からなかったが、何度も聴いたり参考音源を探しているうちに印象が大きく変わった。
ポジティブとアッパーの境界線を蛇行しながら暴走するスピード、12弦ギターとスピリチュアルなコーラスで引っ張って引っ張って最終的に泣かせるJUPITERなど有名な曲も入っていてBUCK-TICK入門編としてこれを挙げる人も多いみたいだが、ジェットコースターの如くハチャメチャであるので覚悟は必要。
また櫻井敦司による赤裸々で自意識過剰で激情的な歌詞も聴きどころであり、同時にハマるハードルを上げている。
音楽的には80〜90sのUKゴスの影響を感じるのでそこら辺を探して聴いてるがいまいち解像度が上がらないので、もう少し時間を置いてまた聴く。

○参考にしたもの
・Dead Can Dance「Dead Can Dance」
・THE YELLOW MONKEY「smile」
・Apple Musicにある1991年邦楽ヒッツのプレイリスト(めっちゃいい)
・コンピアルバム「DANCE2NOISE」
(91年リリースの、星野英彦と今井寿が別々に参加しているブチギレコンピ盤。星野ソロは超ハードコアなインダストリアルで、その感性が狂った太陽にも取り入れられていると思う。狂った太陽のサブタイトルは〜星野覚醒〜に決まっている)
・中西信男「ナルシズム〜天才と狂気の心理学〜」
(87年の本なので同性愛と精神疾患への差別に満ち溢れており不快でしかないが、この考えが蔓延っていた時代とV系黎明期が重なったのは偶然ではないはず)


(マニアックなとこにいきすぎて途中迷子になった  ヒントを探すのもそれはそれで楽しい)



●殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits(1992)
パッと見ベスト盤というか総集編のように見えるが、罠である。
悪の華に魅せられて変わってしまったBUCK-TICKによる過去作の魔改造集であり、ベストどころか過去作を聴いてるかどうかで全く印象が違う。
全体的に過激さがブーストされているが、…IN HEAVEN…とMOON LIGHTだけは最後の良心といった感じで、シンプルにクオリティが高まっている。
元々セットだったみたいに繋ぎも綺麗でグッとくるし、初期の甘酸っぱさと狂った太陽の爆発的なエナジーが組み合わさって最高の仕上がりになっている。
BUCK-TICKはこういう飴と鞭をやってくるから、諦めずに全部聴こうと思える。

○参考にしたもの
過去作全部
SOFT BALLETのベスト盤
BOØWYのベスト盤


●darker than darkness-style93-(1993)
ゾッとするほどカッコイイ。絶句。もうこのnoteなんか最後まで読まなくても良いから今すぐ聴いて欲しい。
93年、世界で1番カッコよかったのは間違いなくBUCK-TICKだった‼︎フリフリの服を脱ぎ捨て地に足を付け時代に呼応した結果、彼らは誰よりも先にいた‼︎
狂った太陽からのブチギレムードをしつこく引っ張りつつも、あの情緒不安定な感じは何だったんだと思うほど今作は一貫して冷たくてドライである。
彼らは全員ノイズを懐柔しており、何故か我々の鼓膜を完璧に破壊する準備ができている。
金属的で凶暴なサウンドに櫻井敦司の歌が乗ることで冷たさが急にサディスティックな色気に変化する。
あと何といってもベースがすごい。複雑なギターのアンサンブルに攻めのベースで対抗するとは…ユータ、ついに本性を見せやがった‼︎
我々はBUCK-TICKの前では完全に無力である。
D・T・Dでトドメを刺され絶句していると、彼らにざまーみろ!と言われてるような気がした。

○参考にしたもの
・ナンバーガール「Num-Heavymetallic」
・Nine Inch Nails「The Dawnward Spiral」
・Autechre「Tri Rapetae」
・Apple Musicにある1993年邦楽のプレイリスト
・Apple Musicにあるストーナーロックのプレイリスト
・Wikipediaの記事「EBM」「グランジ」
・八十八ヶ所巡礼による青の世界のカバー
↑これを聴いて解釈の方向性がわかった。かっこいい

今回はここまで。
私はこの「悪の華」〜「darker than darkness」の期間を理不尽期と呼んでいる。

次はいよいよ「Six/Nine」だ!

引き続きお付き合いください。
ありがとうございます。
以上ですニャ

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