女流棋士の香川愛生さんが2022年８月７日(日)の「麻雀最強戦2022 著名人最強決戦」の決勝で見事な闘牌を見せました。

　決勝は漫画家の片山まさゆきさん、俳優・声優の本郷奏多さん、お笑い芸人の大村朋宏さん、女流棋士の香川愛生さんの並び順。

　優勝したのは漫画家で初代最強位の片山まさゆきさんです。

　香川さんはファイナル進出はならなかったものの、あがり牌をピタ止めしたり、的確な山読みでチートイツをツモるなど、優れた大局観を持つ棋士らしい鋭い勝負勘が光りました。

◎あがり牌ピタ止め

　香川さんは東２局１本場で解説の瀬戸熊直樹最強位らが驚嘆するあがり牌のピタ止めを見せました。

　持ち点は北家・片山36600、南家・大村25000、東家・本郷21200、西家・香川17200です。

　片山さんが役牌の中を暗刻で持ち、11巡目にいち早くカンチャンの３萬待ちで聴牌しました。

　片山さんは中のみのカンチャン待ちなので、慎重に黙聴に構えました。

　香川さんが13巡目に３萬をツモった手牌です。

　３萬を切ればピンフ・ドラ１のイーシャンテンです。

　リーチ者はなく、ラス目なので、この手牌ではまっすぐに３萬をツモ切りする打ち手が多いと思います。その場合、中のみの1300点(＋300)を片山さんに放銃することになります。

　ところが、香川さんは３萬も初牌の東も切らず、片山さんと本郷さんの現物で大村さんにも通りそうな８筒を外してオリに回りました。

　あがり牌をつかんだタイミングでの放銃回避です。解説の瀬戸熊最強位や梶本琢程さん、実況の日吉辰哉プロはそろって驚嘆の声を上げていました。

　棋士は日ごろから形勢判断を的確に行う大局観を養っています。

　それが麻雀でも活かされます。棋士の押し引きの判断はうならされることが多いです。特に、最強位に輝いた鈴木大介九段の対局ではそう感じさせられます。

　この一局で香川さんは持ち前の大局観で、捨て牌が３列目に入り、危険牌を切ってまでして聴牌を目指す場況ではないと判断したのではないでしょうか。それがピタ止めにつながったと思います。

　香川さんがオリに回った後、片山さんが13巡目に５萬をツモって３萬・６萬待ちに変わり、ようやくリーチします。

　その直後、親の本郷さんも14巡目に追いつきました。北を暗刻にして初牌の東を切って、４索・７索待ちでリーチです。

　本郷さんは索子のホンイツで大物手です。あがれませんでしたが、裏ドラは９索で、もし、４索をツモっていればリーチ・ホンイツ・ツモ・ドラ３、高めの７索だったらリーチ・ホンイツ・イーペーコー・ツモ・ドラ４のいずれも8000オールでした。

　本郷さんのリーチ後、香川さんが一発でつかんだのがドラの７索です。

　本郷さんのあがり牌です。香川さんはすでにオリていたので現物の東を切りました。

　すると、片山さんが一発で３萬をツモりました。

　リーチ・中・一発・ツモの2000、4000(＋1300)です。

　結果的に香川さんは３萬を切って放銃していれば1300点(＋300)だったところが、一発でツモられたため、2000点(＋100)の支出に増えました。それでもこの放銃回避は香川さんの雀力を見せつけるものでした。

◎狙い定めたチートイツ

　香川さんは東３局１本場では的確な山読みで跳満をツモりました。

　持ち点は西家・片山41900、東家・大村34900、北家・本郷12100、南家・香川11100。ラス目の香川さんは点差を縮めるあがりがほしいところです。

　香川さんの配牌です。ますまずの手です。

　ここから１巡目にドラの４索、２巡目に７萬を重ねます。

　早くもリャンシャンテンです。さらに、４巡目と５巡目に続けて５筒をツモった手牌です。

　この手牌では、メンツ手への変化も考えて５萬とチートイツのあがり牌で狙い目となる字牌の南を残し、１萬を切ってイーシャンテンに取る打ち手が多いと思います。南は初牌でした。

　ところが、香川さんは１萬を残し、南を切りました。

　南よりも１萬のほうが山に残っているという判断。それがずばり的中です。南は大村さんがトイツで持っていて、山には残り１枚でした。一方、１萬は３枚ありました。

　場に萬子は大村さんの捨て牌にある２萬と４萬だけで、萬子の高い場でした。だからといって南より１萬の景色が良いという根拠はありません。香川さんの鋭い勝負勘です。

　香川さんは８巡目と９巡目に続けて９索をツモり、チートイツを聴牌。場に２枚切れの８萬ではなく、１萬単騎待ちでリーチしました。

　香川さんは11巡目に１萬をツモ。リーチ・チートイツ・ツモ・ドラ２の3000、6000(＋300)のあがりです。

　自身の山読みを信じて１萬に狙いを定めた勝負勘の光るあがりです。棋士のすごさをあらためて実感する一局でした。