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一瀬プロが魅せた緩急の攻め

 Мリーガーに将来必ずなってほしい期待の若手女流プロの1人に、日本プロ麻雀連盟の一瀬由梨プロがいます。

 昨年の麻雀最強戦2021でファイナルの決勝に進出し、ファンになった人もたくさんいると思います。

 「セレブ打法」で麻雀ファンから人気を集めているTEAM雷電の黒沢咲プロのように、一瀬プロは清楚で上品な風貌と柔らかな物腰から「裏セレブ」の異名を持ちます。

 打ち筋も強気で攻撃型なところは似ています。ただし、黒沢プロがメンゼンで高打点のあがりを目指し、じっくりと手作りして一発で決めようとするのに対し、一瀬プロは緩急を織り交ぜた攻めで、あがりを着実に重ねようとする印象があります。

 場況に合わせ、いろいろなことを仕掛けてくる戦略的なところも一瀬プロの魅力です。2022年5月1日(日)に行われた「麻雀最強戦2022 女流チャンピオン決戦」のB卓ではその特長が顕著に出ました。

 B卓は一瀬由梨プロ、東城りおプロ、宮内こずえプロ、菅原千瑛プロの並び順。上位2人が決勝に進出できます。

 東3局1本場を迎え、持ち点は南家・菅原34400、西家・一瀬24000、北家・東城22100、東家・宮内19500です。

 一瀬プロの配牌です。場風の東をトイツで持ち、鳴き仕掛けも狙える手が入りました。

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 ここから5巡目までに6萬、8萬、3萬、西を引き入れ、萬子のホンイツを目指します。

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 一瀬プロが6巡目にツモったのが6筒です。

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  一瀬プロは6筒をツモ切りせず、西を切っての様子見もせず、ドラの4筒を切りました。

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 萬子のホンイツをまっしぐらに目指し、危険牌となりそうな4筒を早めに処理する思いきった強気の一打です。ただし、対局者には一瀬プロの一色手狙いが明確に読めるようになりました。

 8巡目にキー牌の2萬をツモって6筒を切り、イーシャンテンです。

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 10巡目に7萬をツモって西を切り、さらに好形のイーシャンテンになりました。

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 一瀬プロは11巡目に4萬をツモって3萬を切り、5萬・8萬待ちで聴牌しました。

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  一瀬プロは迷わずリーチに踏み込みました。見え見えのホンイツなので黙聴を選択する打ち手もいると思います。

 一瀬プロは半荘1回の2人勝ち上がりなので、大きなあがりが1回ほしいと思っていました。黙聴では出あがりでメンゼンのホンイツのみの5200点にとどまります。リーチ・ホンイツの満貫確定の手にし、ツモって裏ドラが1枚乗れば跳満のあがりを狙いました。

 流局して一瀬プロの1人聴牌となりました。開けられた手を見て、対局者は「この手でリーチするのか」と警戒を強めたことでしょう。

 一瀬プロが見事なあがりをものにしたのは南1局4本場(供託1)です。持ち点は北家・菅原36400、東家・一瀬25000、西家・宮内20500、南家・東城17100です。

 親の一瀬プロの配牌です。まずまずの手です。

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 ここから縦にツモが伸び、2筒、4筒を重ねて4巡目にリャンシャンテンです。

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 7巡目、8巡目に続けて1萬をツモり、イーシャンテンです。

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 そして9巡目に3索を引き入れ、ドラの3萬単騎待ちでチートイツの聴牌です。

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 親でドラの単騎待ちなのでリーチして子の手作りをけん制し、ツモあがりを目指す打ち手も多いと思います。

 しかし、一瀬プロはドラのポロリを期待して黙聴に構えました。その狙いはずばり的中しました。宮内プロが9巡目に3萬を切り、一瀬プロに放銃しました。

 一瀬プロはチートイツ・ドラ2の9600点(+2200)のあがりで一気にトップ目に立ちました。そのままリードを守りきって女流チャンピオン決戦の決勝に進出しました。

 東3局1本場のメンゼン・ホンイツではリーチし、南1局4本場のチートイツ・ドラ単騎待ちでは黙聴に構えるという一瀬プロの緩急を織り交ぜた攻めに魅せられました。

 東3局1本場のリーチが空振りしたので、南1局4本場では慎重に黙聴を選択した判断も素晴らしいです。強気の攻め一辺倒ではないところに柔軟さを感じ、さらなる成長を確信しました。

 女流チャンピオン決戦の決勝は一瀬プロとともに勝ち上がった菅原プロが逆転で優勝。一瀬プロは惜しくも2位でした。

 一瀬プロは2年連続のファイナル行きを逃しましたが、今後の活躍を期待させる闘牌でした。もっともっと強くなってほしいと願っています。

 

 

 

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