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シュンツマスターの懐かしい国士無双

 「東1局から国士無双ツモの親被りで惨敗した」

 友人が電話で愚痴をこぼしていました。かなりの打ち手ですが、いきなり16000点の失点はさすがに厳しいです。

 ベテランプロの公式戦でもそんな場面があったことを思い出しました。

 13年前の第4回名人戦予選第6戦。シュンツマスターの異名を持つ最高位戦日本プロ麻雀協会代表の新津潔プロが東1局に国士無双をツモりました。

 遅れて聴牌したのに後方から抜き去るようにあがったので、すごく印象に残っています。

 予選第6戦は飯田正人プロ、金子正輝プロ、新津潔プロ、小島武夫プロの並び順。

 強豪ぞろいの好カードでした。飯田プロと小島プロが亡くなられたのはとても残念です。

 西家・新津プロの配牌です。1・9・字牌が9種9牌あります。

 手はバラバラで1・9・字牌の重なりもないので、新津プロは国士無双に向かいました。

 ところが、東家・飯田プロが2巡目に早くもイーシャンテンです。

 一方、新津プロは2巡目に東、4巡目に一萬をツモり、リャンシャンテンです。

 飯田プロは5巡目にタンヤオへの移行に絶好の六萬を引き入れました。

 北家・小島プロも5巡目にイーシャンテンになりました。

 小島プロは6巡目に南を重ね、五萬を外しました。

 手役派として知られる小島プロです。チャンタを視野に入れています。

 飯田プロが7巡目に急所の三萬を引き入れ、カンチャンの7索待ちで聴牌しました。

 飯田プロは親なので抑え込みのリーチもあるかと思いましたが、黙聴に構えました。

 他家から見抜かれにくい早い聴牌なので、国士無双に向かっている新津プロらから出あがりを狙ったようです。

 新津プロは5巡目から10巡目まで国士無双の有効牌を引けず、リャンシャンテンのままです。

 南家・金子プロも8巡目にイーシャンテンになりました。

 新津プロがスピードで一番遅れています。

 金子プロは10巡目に8筒をツモって八萬を切り、筒子の一気通貫を目指しました。

 新津プロは11巡目に9索をツモり、ようやくイーシャンテンです。

 その直後、小島プロが4筒をツモり、南・中のシャンポン待ちで聴牌しました。

 中であがらなければ役もドラもない手です。華麗な打ち手として知られる小島プロがそんな手でリーチすることはありません。チャンタへの手変わりを待ち、黙聴に取りました。

 小島プロがリーチしなかったのは新津プロの国士無双への警戒もあったと思います。

 新津プロは12巡目に南を重ね、5筒を切りました。

 さらに、13巡目に1索を引き入れて一萬を1枚外し、9筒単騎待ちで国士無双の聴牌です。

 中盤に全然く入らなかった1・9・字牌が終盤になって続けて引けています。役満の予感が漂ってきました。

 金子プロも14巡目に筒子の一気通貫が確定する4筒をツモって、3索・6索待ちで聴牌しました。

 4人全員聴牌、そのうち一人は役満という手に汗握る局面となりました。

 全員聴牌は一瞬のうちに終わりました。新津プロが14巡目に9筒をずばっとツモ。国士無双の8000、16000です。

 なかなか手の進まなかった新津プロが終盤に勢いに乗り、開局早々に一撃を決めました。

 もし、親の飯田プロが早めにリーチしていたら新津プロはオリに回っていたかもしれません。

 確実な出あがり狙いが役満の親被りにつながりました。麻雀の面白さと恐ろしさです。

 

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