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「演劇は人を繋ぐ」熱き想いを持つ男たちの挑戦 ~アヴァンギャルド×コンプレックスにインタビュー 前編~

9月に入り、涼しい日も増えてきましたが、いかがお過ごしでしょうか?秋といえば芸術の秋!ということで、10月に下北沢で旗揚げ公演「COUPLES 冬のサボテン」を行う演劇団体「アヴァンギャルド×コンプレックス」に取材させていただきました!

今回のインタビューでは、アヴァンギャルド×コンプレックスのメンバーである岩男海史さんと中西良介さんに、「ねつせた!」の『しおりん』と『りょうま』がお話を伺いました。

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岩男 海史さん
衣裳家の家庭で育ち、16歳から衣裳の助手を始め、俳優を真近で見ていたことから影響を受け、18歳から俳優の道へ。22歳で新国立劇場演劇研修所に入り、そこで中西さんと出会います。研修所を卒業後、「1年に一度は自由に活動出来る団体が欲しい」という思いから、中西さんを含む研修所の同期 4人で、昨年アヴァンギャルド×コンプレックスを立ち上げられました。アヴァンギャルド×コンプレックスの代表を務めていらっしゃいます。

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中西 良介さん
明治大学在学中、大学の全面バックアップで行う「明治大学シェイクスピアプロジェクト」に参加し、俳優になろうと決意。大学卒業後は新国立劇場演劇研修所に入り、3年間の俳優修行を経て、研修所修了後は戯曲翻訳家としても活動。戯曲を海外から取り寄せ、 それらを自ら翻訳して上演する演劇団体 Triglavを立ち上げる。それと同時に「研修所で学んだ仲間と何か一緒に演劇が出来る団体が欲しい」という思いから、アヴァンギャルド×コンプレックスを立ち上げられました。

しおりん:最初に、アヴァンギャルド×コンプレックスについて改めてご紹介していただいてもよろしいですか?

岩男さん:僕たちのチームが一番大切にしたいのは、「俺らの演劇を観ろ!」ではなく、 「演劇って面白いだろ!」という気持ち。演劇ファンの人たちをうならせたいって気持ちもあるんですけど、それよりも普段演劇を観ない人を振り向かせたいです。また、演劇を中で納めずに外に広げたいと思っていて。だから、イベントとかを定期的に開きたいと思っています。今までも大学で特別授業をやらせてもらったりしていて、演劇を劇場だけで 納めず、外に持ち出すってところに重きを置いています。

また、僕らの居た新国立劇場演劇研修所では3年間「演劇ってものは豊かな"芸術"なんだよ」と教え込まれたんです。でもいざ卒業して今の日本の演劇界や芸能界に飛び出してみると、「あれ、思ってたのと違うな」と。かなり商業的というか、興行に重きをおいた世界なんですよね。もちろんそれも大切ですが。でも、僕らが研修所で教わった演劇って、 もっと人と人を繋げるとか、そういうことを大切にしていたので、そこはアヴァンギャル ド×コンプレックスのコンセプトに関わっていると思います。

りょうま:今のお話の中で「演劇は人と人を繋げる」ということを教わったとおっしゃっていましたが、具体的にどういう事か教えて下さい。

中西さん:僕らは自分達の演劇を通じて、お客さんの人生を少しでも揺さぶらせたい。 「これって私の話みたいだ。じゃあ、今人生で起こっている問題はこうなのかもしれな い。明日からこうしてみよう。」僕たちの演劇を見たことで明日から人と接することに対して少しでも前向きになれる。そんな願いを「人を繋ぐ」という言葉に込めました。

岩男さん:演劇は絵画や建築などの他の芸術と違い、「人を描く」芸術。だから、本当に面白い演劇って全部自分事に映るはずなのです。

しおりん:演劇ファンではない人達を振り向かせたい、との事ですが、私達大学生にとっ て観劇はどうしても金銭的にハードルが高いな、と思ってしまいます。このような層に対してはどのようにして演劇を広めていきたいですか?

岩男さん:まずは値段を下げる。演劇を観るとなると7、8,000 円は飛んでいくのがザラですし、それでつまらなかった時のショックは下手したら演劇がトラウマになってしまう。だから、値段を安くするのは本当に大事です。特に若い方達には。 あと、当事者性を持ってもらうために社会的テーマを扱っています。 他人事と思った瞬間なんでも面白くなくなってしまう。例えば、今回の「セクシュアルマイノリティ」という テーマは私たち全員に刺さります。当事者であろうがなかろうが、友人に思い当たること はあるでしょう?値段を下げることと、誰でも起こりうる問題を扱うということでハードルを低くしてあげたいですね。あとは、チケットのペア割とかも大事ですかね。ちょっとでも演劇人口の輪を広げられたら、と思います。

しおりん:10月から始まる旗揚げ公演「COUPLES 冬のサボテン」は、ゲイやセクシュアルマイノリティがテーマです。数ある社会問題の中で、今回何故このようなテーマを選んだのか知りたいです。

岩男さん:実はこれ、元々は「冬のサボテン」の作者である鄭義信さんの推薦だったんです。だから、もちろんセクシュアルマイノリティに興味はあったけど、じゃあセクシュアルマイノリティについての作品を何かやろうよ、ってなったわけではないんです。 でも、この作品を決めるにあたって、「愛」がテーマということが僕らの中で結構大きかったです。愛の話って普遍的ですし。

中西さん:宗教や政治の話を表立ってしてはいけない、みたいな世間的な風潮と同じように、ゲイや同性愛者、性の話って、アンタッチャブルにしがち。セクハラになるかもしれない、というのは思いやりとして考えないといけないんだけど、本来人間が生きていくうえで避けて通れない話なんですよ。でもそれが今、話すと白い目で見られる、特に日本はひどいと。そんな空気を、芝居を通して打破したいですね。あと、単純に観劇した後この「愛」を家に持ち帰ってほしい。

演劇というと、どこか敷居が高いイメージが私しおりんの中にはありましたが、アヴァンギャルド×コンプレックスはそのようなイメージとは正反対の演劇を目指していることが 分かりました。また、演劇という芸術は人を描き、人と人を繋げるという話が大変興味深かったです。

次回のインタビュー後編では「ねつせた!」らしく、「下北沢」というまちについて、演劇と絡めながらお話を伺いました。そちらもお楽しみに!(🐬)


第一回公演 「COUPLES 冬のサボテン」


アヴァンギャルド×コンプレックス オフィシャルサイト


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