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俺は今日も悪魔をシバく - 『デビルメイクライ5』

『デビルメイクライ5』(以下、DMC5)は今年の3月に発売された。そして今、7月が終わり、8月が始まろうとしている。そう、4ヶ月以上もの間、俺は断続的にこのゲームをプレイし続けている。いや、プレイし続けてしまったのだ。もちろん他にもゲームはたくさん発売されたし、それなりにハマるものも少なくなかった。特に、ゴリラが出て殺すホットラインマイアミこと『Ape Out』はインディーゲームならではのミニマルな魅力が濃厚に凝縮された逸品なので、是非ともおすすめしたい。

だが、それらをプレイしている合間にも、気がつくと俺はDMC5を遊んでいた。まるで、ヘビースモーカーが自分でも知らない間に煙草を咥えてしまっているように。少しでも精神の空腹を満たすべく、次から次へと雑多にコンテンツを食い散らかす野犬のようなオタクのこの俺が、ここまで長く入れ込むゲームというのは、実際かなり稀有な部類に入る。

ここで重要なのは、良いゲームと長続きするゲームは似て非なるものであるということだ。

たとえば、同じく3月に発売された『SEKIRO : Shadows Die Twice』は確かに良いゲームだった。少なくとも5週はクリアしたし、トロフィーコンプもした。寝ても覚めてもプレイしていたし、なんなら夢の中でも剣聖一心と死合っていたので、実質24時間プレイしていたと言える。だがそれは、旨いからといって焼き肉を空腹に任せてかっ込むような行いだった。俺は2、3週間ほどの間、貪るようにSEKIROを遊んだ後に強烈な胸焼けを起こしてしまい、半ば自発的にソフト置き場の『二軍』にしまいこんでしまった。そして今に至るまで、ほとんど引っ張り出せていない……。

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さすがに死にすぎた?

SEKIROがゲーム史に残る傑作だったことは疑いようのないことだが、少なくとも俺にとって、ずっと遊び続けられるタイプのゲームではなかったということだ。一方のDMC5だが、これはもはやゲームではない。強依存性高純度電子ドラッグと呼ぶべきだろう。

10年ぶりの大復活

前作に当たるDMC4が発売されたのは今からおよそ10年前のことだ。COD:MWやメタルギアソリッド4、MHP2Gと同い年だと考えると本当に昔に感じる。中坊が社会人になるだけの時間をかけたのだから、DMC5はさぞかし現代的に生まれ変わったのだろうか?……半分イエス、半分ノーだ。

まるでゼロ年代

全体的なゲームデザインは呆れるほどに昔のままだ。ステージクリア形式、妙に面倒なシークレットミッションや隠しアイテム、そして自らのプレイがどれだけイカしているかを可視化してくれるスタイリッシュランク。ディレイをかけたりスティックを前後させたりして繰り出す、手元が忙しないコンボもお馴染みだ。近年ヒットしたアクションゲームである『バットマン:アーカムシリーズ』や『スパイダーマン』のように、スティックを向けた敵に飛び込んで勝手に攻撃を当ててくれるわけではないし、ワンボタンで発動する便利なカウンターや回避行動もほとんど無い。そして銃はリロードしなくても無限に弾丸が出る。イマドキゲーマーを戸惑わせるであろうクラシカルな要素だらけだ。スラッシュメタルのバンドマンのような格好の主人公たちが、イカした悪口を叩きつつ、悪いことを企む悪い悪魔をシバき倒す。つまるところ、DMC5はどこまで行ってもデビルメイクライだ。

いいや、ゼロ年代じゃない

DMC5の実際のプレイフィールはしかし、シリーズの郷愁に頼ってファンを搾取しようとするような甘えは一切見せない。シリーズが持っていた「らしさ」をしっかり見つめ直し、ひたすら真っすぐに磨き上げている。

まず目を惹くのはグラフィックだ。『バイオハザード7』以降のカプコン製ゲームで主に採用されるようになったREエンジンにより、現行世代で最高峰のフォトリアルを実現している。だが、今どきただ画質を綺麗にするだけでは芸がない。カプコンは60fpsを完璧に保つと同時に、DMCシリーズの持ち味であるところの、非現実的なエフェクトや生々しい悪魔の数々をもリアルに描いてみせたのだ。パッケージ裏に書いてある『過剰現実感(オーバードーズド・リアリティ)』のウリ文句は、そういう意味で極めて秀逸だ。コナミのFOXエンジンもそうだが、カクつきやテクスチャの粗さによって没入感を阻害することがなくなるので、高画質と60fpsの両立は本当に素晴らしい。

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エフェクトだけで飯が食える

また、各アクションの操作感も、見えない部分とはいえしっかりと改善されている。これは単純に入力からアクション発生までの時間を短くしたという意味ではなく、プレイヤーの肌感覚における話だ。つまり、どれくらいの大きさの武器をどう振り回せばどれくらいのスピードが出て、どれくらいの感触で悪魔のドタマをカチ割れるかということについて、極めて真剣に考えられているのだ。職人めいたその調整の甲斐あって、操作の快適さをしっかりと担保した上で、プレイに満足感を与えるヒット感をしっかりと演出できている。DMC4でも優れたアクションが楽しめたのは確かだが、今作を遊んだあとでは動作の節々に微妙な引っ掛かり(特にダンテ操作時)を感じてイライラしてしまうことだろう。

三者三様に悪魔をシバけ

3体の魔獣を召喚して戦い、トドメだけは自分で刺すという新キャラのVだが、新機軸を追加しつつプレイヤーを困惑させすぎない操作感にしっかりと収まっている。ある程度の難易度までは遠距離用の魔獣と近距離用の魔獣を適当に召喚してボタン連打しているだけでも敵を薙ぎ払ってそれっぽくなるので、ある意味初心者向けと言えるかもしれない。フィニッシュムーブも凝ったものが複数用意されているため、最後の敵を撃破した時にスローとクローズアップが起こる演出との相乗効果で非常にスタイリッシュに見える。

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また、前作の主人公であるネロと、シリーズを通じた古参主人公であるダンテも、それぞれ新しい武器を引っさげて帰ってきた。

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物語の冒頭で悪魔の右腕『デビルブリンガー』を失ったネロは、代わりに悪魔狩り用の機械義手『デビルブレイカー』を身に着けている。シンプルに一撃が強いものや時間の流れを操作するような特殊なものまでデビルブレイカーは多岐に渡るので、とりあえずプロレス技でフィニッシュしがちだった前作のネロよりも戦闘に即興性と多様性が増した。義手を切り替えるには現在装備しているものを爆破パージする必要があるし、効果が発動している際に一発でも攻撃を食らえば壊れてしまうという不便な点もあるが、どの義手もとにかく強力なことを考えるとちょうど良い塩梅の調整といえる。

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ダンテはシリーズ皆勤賞ということもあり、最もオーソドックスな戦い方だ。4つのバトルスタイルに4つの遠距離武器と4つの近距離武器をリアルタイムで切り替えながら組み合わせて戦い、3人のプレイアブルキャラクターの中で最も忙しい操作と状況判断を要求される。とはいえ、適当に切り替えてもなんだかんだコンボは繋がったり繋がらなかったりするので、必ずしも初心者お断りというわけではない。今作でも彼は戦いを通して新しい武器を次々に手に入れていくが、バイクと双剣という2つの形態を持ち、タイヤで豪快に悪魔をすり下ろす『キャバリエーレ』は特に異彩を放っている。

ゲームにおける快感

ぐだぐだと書き連ねてきたが、俺がDMC5をプレイし続けている理由自体は至極単純である。とにかく気持ちいいからだ。ビジュアルは文句なく美しく、ヘヴィな音楽は戦意をブチ上げ、操作はとにかく直感的。どのキャラもプレイすればするほど上達が感じられ、さらにスタイリッシュなプレイに挑戦したくなる。アクションゲーマーの快楽中枢を刺激するためだけに練り上げられた、ヘロインのごとき悪魔的中毒性を持ったゲーム。それがDMC5だ。ストーリーはまるで中学生が書いたかのような捻りの無いものだが、そんなものは歯牙にもかけない。ただカッコよく戦いたいという欲求に応えられる限り、このゲームは名作であり続けるのだから。また、組み手形式でひたすら戦い抜くおなじみの『ブラッディパレス』が発売後に追加されたことで、ゲーマーのDMC5依存症はますます酷くなっている。

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Smokin' Sexy Style!!(ガンギマリ)

アクションに飢えたあなたに、今一番効く電子ドラッグはDMC5だ。

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