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MSP稽古取材日誌 ~明大生とシェイクスピア劇~ No.1

こんにちは!おちらしさんスタッフの望月です。
若い世代に向けて舞台芸術情報を発信する「ユニコ・プロジェクト(通称:ユニコ)」を運営しています。

ユニコでは以前、《学生演劇を追う!》シリーズにて、明治大学が主催する学生演劇団体明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)について、ご紹介しました。

明治大学の学生なら誰でも参加ができて、台本の翻訳の段階から舞台公演を作り上げる、毎年恒例のビックイベントです。
そのMSPに、今年度はいつもと違う大きな変化が!今回のMSPは、2度、公演が行われるのです!

まずは、毎年同様、11月に行われる「本公演」。
明治大学アカデミーコモンホールで行われる、大規模公演となります。
今年度上演されるのは、言わずと知れたシェイクスピアの名作喜劇『夏の夜の夢』と、知られざる名作『二人の貴公子』二本立て公演だそう!!

そしてもう一つが、9月に行われる「ラボ公演」。
ラボ公演は、本公演の前哨戦として行われる小規模な公演なのですが、内容は充分、単体でも楽しめる演目です。こちらは本公演で扱う『夏の夜の夢』をモチーフに、オリジナルスピンオフとして作られた作品を上演します。
今回のラボ公演のタイトルは「『短夜、夢ふたつ』~あったかもしれない夢の話~」。魅力的な題名です…。

今年はこの2作品の準備が、同時進行で行われています。
そりゃあ、忙しいに決まっているわけです。

ユニコでは、スタッフの望月・福永・臼田でMSP取材班を結成し、現在、密着取材をさせていただいております。
この舞台製作の風景を、いろんな方に観ていただきたい!!ということで、書き溜めている取材日誌を、本日より随時公開していこうと思います。

取材を通して垣間見える、シェイクスピアと真摯に向き合う明治大学生の姿に、取材班みんな、とても胸が熱くなっております…!
ぜひご覧ください!!

8月24日(水)
【ラボ公演】あら通し
【本公演】衣裳WS・シーン稽古

この日は明治大学の和泉校舎にて、ラボ公演の「あら通し」があるということで、お邪魔してきました。「あら通し」とは、「初めての通し稽古」、「まだ完成度は低いけど、試しに一度、頭から終わりまで通して見る稽古」のことを言います。座組にとっては少し緊張感のある日でもあります。

稽古が行われている和泉キャンパス。
造設されてまだ間もないそうで、とてもおしゃれ!!

広い教室に入ると中央に養生テープで丸く囲まれた空間が。それが舞台の形だと気付いたのは、通しがスタートする少し前でした。つまりラボ公演は、センターステージ、囲み舞台で行われるのです!
この日は音響、舞台美術、衣裳など、各セクションのスタッフも勢揃い。丸い舞台を囲むように席に着き、真剣な眼差しで稽古を見ていました。

どんな作品で、どんな演出になるのか、ドキドキ・・・!

はじめに、演出の小林萌華さんから、挨拶と、通し稽古に参加するスタッフへの感謝の言葉があり、予定時間ぴったりに稽古はスタートしました。
主題である『夏の夜の夢』のシーン・要素にクローズアップして、そこを自由に膨らまし、さらに、カフカや樋口一葉の作品と巧みにシンクロさせたストーリー。単に”スピンオフ“と呼ぶには表現不足な、かなり作りこまれた作品で、しっかりとした世界観が描かれています。稽古でも、見ている全員がすっかり引き込まれているのがわかりました。

演出・小林萌華さん(中央)の真剣な表情。
実は、自身が主宰する劇団の公演も控えているそう・・・!

稽古後、小林さんにお話を伺うと、一番気になっていたのは、円形の舞台ならではの問題点で、役者の”立ち位置”と”動き”。一度会話が始まるとそこに集中してしまうあまり、役者の動きが止まり、相手と対峙したまま、ずっと同じ場所でのやり取りになってしまう。これだと見ている側からすると、少し面白みに欠けるのです。
残りの稽古時間でそれをどう改善していくのか、小林さんの新たな課題になりそうです。

一方、この日は同じ和泉校舎内の別の部屋で、衣裳チームのワークショップもありました。
去年の衣裳チーフで、今年はラボ公演の衣裳デザインを担当している4年生の柴崎芽衣子さんらが、後輩たちに衣裳づくりのノウハウを伝授する会です。基礎的なことから丁寧にレクチャーしている様子が見られました。

真剣な表情で演出家と打ち合わせをする、
デザイン担当の鈴木萌友さん。

柴崎さん曰く「衣裳チームは MSPの中でも一番、芝居芝居してないチームです」とのこと。芝居好きよりも、洋服やファッションが好きな子が多いようで、チームの皆さんは、オシャレでイマドキの女の子たちばかりでした。

取材中、本公演の演出・養父明音さんがやってきて、衣裳チームとの打ち合わせが始まりました。本公演のデザインを担当するのは、養父さんと同じ3年生の鈴木萌友さん。インタビュー中は恥ずかしそうにもしていましたが、打ち合わせが始まると、すぐにデザイナーの顔に。
タブレットに描いたイメージ画を開きながら真剣な表情で演出家と向き合っていました。

演出家のイメージを大切にしつつ、鈴木さんの解釈も交え、
一体どんな衣裳が出来上がるのか楽しみです。

そのころ本公演『夏の夜の夢』の稽古では、職人たちの劇中劇シーンが行われていました。以前から”面白く”したいと話してくれていた養父さんの意図通り、賑やかで楽しいシーンが組み立てられていました。

広い教室内を駆け回る役者たち。
台本を追う演出助手・積山浩大さん(左)。

演出助手の積山浩大さんに、こっそり舞台美術のプランも見せてもらいましたが、セットはかなりの迫力!その中で、職人達の滑稽なやり取りが繰り広げられるかと思うと、すでに笑いがこみ上げてくるようです。

ここはどんなシーンでしょう・・・?
本番までのお楽しみです。

取材中に各現場をご案内くださった、MSPコーディネーターの井上優教授も、終始、楽しそうに稽古をご覧になっていました。取材の合間、教授にもたくさんの楽しいお話を伺ったので、その内容はまた追々・・・。

夏休み明け直後のMSPは、とてもいい滑り出しが出来ているように見受けました。

【担当記者:福永】

8月30日(火)
【本公演】野口体操・DM発送作業・照明WS
【ラボ公演】シーン稽古

この日もお邪魔したのは、明治大学の和泉校舎。10時頃に伺うと、本公演『夏の夜の夢』の役者の皆さんが教室に集まっていました。
そして、何やら皆さん頭をぶらぶら……。

毎年恒例だと言う、「野口体操」ワークショップの最中でした!野口体操とは、東京芸術大学名誉教授・野口三千三さんが創始されたトレーニング法です。野口さんの意志を継ぎ、野口体操を伝え続ける羽鳥操さんが、講師としていらしていました。

身体を感じながら、上半身を脱力。

「動きで大事なことは、イメージする能力」
羽鳥さんのお話を真剣な眼差しで見つめる役者チーム。2人1組になって行うワークでは、身体の変化に驚く笑顔が印象的でした!

「人間の身体ってすごいっすね!」
感動の声がこぼれる役者さんも。

一方、同じ校舎の別教室では、ラボ公演『短夜、夢ふたつ』の稽古中。ウォーミングアップを終え、冒頭シーンの立ち稽古が始まります。
椅子の周りで堂々と台詞を発する林颯太郎さんのお芝居は、稽古場の空気を森の中へと一変させました。

ボトム役の林颯太郎さんが、椅子をもって登場。
この姿勢……!いったい、何を話している ……!?

ラボ公演の演出・小林萌華さんは、真っ直ぐな目で役者さんのお芝居を見つめ、指示を出します。一人ひとりに丁寧に演出し、それに応える役者たち。チームワークは、最高です!

フルート役の金振赫さん(手前中央)のモノローグを見つめる、
ラボ公演の演出・小林萌華さん(奥中央)。

本公演まであと2か月。制作部チームの作業も熱い!
過去にMSPの公演にご来場いただいた方へ、今年の公演のご案内を送付します。郵便局から封筒を購入し、糊付け作業。その数なんと、2000通!!

制作部は、MM・予約管理・広報・DTP・折り込みの5チームに分かれています。MMはmoney(お金)・management(管理)の略称。飲食店や書店の皆さんへ協賛金のお願いに伺います。

制作部チームみんなで、コツコツ……
右手前の方が、MMのリーダー・長村実穂さん。

協賛金のお願いのためにお店の方とやり取りをするのは、とても緊張する仕事。今年のプロデューサーである金子真紘さんは、前年はMMで活躍。そこでの深い経験も経て、今回は全体のリーダーとして、しっかりと皆さんを導いています。制作の役割分担などについて、ホワイトボードで詳しく説明してくれました。

いつも見学の案内をしてくださる、
プロデューサーの金子真紘さん。
前年は制作部でMMを担当していました。

さらに、御茶ノ水へ移動し、猿楽町第2校舎へ。御茶ノ水駅から歩いて10分程の場所にあり、「男坂」と呼ばれる急な階段を下って右側に見えてきます。
ラボ公演が上演される「アートスタジオ」は、この校舎の1階にあります。
この日は、同じアートスタジオで、照明チームがワークショップを開催中。

灯体の安全な固定方法を説明する照明部チーフの大友彩優子さん(中央右)。
皆さん真剣にお話を聞いています…!

照明部には、舞台照明の経験がない方もいるため、ワークショップでは基礎的なことからレクチャーが行われます。
演劇製作において、舞台の裏方チームは上下黒の服が基本。魅力的な舞台をつくるための戦闘服です。
ワークショップも、本番のための大切な準備。したがって、この日も皆さん上下黒の服に身を包み、先輩から後輩へ、照明に関するあれこれを伝えます。

アートスタジオに照明を吊るすところまで、実践中。

照明の重要な効果は「雰囲気作り」。作品全体の印象を大きく左右する大事なセクションとなります。
芝居と照明がどんな融合を見せてくれるのか、とても楽しみです…!

【担当記者:臼田】

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第19回明治大学シェイクスピアプロジェクト
『夏の夜の夢』『二人の貴公子』

公演日程 2022年11月4日(金)〜6日(日)


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