ブログ26

場を育む

子どもの中には、大人の顔色を見ながら過ごしている子がいます。

先日、「この人はどういう人かな・・」というように顔色を見ながら、徐々に近づいて心を開いて行く…という子に会いました。実際の距離感も、少しずつ縮めて来るといった様子でした。

私はその子のペースで距離を縮めて安心してもらおうと、私から急に近づくことはせず、その子が気を許して来るのを待ちました。そして、徐々に実際の距離と心の距離も近づいていきました。

子どもが「この人は大丈夫かな」と様子をみるということは、自分の身を守るための動物的な本能の現れです。

その動物的な本能が基づいているものは、“生存を脅かされる恐れ”です。

子どもの中には天真爛漫で大らかな子がいます。このような子は、誰にでもすぐに心を開き、仲良くなってしまう様なところがあり、“恐れ”のみじんも感じません。

その子どものベースには“安心”があります。

“恐れ”がベースの子どもと“安心”がベースの子ども…どうしてこのようなベースの違いがあるのでしょうか。

もちろん一人ひとり持って生まれた気質もあります。その気質から“恐れ”がベースになっていて色々なことに敏感な子どももいます。

親もその子どもの様子に不安(恐れ)を抱き、そうした親の不安(恐れ)がまた子どもに共鳴して、不安なエネルギーの循環が起きているということもあります。

“恐れ”と“安心”のベースを作っているのは、大人のあり方です。

子どもにとって、大人との関わりの全ての体験が、子どもの世界を左右します。

“何をした”“何を話した”ということよりも、世界への影響が強いのは“あり方”なのです。

子どもが寄って来ない、子どもを寄せ付けないような人がたまにいますが、そうした人を見ると、“子どもとどう接したら良いかわからない”“全く子どもがわからない”というような、不安や恐れを感じていることが見て取れます。

このような“不安・恐れ”から来る大人のあり方を子どもは察知するのです。

『おしいれのぼうけん』という絵本を読んだことがありますか?

保育園での先生と子どもの関わり方がよく描かれている絵本です。

そこに出て来る先生は、“子どもを自由にさせると大変なことになる”という様子で、子どもと戦っているようなあり方です。

大人がこのようなあり方だと、“大変なこと”にならないように、「静かにしなさい!」と叱りつけたり、「鬼が来るよ」と脅したりする関わり方になります。そして、静かにならないと一人の目立つ子を目一杯叱りつける。他の子はそれを見て、自分は叱られないように、うまくすり抜ける“技”を手に入れる…というようなことが起こります。その“技”が『顔色を見る』ということです。

大人の“静かにさせなければ”という強迫観念が、子どもの成育過程で“気をつけないと良くないことが起こる世の中なんだ”というような“恐れ”のあり方を身に付けさせてしまうのです。

“安心”がベースの子どもは、自分が愛され、受け入れられている安心感があり、その子どもが本来持っている力・感情・考えなどを安心して出せます。

その子どもには“恐れ”がない“安心”の世界が広がっているのです。

“安心”の世界をどう創るのか・・

それは、大人自身が“安心”することなのです。

大人自身に“不安”や“恐れ”が出て来た時に、まずは気づくこと。

「自分は今、何かに不安を感じているなぁ。」

「“大きな声”“泣き声”“周りの人の目”に不安を感じているんだなぁ。」

このようにこの瞬間の自分を認めることから始まります。

誰でも不安は出て来るものです。

ポジティブシンキングのように、プラスのことだけ考えようとすればする程、マイナスな考えから離れられなくなります。

“不安”“恐れ”は、現実にあることではなく、単なる反応です。

勝手に出て来る“おなら”のようなもので、放っておいたら消えてなくなってしまいます!!

そして、また“不安”“恐れ”が出て来た時には、

今、自分は不安・恐れをぶつけていないだろうか?

今、自分は不安・恐れから言葉を発していないだろうか?

と自分を観ることが効果的です。

この練習をしていく中で、“安心”と“平和”が見えて来るでしょう。

その大人の“安心”の場には、ありのままで、安心して力を発揮している子どもが現れてくるのです。

その子ども達によって、天真爛漫でおおらかな場である世界が創り出されるでしょう。

http://www.new-edulittletree.com

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