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43歳 博士課程入学という「沼」

2023年4月8日。今日、立教大学大学院 経営学研究科の博士課程(後期)の入学式に参加してきました。

先月久しぶりに会った友人に「4月から大学に通う」と伝えたら驚かれました(当たり前か)。とはいえ、過去2回の転職時でも同じように驚かれた記憶があります。

1回目は27歳で社員4000人の野村総研をやめて社員60人のコーチング会社(コーチ・エィ)に転職した時、2回目は40歳でAIスタートアップ(エクサウィザーズ)に転職した時です。

そして、今回は43歳でなぜ博士課程なのか。

入学の理由や経緯を残しておくことで、誰かの参考になればと思い記事にしておきます。「いつかやりたいと思っているけど、実行できてない」という人の役に立てれば嬉しいです。

2023年4月 立教大学の校門にて

いつから考えていたのか?


白状すると10年以上前から考えていました(汗)

目標にむけた行動を支援していくコーチという仕事をしているのに、考えているだけでなかなか実行できていなかったというのが本当のところです。

アカデミック領域に興味を持ったきっかけは、金井壽宏先生との出会いです。2008年、所属していたコーチ・エィが金井先生と神戸大MBAでコーチングの講座を開催することになり、私もアシスタントとして参加しました。(のちに2012年から私も講師となり2019年まで講座を担当する思い出深い仕事となりました)

金井先生の話を聞きながら、コーチングも経営学の組織行動という分野で学術的に研究が行えるんだ、ということが輪郭を持ってはっきり理解できました。

当時、私はコーチをしながらもコーチング研究所に所属しており、コーチングの効果や有効性のメカニズムを明らかにする役割を持っていました。必ずしも再現性のない「人の成長」と「組織の変化」を明らかにするという超難問との格闘の日々。分からないことも多く、アカデミックな世界でしっかり研究したらもっと詳しく分かるんじゃないかという思いを持っていましたが、現実味を持っては考えていませんでした。

2009年 東大安田講堂でおこなわれたカンファレンス
(nakahara-lab.netより) 

行動をおこせなかった10年前


2009年。中原先生が東大で開催した「ワークプレイスラーニング」に参加し、「成人学習」はコーチングと親和性が高いと感じました。コーチの仕事はコーチは「成人学習を促進する」役割とも言えるなと考えたのです。

神戸大は距離が遠いので難しかったのですが(当時はWeb会議は一般的ではありませんでした)、東大なら通えると大学院の入試説明会にも行きました。中原先生にも突撃してお話させていただいた記憶があります。

この時が一番入学意欲が高まったのですが、コーチング研究所の立ち上げが忙しく、当時のマネージャとも「そんな時間つくれるかなぁ」という話をして、結局入試を受けませんでした。

思えば、当時は具体的なアクションもしなかったですし、大学院入学はあくまで「見る夢」であって、「かなえる夢」ではなかったんだと思います。遠くに光は見えているけれど、本気の一歩は踏みだしてはいませんでした。

この時に、入学していたらまた違う人生だったんだろうと思います。(後悔は全然してませんが)

2012年金井先生のご支援もありアメリカ経営学会(AoM)@ボストンで発表させていただきました。ただ、本格的に大学院にはいることはなく、日々は過ぎていきました。

なぜ今さら43歳で受験?


そうして、あっと言う間に10年。大学院に入ることを忘れて生活していたのですが、なぜ受験にいたったのか。きっかけは遅効性のものと即効性のものの2つがあります。

「遅効性のもの」とは、アカデミックに関連する人たちとのつながりを持っていたことでした。ClubHouseでの論文を読む会、立教LDC学生との輪読会、HBR読書会のメンバーなど、アカデミックな情報が耳に入ってくる環境に身を置いていました。このネットワークから常に刺激を受け、情報をもらっていたため、火種は消えずに残っていました。

「即効性のもの」は、2022年末に会社を辞め独立したことが大きな要因です。そこで、もう一度博士課程入学について考え始めました。
ただ、具体的な研究テーマが明確でなく「準備できてないから来年うけようかなぁ」という気持ちが強かったです。さらに独立して間もない時期で「ビジネスに専念すべきではないか」という焦り。加えて「40代生徒を大学院が受け入れてくれるのかな」という不安もありました。ここで終わったら、この一生では博士課程に入らなかったかもしれません。

そうならなかったのは、先輩研究者2人に相談したことが最終的なきっかけです。
ひとりからは「何度も考えてるなら、いつか受けるますよ、きっと!」、もうひとりからは「今年受けても失うものはないから挑戦してみては?」という言葉をもらいました。

ふたりの言葉を聞いて「たしかに、自分は何を怖がっているんだろうなぁ」と思いました。日本人男性40歳での平均余命は42.4歳だし、43歳はもう人生の後半戦。年齢を考えても猶予は少ないので、確かに早い方がいい、受けよう!と決め出願しました。

その日から出願要件になっている研究計画書を作成するために夜な夜な論文を読み、これまでの経験を整理しました。その後の口頭試問はかなり緊張しました。(なにせ21歳に修士課程の受験をして以来、22年ぶりの受験でしたので)合格はWeb発表。祈る思いでPDFを開き合格を確認。受験番号を10回くらい確認しました(笑)

翌日に郵送で合格通知が届いて本当に安心しました
(立教大学の校門)

沼地に足を踏みいれた


今、思うのは「忙しい」とか「まだ準備ができてない」とか、いろいろ言い訳して先送りにしてきたなぁということです。
今日の入学式で西原総長が大学研究は旅であるというお話をされており、あることを思い出しました。それは「リーダーシップの旅」という本にある次の部分です。


深く暗い森の中に村がある。そのはずれに「入ってはいけない」と言われる沼が広がっている。ひとりの村の青年が、沼地の先に豊かな草原と青い空が広がっていると信じ、勇気を持って水の中へと一歩を踏み出す。

その一歩がリーダーシップの旅の起点となる。

力の源となるのは、何のために生きるのかについての自分なりの納得感のある答えだ。

「リーダーシップの旅 見えないものを見る」(著者/野田智義、金井壽宏)P.51-53を番匠が要約

今まで怖がって踏み出せなかった一歩。それを今回踏み出して、沼地に足をいれ旅が始まったんだなと、思いました。

踏み出すのに時間かかりすぎ!という気もしますが(笑)、今日が残りの人生の最初の1日ですから、遅いなんてことはありません。
一歩踏み出すことができた今回と10年前との違いをあらためて考えると、人のネットワークだと思います。沼の先に何があるのか知っている人、同じ関心を持っている人との多くのやりとりを経て、今回前に進むことができました。

一歩踏み出すことに躊躇している方へ、この体験からひとつアドバイスをするとしたら、「あなたが実現したいことを半分でも実現している人がいるコミュニティに入ってみること」をおすすめします。

博士課程で何を研究するのか


大学では、社員か組織のリーダーになる役割移行に焦点をあて、コーチングでの経験も活かした研究を進めていきます。論文を読みながら、これまで現場視点で見てきたものを学術視点で見ると新しい発見があり、とても楽しいです。好きなものに没頭することを巷で「沼る」と言いますが、沼はそちらの意味だったのかもしれません。

ここ数年でコーチングは一般の人にもさらに普及しつつあります。より効果的な「コーチング」が日本に広まっていくためにも、学術的な知見を深め・発信することで社会に貢献をしていきたいと考えています。

私の博士課程における研究は沼地に1,2歩足を入れたくらいで、始まったばかりです。

これから数年「沼」を多いに楽しんで、その先にある光あふれる場所を目指していきます。(もし溺れていたら助けてください)

ついに箱根駅伝で応援できるチームができた!
(立教大学Webサイトより)


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