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「KITA-SANRIKU」が共通語になる未来へ。Made in 北三陸は国境を超える

「おいしいもの × おいしいもの=もっとおいしい」だなんて理論を耳にすることがあります。良質な味わいを比喩する表現の一つだと思ってきましたが、本当だったのかと知る機会がありました。

それは株式会社北三陸ファクトリーで生産している「洋野うに牧場の四年うに UNI&岩手産バターSPREAD」という、うにとバターの加工品をいただいたときのことでした。

北三陸ファクトリーとは、岩手県の三陸沿岸北部に位置する地域の水産品を扱う会社。特に、新鮮なうにやそれらを用いた加工品などを取り扱っています。代表取締役の下苧坪之典(したうつぼ・ゆきのり)さんは、北三陸地域の水産品を世界へと発信する強い意思の持ち主。

彼から話を伺う中で見えてきたのは、北三陸地域の水産品の美しさ、そしてそれらの底しれぬ魅力でした。

300回を超える試作の末に生まれたおいしいの連鎖

「洋野うに牧場の四年うに UNI&岩手産バターSPREAD」を皮切りに、北三陸で水揚げされた水産物をふんだんに使用した加工品を数多く開発する北三陸ファクトリー。“うにバター”と称されるその製品には耳馴染みがなく、どういった味わいなのかも想像がつきません。

というのも、うにはお寿司や海鮮丼などでお目にかかれる高級食材。なかなか出会える機会がないことはもちろん、うにを食する際には身をそのままいただくのが主流です。加工したうにって一体どのような味わいなのだろう……と、期待と一抹の不安がが同時によぎります。

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「UNI&岩手産バター」は、その名前からもわかる通りうにとバターを合わせた加工品。北三陸ファクトリーの所在がある岩手県洋野町(ひろのちょう)で水揚げされた新鮮なうに70%と、同じく岩手県内の農場としてその名が知られる「小岩井農場」の発酵バター30%とを合わせて作ったものだそう。

「岩手の味をたっぷり感じてもらえるよう願って開発しました」と下苧坪さん。なんと300回を超える試作品の末に生まれた、とっておきの逸品とのこと……。

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通常のバターの要領で、バゲットやクラッカーなどの上に乗せて食べるのがおすすめですと下苧坪さんから助言をいただいたので、実際にいただいてみました。

すると、舌に触れた瞬間にブワッと広がる磯の香りと甘み。バターが合わさることで滑らかさと味わいの奥行きが増し、つい頬がゆるんでしまうほどです。ワインや日本酒などお酒と一緒に嗜むのもとても良さそう。

6種スプレッド

また「UNI&岩手産バター」と同様、北三陸ファクトリーの主力商品として愛されているのが「KITA-SANRIKU CRAFT SPREAD」シリーズ。“スプレッド”とは、バターやジャムのようにパン・クラッカーなどに塗るもの全般を指す言葉です。

「KITA-SANRIKU CRAFT SPREAD」シリーズでは、北三陸の自然が生み出した素材を贅沢に用いてスプレッドに加工した製品。原木椎茸・北三陸産の真鯛・ほうれん草など、海産物から野菜まで多岐に渡る素材によって作られています。

こちらもいただいてみたのですが、とにもかくにもお酒が恋しくなる……。「原木椎茸のスプレッド」には北三陸産のにんにくが使用されていますが、にんにくのコクはそのままに、意外とあっさりとした仕上がり。

スプレッドとして食材に添えるのも良いですが、パスタに和えたりと調味料として楽しんでみるとまた新しい発見があるように感じられました。

“北三陸のうに”が良質を象徴するフレーズになってほしい

これほどまでにおいしく、私たちを魅了する北三陸の素材。だけれど、実際のところその真価を知る人はまだそう多くはないのが現状です。「“岩手県といえば”の回答は、多くの場合、冷麺やわんこそばなんかのイメージのみに留まっていますからね」と下苧坪さん。こう言葉を続けます。

「うにを始めとして、岩手県には高品質な水産物が穫れる地域が多くあります。でも、そのどれもが世の中には知られておらず、仮に各地に流通されても“三陸産”とすごく大きな括りでまとめられてしまう。地域や生産者が変われば、水産物の味わいだって変わるのに、です。

だから、北三陸、引いては洋野町の名前がもっと知られるよう北三陸ファクトリーを起点に発信を続けていかなければいけないんです」

下苧坪さんがそれほどまでに強い想いを持って事業に取り組む背景には、岩手県洋野町(旧種市町)の干し鮑を海の向こう、香港へと売り込みに出向いていたという曽祖父の存在があります。北三陸地域の食の魅力を広めるパイオニア、それこそが下苧坪さんの曽祖父でした。

「2011年3月11日、東日本大震災で被災した翌年、僕は祖父の自宅を掃除している時にある写真を見つけました。そこに写っていたのは曽祖父が種市で獲れた鮑を加工した乾鮑(カンポウ)を香港へと送り出す姿。自分の生まれ育った地域の産業が、実は国境を超えて愛されるほどのものだったことを、そのとき初めて知ったのです」

下苧坪さんがその写真を見つけた当時の北三陸地域では、世界各国との取引は行わず国内消費のみに事業を絞る生産者が多かったそう。

北三陸の素材が高いポテンシャルを秘めていることを知った下苧坪さんは、「北三陸を世界に発信する。」というミッションのもと、北三陸ファクトリーを立ち上げました。

国内はもちろん、世界中に“北三陸”の名を轟かせるという使命を持って走り続けています。

「“岩手県産”ではなく“北三陸産”のように、地域の名がもっと知られる、愛される未来を作りたいと思っています。“ブルゴーニュのワイン”といえば味わい深いワインであることを多くの人が想像するように、“北三陸のうに”とえば誰もが信頼を寄せてくれるような。せっかく素晴らしい水産品があるのですから、そういうブランド価値を広めずにはいられません」

世界中から「北三陸」を目指す人が増えてくれたら

下苧坪さんの話を伺う中で、一つ改めて知ったことがありました。「うににも品質の良し悪しがある」ことです。高級食材に分類される傾向にあるうにですが、生産方法は日本各地で随分と異なり、それゆえ味わいも大きく差があるそうです。

「うには英語で“sea urchin(=海の悪ガキ)”なんて名付けられるくらい、海中であらゆる生き物を食い尽くしてしまう凶暴な一面があります。そのため、良質なうにを育てるためには海中の環境に常に気を遣い、丁寧に管理しなくてはならないんです」

その環境を整えるには長年の技術を要し、うにへの深い理解がなによりも必要です。長い歴史の中でうにを扱う術を理解し、受け継いできた北三陸洋野町には、その確かな技術力があります。

「今、北三陸ファクトリーで取り扱っているうには、”うに牧場”を活用し、約4年かけて創り出した、最高品質だと自信を持ってお届けしているものばかり。まずはそのうにを食べていただいて、本当においしいうにがどういったものなのか、知っていただけたらと思っています。

ただ、うにのシーズンは4ヶ月間ほどと短い上、鮮度の高い瞬間に味わうからこそ至極のもの。ですから、まずはうにバターを通してうにを食するシーンを増やしてもらうことから始めてみてもらえたらと。

こんなご時世ですから気軽にとは言い難いですが……数年が経過した暁には、誰しもが〈Made in 北三陸〉の水産物を求めて訪れてくれたら嬉しいですね」

そう話す下苧坪さんの表情からは、来たる未来への期待と手応えを感じられるようでした。「北三陸のうに」というフレーズがおいしさの象徴となる世界線は決して遠くないのかもしれません。

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10月8日(金)〜10日(日)の3日間、渋谷・MIYASHITA PARKで「NEW POINT〜FACTORY〜」と題したポップアップイベントを開催します。当日はご紹介した「UNI&岩手産バター」「KITA-SANRIKU CRAFT SPREAD」や蒸しうになども販売予定です。

バターやスプレッドなどのアレンジレシピ、うにの味わいなど、本記事のお話の続きは会場にて尋ねてみてくださいね。ご来場、お待ちしています。



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