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自由に生きる人のためのニットを。群馬県太田市生まれの“芽吹く”アパレルブランド

自分自身が生まれ育った土地には、誰しも少なからず成長の過程の中で影響を受けているのだなと思うことがあります。

言葉や食などの目に見えるものから、文化や価値観などの触ることはできないものまで……土地が人に与えてくれる力は想像以上に大きいのかもしれないと感じるのです。

群馬県太田市で事業を営む二人の若者を知ったとき、彼らもまた自分の根ざした土地へのアイデンティティを胸に生きているように感じました。そして、それがどうしようもなく誇らしく、たくましく見えました。

太田市で古くから生産されている“OTA KNIT (おおたニット)”を広めるべく立ち上がったアパレルブランド「Mebuki」。今回お届けするのは、太田市で奔走する美しい人々の物語です。

既成概念にとらわれない新しいニットの形

季節や性別を問わずに楽しめるニットが作りたい。「Mebuki」はそういった思いを叶えるブランドです。一般的にニットは秋冬シーズンのみに着用する素材ですが、おおたニットは製法や縫製によってオールシーズンで楽しめるニット作りが可能だからです。

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目を粗くすれば夏用のニットに。Tシャツやシャツなどと重ねるだけで着こなしのバリエーションがうんと広がります。ホールガーメント製法と呼ばれる特殊な製法で作っているので、独特の立体感も生まれてきれいなシルエットで着られることも請け合い。

また、ときどきニットを着用すると感じることのある“チクチク”っとした感触をなくすために、極限までなめらかな質感を実現できるよう研究も重ねました。

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オールシーズンで着られて、かつユニセックスで、柔らかな着用感を楽しめる。ニットの世界はこうも奥深くて柔軟なのかと驚いてしまいます。

ちなみにカラー展開が、ブラウン・カーキ・スカイブルーと特徴的なのは、自然の色を洋服に再現したかったからなのだそう。ブランドの名前でもある“芽吹き”になぞらえて生み出したのは、土のブラウン・緑のカーキ・空のスカイブルー。地球を着用するような気持ちになれて、なんだか気持ちまで開放感でいっぱいです。

「ニット」というカテゴリの中でもいろいろな楽しみ方を感じてもらうため、成分の配合具合にもこだわりがあります。たとえばポリエステル47%、コットン53%を配合した「HENRY NECK」シリーズは肌に触れた瞬間のひんやり感が特徴的。

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「ニットなのにひんやり」というとなんだか不思議な心地がしますが、その不思議さこそニットの面白さ。その魅力を届けるための役割として「Mebuki」はあるのだと思います。

地元から生まれる“本当に良いもの”を届けたい

群馬県太田市、自動車メーカー「SUBARU」の本工場があることで知られる街で、自動車・電気機器・繊維業など、多種多様な工業が発展してきた土地です。特に、繊維業、とりわけニット生産は国内屈指の生産地。周辺地域の桐生や伊勢崎などでも繊維業が発展していた背景もあり、太田市全体の象徴産業として成長していきました。

ところが、そういった現実を太田市に暮らす多くの若者は知らないのだといいます。「Mebuki」オーナーの一人、群馬県出身のオダユキムラさんはそう教えてくれました。

「ずっと群馬県で暮らしてきたはずなのに、東京に出るまで自分の暮らす街でニット生産が盛んだなんてまったく知りませんでした。太田市といったらSUBARU以外には何もないと思っていたし、実際のところ触れる機会もありませんでした」

その理由は工場をたたむ職人が相次ぎ、産業としての衰退が加速しているからでした。オダさんがおおたニットに出会ったのはとあるカフェでアルバイトを始めたとき。太田市のお土産が立ち並ぶ中にぽつんと置かれていたのは、優しい肌触りのニットだったといいます。

「ニット生産なんてしていたんだ……と、衝撃を受けたんです。自分がまだ知らない太田市がそこにはあるようでした。そしておおたニットはとても美しかった」

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オダさんは、群馬県太田市で生まれ育ったものの新しいキラキラとした都会に憧れを抱いて上京。その後、さらなる高みを目指すべくアメリカ・シアトルへ渡ります。ところが、輝きを放つ自由な環境で暮らす中で抱いたのは、地元への愛着だったそう。

「高校生くらいのときまでは、地元がダサくて好きになれなかったんです。とにかく早く出ていきたいの一心で。でも、いざ帰ってきてみたらめちゃくちゃ面白い人がいて、そういう人を介してコミュニティが生まれていた。なんて格好良いんだろうって思うようになったんです」

地元に貢献できるようできることをと考えていた矢先、オダさんはファッションデザイナーとして働く同世代、カメダシュウヤさんと出会います。意気投合した二人が立ち上げを決意したブランドこそ、この「Mebuki」だったのでした。

“おおたニット”を群馬へ、日本中へ

2021年5月に誕生したばかりの「Mebuki」。春に生産したのは夏まで楽しめるサマーニットのシリーズばかりでしたが、秋冬に向けたニットも生産を開始。まもなくお目にかかれるようです。

「まずはシンプルに着心地の良いニットをと考えていますが、実は群馬県にちなんだ製品ラインナップも考えています。群馬県には“上毛かるた”というカラフルな郷土かるたがあるので、それらをあしらったデザインのセーターなんて良いよねと話しているんです」とオダさん。

視点が変わり、見える世界が広がったオダさんたちにとって、群馬県太田市という土地ほど魅力に溢れる場所はそうありません。だからこそ、その土地を感じられるアイテムを生産したいと教えてくれました。

「僕はこうしてタイミングが合ったことでおおたニットを知る機会に恵まれましたが、まだまだ群馬県民も知らない人が大半です。ですから、まずは地元の方に『Mebuki』の存在を通しておおたニットを届けていきたい。その先の未来で、日本中の方にも知ってもらいたいなって思っています」

謙虚に、されど挑戦的に。そういう意思をオダさんからは強く感じられました。

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「Mebuki」を通して、ニットという産業を多くの人に伝達するために。彼らの挑戦はまだまだ始まったばかりです。

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10月8日(金)〜10日(日)の3日間、渋谷・MIYASHITA PARKで「NEW POINT〜FACTORY〜」と題したポップアップイベントを開催します。当日はご紹介した「SEE THROUGH VEST」や新製品の上毛かるたセーターなども販売予定です。

群馬県太田市の魅力、ニットに隠されたさらなるこだわりなど、本記事のお話の続きは会場にて尋ねてみてくださいね。ご来場、お待ちしています。

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