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なぜ障害者ばかりを?相模原殺傷 被告との対話【後編】

<<前編はコチラです>>

神戸記者の長男、
金佑(かねすけ)さん(20)。

重度の自閉症と知的障害があります。

ずっと前から欲しかった
スマートフォンを買いにやってきました。

お金を丁寧に並べ始めた金佑さん。
福祉事業所で働き、
1年間大事に貯めてきたお金です。

12万1698円。
機種代金とサービス料金を
事前に計算し、
一円単位までぴったり
用意していたのです。

金佑さんは
金佑さんのスピードで
日々成長していました。

今年2月、
神戸記者は植松被告との
6回目の面会に臨みました。

「身内に障害者がいる人は
 正常な判断ができないんです」

「そろそろ現実見ましょうよ
 僕の考えが正しいかどうか」

「それは福祉のことを
 言っているんですよね」
「でもあなたの生活も
 いま人のお金で
 賄われているのではないですか」

「外に出してくれれば働きますよ。
 いい加減!考えましょうよ、みんな」

「日本の現実を見たら
 それどころじゃない」

別の日、神戸記者は
胸に抱いてきた疑問を
ぶつけました。

「あなたは『役に立つ人』と
『立たない人』の間に
 線を引いて人間を分けて
 考えているようですね」

「もしかすると
 あなたは事件を起こしたことで・・・」

「役に立つ人間」
「役に立たない人間」

これらの考えの背景に
あるものは一体何なのか。

神戸記者と共に
植松被告と面会した人物がいます。
牧師の奥田知志さんです。

●奥田牧師
「彼は
”あまり役に立っていなかった”と」

「彼自身も存在の危機の中に
 生きていたのではないか」

30年以上ホームレスの
支援を続けてきた奥田さん。

●奥田牧師
「ホームレスと言うと
”だらしない”
”働く気ない”とか
みんな思ってるけど
”助けてと言えない”
”人に迷惑かけたらダメ”という
プレッシャーの中で
人に良くも悪くも
依存できなかった人が
挙句の果てに
ホームレスになってる人は
決して少なくない」

実は、植松被告は
事件前に、
生活保護を受けていたことが
わかっています。

奥田さんは
植松被告が
「自分は役に立たない人間ではない」
ということを
証明するために
事件を起こしたのではないか
と考えています。

更に、こう警鐘を鳴らします。

【雨宮キャスター】
植松被告を取材している
神戸記者です。
改めて植松被告の価値観・主張は
なんて自分勝手なんだと思うのですが、
犯行を正当化する
植松被告の主張は
変わってきているのでしょうか?

【神戸記者】
一貫して変わっていないです。
一見分かりやすく
聞こえるかも知れませんが、
浅はかで薄っぺらいなという印象は
全く変わっていません。

人間の一生は色んなことが
起こりうるのに
人生の深い洞察に
欠けている印象なんですね。

私の長男は
色々できることが
増えてきているわけですね。

家族にとっていかに大切な存在かは
お分かりになったと思うんですが、
しかし、彼は
「かけた労力と釣り合っていない
 だから幼い頃に
 安楽死させるべきだった」

僕に言ったんですね。本当に驚きました。

私は長男と暮らす中で
既に障害がある人と、
私のようなこれから障害を負うひと。
その2種類しか世の中にいないと
思うようになったんですね。

誰しも心の中に差別の心
内なる優生思想は持っていると思うが
それを全面的に認めてしまうと
社会は人間らしさを
失ってしまうのではないか。

それこそ心を失った社会に
なってしまうのではないでしょうか。

【星キャスター】
植松被告の理屈を聞くと
「役に立つ人間」と
「役に立たない人間」で
勝手に線を引いている。

年を取って認知症になったり
寝たきりになったり
ケガをして仕事が出来なくなるのは
よくあることですよね。

だからこそ我々は
みんなで助け合って、
共に生きる社会を築きましょう
というシステムを
ずっと苦労しながら
作り上げてきたんですよね。

植松被告の身勝手な理屈をみると
人間が営々と積み上げてきた努力
からかけ離れている気がしますね。

植松被告の初公判は、
2020年1月に開かれる予定です。