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ガザ地区"唯一の資源"太陽で・・・ パレスチナ人女性起業家の挑戦

パレスチナ人が
多く住む地域のひとつ
ガザ地区。

イスラエルが
人やモノの出入りを
厳しく制限しているため
「天井のない監獄」とも
呼ばれています。

灯りすら十分でない
不便な生活。
そんな状況を変えようと奮闘する
若い女性を取材しました。
(NEWS23 2019年5月14日放送)

パレスチナ自治区、ガザ。
ここに住む200万の人たちは
ここから自由に出ることはできません。
 
イスラエルに“封鎖された町”。
その境界線に向かいました。

ガザの住民は
毎週金曜日になると
奪われた土地への帰還を求めて
デモ行進をします。

そこには、
フェンスに向かって石を投げる
幼い子どもたちの姿も
ありました。

投石に対して
銃で応戦するイスラエル軍。

●須賀川拓記者
「もう救急車がなくなっちゃった」
「出払っちゃった」

「監獄」を感じるのは、
この境界線だけでは
ありません。

上空には、
イスラエル軍のドローン。
四六時中、
監視下に置かれているのです。

夜になると、
町は真っ暗になります。

ガザにあった
唯一の発電所は
5年前のイスラエル軍の空爆で
破壊されたまま。

イスラエルから買う電力も、
200万人の需要を満たすには、
到底足りないのです。

ガザでは毎日、
「計画停電」が行われていて、
1日の大半が
電気がない状態です。

料理をするときも、
灯りはガスコンロとロウソクだけ。

暗い部屋で一度寝てしまった
子供たちは、
母親が促しても
食事が進みません。

こんな生活を、
もう何年も強いられています。


こうした状況を変えようと
奮闘する
ひとりの女性がいます。

「私はガザの外に
 出られたとき違う人間になれました」

マジド・マシャラウィさん(25)

ビジネスを展開する父親の影響で
“ガザの外”に出る機会が
あったマジドさんは、
2年前に、国連の支援で
日本を訪れたこともあります。

●マジドさん(2017年取材)
「日本に最初に降り立ったとき、
 インフラなどがすごくて圧倒されました」

「まるで違う惑星みたいで。」

「日本は戦後70年でこうなったけど、
 私たちが日本のようになるには、
 どれだけの年数が必要かしら」

起業や経営に興味を持つ
マジドさんは、
ある資源に注目しました。

自ら開発した太陽光蓄電池で、
電力不足を補うプロジェクトを
2年前から進めています。

しかし、その最中に、
ある悲劇が・・・

今年3月、
倒れたロウソクにより
住宅で火災が発生、
寝ていた3人の幼い姉妹の命が
奪われました。

●マジドさん
「子どもたちは寝るとき
 暗闇を嫌がりろうそくを
 欲しがります」

「火事は母親の責任と言う人も
 いるけどそれは違う」

「電気がないなかで
 親に一晩中起きてろって言うの?」

この日、マジドさんは
太陽光発電システムの設置に
立ち会いました。

中国で作られた部品は、
軍事転用を警戒する
イスラエルによって
一度分解され、
厳重なチェックを受けてから
ガザに搬入されます。

それでもマジドさんは
明るく夢を語ります。

住む土地を追われて71年。
終わらない抑圧に、
自らのアイデアと技術で
対抗したい―――

『天井のない監獄』の中でも、
パレスチナの新世代は
たくましさを失っていません。