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進む新聞離れ・・・アメリカで広がる“ニュース砂漠”

インターネットの普及に伴い、
日本でも加速する「新聞離れ」ですが、
アメリカではその影響で地方紙の廃刊が相次ぎ、
日刊紙が1紙もない地域が拡大しています。
ニュースが発信されなくなることから
“ニュース砂漠”と呼ばれ
社会問題となっていますが、
この状況を食い止めようとする動きも
出てきています。

画面に浮かんだ「最終号」の文字…。
この日は、
創刊から121年続いた新聞社の
〝最後の日〟でした。


新聞の名は「ワーロード・パイオニア」
アメリカ北部ミネソタ州の小さな町、
ワーロードにあります。

「この街からも、
最後の新聞が消えることになりました」


「パイオニア紙」は、週に1度、
地域の行政や福祉、学校などのニュースを伝える
町の住民から愛されてきた新聞でした。


創刊は121年前の1898年。

当時から、地域の出来事だけでなく、
政治家と有権者が参加する
タウンミーティングなど、
政治関連の記事も掲載されていました。

この歴史ある新聞を、
10年ほど前に引き継いだ新聞社主は、
もう限界だったといいます。



部数は、この5年だけでも半減しました。
広告の売り上げも減り続け、
コルデンさんは、ここ数年、
赤字を個人の貯金で埋めていました。



最後の紙面チェックが終わり、
「最終号」のデータが印刷所に送信されました。



121年の歴史に幕を閉じた瞬間
です。



●社主 レベッカ・コルデンさん
「感謝してるわ。これからもずっと一緒よ」
「私たちは終わってしまいますが
 新聞はずっと続いてほしい」

「この廃刊の記事によって
 いかに地域の新聞が重要かを

 人々に知ってほしいのです」



アメリカの新聞界は今、苦境に陥っています。


デジタル化の加速から、
5兆円あった新聞広告の売り上げは
3兆円以上減少


全米8891紙のうち、
この14年間で1779紙が廃刊となりました。


この廃刊ラッシュが生んだ問題が
〝ニュース砂漠〟です。


アメリカの研究者が定義したもので、
新聞が一紙もない、
あるいは週刊の1紙しかないという地域
を指します。

この〝砂漠〟が、
全米、およそ3100ある郡のうち
半数近くまで拡大
しているというのです。


「推計では1250紙の日刊紙のうち、
200紙で利益が出ていません。
その多くが売りに出されています」

今月ニューヨークで開催されたセミナー、
「ニュースの未来」
出席したメディア関係者からは、
地方紙の危機を訴える言葉が相次ぎました。


「地域のジャーナリズムは、
 民主主義の監視役として、
 絶対的に必要不可欠です。
 かつて地方政治を取材していた経験から、
 政府を記者が間近で見ているか見ていないかで
 大きく違います。
 今の状況はとても心配です」

「経営に苦しむアメリカの新聞界で今、
注目されているのが
〝非営利〟という組織のあり方です」

「非営利報道協会」の年次総会には、
全米から報道関係者が集まっていました。

「私たちは普通の非営利のために
 集金するのではありません。
 新たな産業を創造するのです。
 社会がニュースを支援してくれるよう、
 文化を変えるのです」


「非営利」
とは、
文字通り、利益を追求しない報道機関です。

この協会の加盟数は、
10年前の発足時に27だったのが、
今年220を超えました。


そのなかで全米最大の規模に
急成長したのがこの組織です。

「テキサス・トリビューン」

地元テキサス州の議会行政に特化して
報道しています。
事件、事故やスポーツ、娯楽は扱わない、
という方針です。
非営利組織のため、記事の閲覧は無料
他社にも記事を提供します。


発足、わずか10年で、
1ヶ月の読者は10倍200万人以上

収入は個人や財団の寄附、イベントなど多様で、
年間10億円を超えています。

「テキサス・トリビューン」は、
州政府のアルコール規制委員会による
税金のずさんな使い方を調査報道で明らかにし、
その後、委員長が辞任しました。
こうした「州政治の監視」が柱の一つです。


しかし、なぜ市民の関心が低いとされる
「地域の政治」に特化したのか、
編集長に聞きました。

「人々は政治や政策に関心を持つべきなのに、
 持っていないというギャップがあるのです。
 私たちはそれを、
 もっと魅力的にする方法があると
 考えたのです」
「マルチメディアやデータによって、
 本当に革新的に、創造的に
 伝える方法を見つけています。
 私たちは、人々に野菜を提供していますが、
 それを甘いキャンディーで包んでいるのです」



アラナさんの肩書きは、
「マルチメディア・レポーター」

テキストの記事だけでなく、
YouTube用の動画やpodcast用の音声、
twitter, Facebook向けのレポートを
制作しています。

またサイトには、
テキサス州で働く公務員の給料の金額を
全て掲載するなど
市民が検証できるようにしています。

「政治家が、愚かなことを何か語ったり、
 違うことをしたとき、
 必ずしも、ネット上のクリックを
 増やすものではないかもしれませんが、
 魅力があるはずです。
 もし私たちが情熱をもって報じれば、
 人々に関心を持ってもらえると思います」


オフィスの壁
には、記者に向けて、
こんな文言が貼られています。