行き過ぎ部活どう防ぐ?/“指導”の結果命を失った高校生

部活動での行き過ぎた“指導”が相次いでいます。

8月23日、東京・杉並区の知的障害特別支援学校で高等部1年の男子生徒が熱中症で倒れ、意識不明の重体になりました。倒れたのは、部活動のペナルティとして校舎の外周を10キロほど走っていた時でした。当時の気温は、34.9度(※東京都環境局 杉並区久我山 午後4時)。顧問は「試合を控え、意欲向上を目的に走らせた」と話しているということです。
また岐阜県でも、8月16日、私立高校2年の硬式野球部の男子生徒が呼吸困難を起こし倒れました。試合の内容が悪かったことなどを理由に100メートルを120本ほど走っている時でした。この生徒だけがコーチに命じられて走ったということです。生徒は退院し、後遺症はないということです。
しかし、行過ぎた“指導”が命を奪うケースもあります。
(TBS NEWS23 17年8月30日オンエア)
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工藤風音(かざと)さんは8年前、同じ剣道部だった1つ年上の兄・剣太(けんた)さんを亡くしました。

まるで双子のように育った兄弟。剣道も一緒に始め、同じ高校に進学しました。

●工藤剣太さんの弟・風音さん(23)
「『おまえは調子乗ってるから俺の下じゃないとおまえは先輩にやられると。だから俺が通ってる高校に、おかん入れてくれ、俺が守るから』って聞いたのが、今でも印象に残ってますね」

兄・剣太さんは小学生から剣道を始め、高校の剣道部ではキャプテンを務めていました。

●工藤剣太さんの父・英士さん(52)
「私がずっと20数年、小学校の剣道の指導をしてた。この子にも剣道をしてもらって人間として成長してもらいたいという気持ちがあった」

なぜ剣太さんは、剣道の部活動で命を落とすことになったのか。

8年前の8月、気温30度を超える日。練習は朝から始まりました。基礎練習のあと休憩を挟み、防具を着けた打ち込み稽古などが1時間半行われました。他の部員が稽古を終えていく中、顧問は剣太さんに打ち込み稽古を続けさせました。

この様子を見ていた弟の風音(かざと)さんは・・・

●工藤剣太さんの弟・風音さん(23)
「顧問もピリピリしてて剣太に向かってパイプ椅子を投げたりとか。あいつ(剣太さん)が、『もう無理です』って顧問に言ったんですよ。『もう無理です』って剣道ずっと小学校のときからしてたんですけど聞いたことなくて」

それでも練習は続きました。フラフラな状態で壁に額を打ち付け、倒れた剣太さんを見て、顧問はこう言ったと言います。

意識が朦朧としている剣太さんに「演技をするな」と平手打ちを繰り返したのです。

熱中症による意識障害・・・。しかし顧問が救急車を呼んだのはおよそ25分後のこと。剣太さんはその日の夜、亡くなりました。

●工藤剣太さんの弟・風音さん(23)
「あのとき俺がとめとったら剣太は死なずに生きてたやろうし/死んだって認めたくなくて。そのときは」

●工藤剣太さんの弟・風音さん(23)
「でも葬式の最後焼くときに焼くボタンを押す役が自分やったんですよ/ボタン押しきらんくて、そのときこれがお別れやなって思いましたね」

救えなかったという後悔・・・。さらに家族を苦しめたのは、学校の対応でした。亡くなって2か月後に調査委員会がまとめた報告書。剣太さんの異常について発見が遅れたことなどが事故の要因と指摘しながらも、顧問の責任には触れないものでした。

学校は「故意ではなく指導の一部だった」とし、顧問への処分は、停職6か月でした。

納得できない両親は顧問と副顧問の責任を問うため提訴。判決は学校側などに、およそ4700万円の支払いを命じる一方、公務員個人は責任を負わないとする「国家賠償法」を理由に、顧問ら個人への賠償は認めませんでした。

悲劇が二度と繰り返されないように…。

両親と弟・風音さんは全国で訴え始めました。

●工藤剣太さんの弟・風音さん(23)
「先生の行き過ぎた指導によって兄貴は死にました/俺が死ねばよかったのに。何で剣太が死んだんやって、ずっと自分の中で自分を憎んでました」

学校もようやく対策に乗り出しました。

剣道場には、卒業生の名札の中に、剣太さんの名前が・・・。

温度計も設置され、体罰防止の研修も行われています。

剣太さんが亡くなってちょうど8年が経った日、家族の元を突然、訪ねてきた人がいました。

「お盆が過ぎると思い出して・・・やっぱつらい何年経っても/ずっと来れんかったけん、ごめんなって」

高校時代のクラスメイトでした。お通夜の日以来、足を運べなかったことがずっと心残りだったと言います。

●工藤剣太さんの父・英士さん
「今でも忘れんでくれるのがうれしい」
●工藤剣太さんの同級生
「それだけ彼がそういう人だった。忘れさせんっていうか」

今年から、弟・風音さんは家業を手伝い始めました。

●工藤剣太さんの母・奈美さん(48)
「勝手に私たち背負ってるんですけど、私たちの後ろにはたくさんの命がある/この子はこうして命を張って警鐘を鳴らした/私たちができることすべて、命ある限りやっていこうねって話してるんです。剣太が親に選んでくれたからです」


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