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虐待死を防げ 結愛ちゃん元主治医のメッセージ

虐待で命を落とす
子どもを出さないために、
いま声をあげ始めた
ひとりの女性がいます。
彼女は
悲痛な手紙を残して亡くなった
5歳の少女の
主治医でした。
(NEWS23 2019年5月14日放送)

先月、
小児科の医師たちを中心に、
児童虐待の問題を考える
シンポジウムが開かれました。
タイトルは・・・

「目黒事件に学ぶ」

去年3月、東京・目黒区で
5歳の船戸結愛ちゃんが
両親の虐待を受けて
死亡した事件。

●結愛ちゃんが残した手紙
もうパパとママに
いわれなくても
しっかりと
じぶんから

きょうできないことも
あしたはできるようにするから

もうおねがい

ゆるして

ゆるしてください

2度も一時保護されていながら
命を救うことができず、
結愛ちゃんが書き残した
悲痛な手紙の内容は
社会に大きな衝撃を与えました。

この日、
強い思いを持って登壇した、
ひとりの小児科医がいました。

木下あゆみさん。

結愛ちゃん一家が
東京に引っ越す前、
まだ香川県にいた時、
一時保護をきっかけに
結愛ちゃんを
定期的に診察してきた
「主治医」です。

事件をめぐって
国の検証報告書は
児相のリスク判断が
不十分だったなどと
指摘しましたが、

木下さんは
自分が抱いていた危機感を
他の関係機関と共有する難しさを
語りました。

●木下あゆみ医師
「私自身は
 すごく危機感をもって
 緊張感を持って
 関わっていたんですけども
 それがちゃんと関係機関に
 伝わっていたのか」

「伝わっていたと
 思い込んでいるのは、
 私だけだったんじゃないか」


「私はすごく心配で
 転居先の児童相談所に連絡もしたが、
 もっとちゃんと
 かみ砕いて説明すべきでは
 なかったのかなと」

「私の伝え方が
 悪かったのではないかと
 今でも自分に問い続けています」

木下さんが勤める
香川県内の病院。

ここでは、
育児相談に使う部屋のそばに
子どもが遊べるスペースが
作られていて
スタッフが
見守るようにしています。

子どもや親の様子で
気づいたことを
病院の職員なら誰でも
記入できる「気になるシート」。

病院全体で、
子どもや親を見守ることを
呼びかけています。

木下さんは
虐待を防ぐ体制作りに
20年近く関わり、
警察や児相、市町村などと
顔が見える連携も
進めてきました。

なぜ関係機関に
伝わらなかったのか?

木下さんは
「アザがある」
という言葉ひとつでも
関係機関によって
実は受け止め方が違うと
感じるようになったと言います。

あざの位置や不自然さが
虐待の危険度を推し量る上で
重要な目印になるのです。

木下さんは
事件をきっかけに立ち上がった
児童虐待問題の
与野党勉強会に招かれ、
結愛ちゃんの
主治医であることを
初めて公にしました。

そして、
児相などに医師を配置し、
子どもを直接診察した
医師の危機感が
確実に共有される仕組みや

全国どこに引っ越しても、
変わらずに
親子を支える体制の
必要性を訴えました。

国会で審議が始まった
児童福祉法改正案では
児童相談所への
医師と保健師の配置も
義務づけられています。

結愛ちゃん事件から1年3か月。

大きな一歩を踏み出すために
木下さんは
声を上げ続けようと
考えています。


【雨宮キャスター】
木下さんが
取り組んでいる活動として
「チャイルド・デス・レビュー」
というのがあります。

アメリカで40年ほど前に始まり
子どもの死亡事例を
幅広く検証することで
再発防止につなげるという
取り組みなんですね。

【駒田キャスター】
虐待のニュースを取材したときに
自治体・児童相談所・学校の連携に
問題があると感じたのですが、
それにプラスして、
医師の存在もとても大切なんですね。

【星キャスター】
お医者さんも含めて虐待を防ぐ
いまの体制でできることも多いですが、
もう一方で、
児童相談所の人員を増やすなど
国や自治体が人とお金を
投入しないといけない分野が
まだまだある。
今度の児童福祉法改正は
ほんのひとつのステップに過ぎないので、
たくさん残されている
課題に取り組むのが大人の責任だと思いますね。