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望まない妊娠・・・「特定妊婦」って知ってますか?

「特定妊婦」という言葉を
ご存じでしょうか。

望まない妊娠だったり、
経済的な問題などを
抱えていたりして
妊娠中から
支援が必要とされる
妊婦のことを言います。

そもそも
児童虐待防止のために
設けられた考え方で、
「特定妊婦」に
当てはまる女性は、
自治体などから公的な支援を
受けることができます。
しかし、中には
公的支援を敬遠し、
民間の支援に頼る人もいます。
実情を取材しました。
(NEWS23 2019年5月7日放送)

今年3月、
茨城県内の病院で産まれた
男の赤ちゃん。

抱いているのは
24歳の母
アオイさん(仮名)です。

退院後、
向かったのは自宅・・・

ではなく、
あるNPO法人の事務所。

アオイさんが
サインしているのは、
『養育放棄宣誓書』

この団体を通じ、
赤ちゃんを養子に出すことを
あらかじめ決めていたのです。

産まれたばかりの我が子を、
なぜ・・・。

実は、
風俗店で働き、
望まない妊娠をした
というアオイさん。

いま、
日本中で増え続けている
『特定妊婦』のひとりです。

“未成年”や
“経済的な問題”などが
原因で出産後の育児が難しく、
妊娠中からの支援が
必要とされる妊婦を指します。

2017年度の国の調査では
全国で約8500人の
特定妊婦が確認されています。

『特定妊婦』という
言葉が生まれたのは、
いまからちょうど10年前。

児童福祉法の
改正によるものでした。

虐待などで
生まれたばかりの新生児が
死亡するケースが相次ぎ、
それまで
行政介入の対象外とされてきた
“妊婦”への支援が
初めて法律で定められたのです。

これによって、
全国の市町村は
妊娠届を受理する際に
個別面接を実施するなどして
特定妊婦の存在を把握し、
必要に応じて
医療機関や児童相談所に
繋ぐといった取り組みを始めました。

しかし、
全ての特定妊婦に
そのような支援が
行き届くわけではありません。

「出産費用がまかなえない」
「産んでも育てられない」
といった理由で
行政に頼ることが出来ない妊婦が
数多く存在しているからです。

そんな妊婦たちの
“駆け込み寺”になっている
場所があります。

彼女たちの生活を
出産前から無償でサポートし、
産まれた赤ちゃんを
特別養子縁組制度で
あっせんするNPO法人です。

●NPO法人『Babyぽけっと』岡田卓子代表
「(一番若い妊婦は)14歳。
 中学生は多いですよ」

「帰る家もない、
 頼れる人もいない、
 お金も仕事もない。
 無いものづくしの女性ばかり」

年間約50人、
これまで
400人以上の赤ちゃんを
あっせんしてきた   
岡田さんのもとには、
全国から日々、
様々な相談が寄せられます。

そのなかでも
性的暴行を受けて妊娠したり、
ネットカフェを
転々としていたりなど、
特に深刻な状況に
置かれた妊婦たちを
シェルターで保護し、
衣食住を提供してします。

東京都内の風俗店で働いていた
リコさん(25・仮名)。

妊娠に気づいたときには
中絶できる期間を過ぎていたため
ここに辿り着きました。

●リコさん
「父親になる人が
 私は誰か分かっていない」

「生活するうえで、
 自分だけで精一杯なのに
 この子を責任持って
 育てられないと思った」

リコさんの両親は、
父親の不倫が原因で裁判に。

母親が背負った
裁判費用を返済するため、
風俗店で働くうちに
妊娠してしまいました。

●リコさん
「普通の妊婦さんだったら、
 可愛いとか、いとおしく
 思うのかもしれないけど」

「一歩ひいたような気持ちに
 なってしまった」

“望まない妊娠”を
親や友人には打ち明けられず、
都内の病院でも
「片親の子は産めない」と
門前払いに。

シェルターで過ごす
日々のなかで、
成長する赤ちゃんの様子を
日記に綴っていました。

●リコさん
「これが望んでいた妊娠だったら
 違ったのかなと思います」

その6日後・・・

リコさんの赤ちゃんが
生まれました。

数日後、
『Babyぽけっと』の事務所に
やって来たのは、元気な男の子。

しかし・・・。

●NPO法人『Babyぽけっと』岡田卓子代表
「(リコさんは)抱かないって」

「辛いからでしょう。
 本当は自分の子どもだから」

赤ちゃんとの別れが
辛くならないうちに、か

リコさんはシェルターを
去ってしまったのです。

過去には、
出産を経て
赤ちゃんに愛情が芽生え、
養子に出す判断を
覆した女性もいたといいます。

経済的な理由などから
育児が困難になり、
我が子に手をかけてしまう
母親もいるのが現実です。

厚生労働省の調査によると、
毎年、
虐待で亡くなる子どものうち
約半数を占めるのが0歳児。

子どもが虐待を受けるなどして
行政から
“要支援”とされた割合について、

一般の家庭約2%に対し、
特定妊婦の場合は
50%近くにのぼるといった
調査結果も出ています。

特定妊婦の
状況を改善するためには、
行政による
経済的な支援の拡大が必要だと
岡田さんは訴えます。

●NPO法人『Babyぽけっと』岡田卓子代表
「経済的な理由で(子どもを)
 手放す親が一番多い。
 出産費用も払えない。
 行政に頼むと、
 お金を貸してくれる
 ところもあるけど、
 返さないといけない」

「もうちょっと行政の力も
 拡大していってもらえると
 違うのかなと思う」

その後、
リコさんの赤ちゃんは
6年以上
不妊治療に取り組んできた
長野県の夫婦に
引き取られました。

●赤ちゃんを引き取った夫婦
「まだ夢のような感じだね」

幸せな人生を歩み始めた
ひとりの赤ちゃん。

その一方で
行き場の無い
特定妊婦や赤ちゃんが
増え続けているのも事実です。

【雨宮キャスター】
VTRのなかに
”親にも彼にも頼れない”
という旨の言葉がありましたが
「そもそもこうやって
 救いを求めるのが
 なぜいつも女性なのか」
ということが釈然としないのですが

今回取材したのは、
子どもを引き取るという
支援の現場でした。
「特定妊婦」の中には、
精神的、経済的な支援があれば
自分の手元で育てたいという方もいる。

そういう人たちが
虐待に陥ることなく子育てを
できるような行政の支援は、
まだ十分ではないようですね。


【星キャスター】
「特定妊婦」制度自体は
生まれてくる子どもを
保護するためにできた制度。
本来は行政が
世話をしないといけない制度なのだが、
それができないというのであれば、
今回出てきたようなNPO法人に
手厚く支援していくことが
必要だと思いますね。