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【追跡】レンタカー事故急増の裏で… 中国人観光客 謎の国際免許証 (後半)

年々増える外国人観光客。それに伴って増えているのが、レンタカーを利用する外国人です。その数5年でおよそ4倍。しかし、一部の外国人が使う国際免許証に不審な点があることが分かりました。謎を追っていくと、大きな問題点が見えてきました
(前半はこちら)

人口1000万人を超える首都マニラ。Aさんの免許に書かれていた住所に行ってみると…。

「その住所、どこだろう。あれだ。あれじゃない。住所ここですねこのビル。」

大通りに面した古いビルでした。取材を続けると、そこは中国や韓国系の会社が多く入るオフィスビルだということが分かりました。

そこで、フィリピンの運転免許証を発行した陸運局に確認してみると…。

●フィリピン陸運局シニアオフィサー
「残念ながらこれは偽造です。我々の記録の中には、この免許所持者は存在しませんでした。確かにその免許番号は存在しますが、免許所持者は違う人物です。」

Aさんの免許番号は、フィリピン在住の別の中国人の名前で登録されていました。住所どころか、そもそも運転免許証自体が偽物だったことが分かったのです。

●一方の、国際免許証のほうは…。

●フィリピン自動車協会
「明らかに偽物です。この番号はこの人のものではないです、この国際免許証は我々が発行したものではありません。」

こちらも偽物でした。実際に、国際免許証の製造過程を見せてもらい、比べてみると…。

●国際免許の担当者
「本物は少しぼやけていますが、偽物は、とてもクリアです」

ほとんど同じように見えますが、違いはスタンプ。本物は押されると少しかすれるそうですが、偽物は、印刷されたのかくっきりとしています。さらに、発行責任者のものとされるサインについては、実在しない人物のものでした。

では、この偽免許証は、どこで作られたものなのか。街の人に聞いてみると…。

●街の人
「そこで偽物がたくさん売られています。」

偽の免許証は、誰がどうやって作ったのか…。

Q)どこで手に入れたんですか?
「おそらく市場にある露店で買ったんだと思います」

偽の免許を作るブローカーがいる…。私達は市場を探し歩きました。

「あそこにあった」「いろんな免許証がある」

男が座る横の台には…、あらゆる免許やID、大量の資格証明書が並んでいます。

中には、高校の卒業証書に、医大の学位まで。

偽のライセンスを売る店です。

そして…フィリピンの運転免許証と国際免許証も。

Q)作ってもらうのにどれくらいかかりますか?
「1時間もかからない」

運転免許証と国際免許証あわせて2000ペソ、日本円にしておよそ5千円でできるといいます。

Q)本人がここへ来る必要は?
「ないです。必要な情報があれば作れます。名前誕生日出身地住所などを書いて署名してください。国籍もね」

こう言って男が渡した紙には…、名前や誕生日、身長や体重、自筆のサイン、こうした情報を、写真とともに渡すだけだといいます。フィリピンの住所はないことを伝えると…。

Q)フィリピンに住所がない場合は?
「もし住所がフィリピンになかったらでっちあげて」

そう言って、並べられた偽の免許証から、適当な住所を探し始めました。この偽の免許証、どのようにして作られているのか。

Qどうやって作るんですか?
「ストックがあるんです。元のカードは全て中国で製造していて1週間に100枚作っています。中国で申請を受け付けて、こちらに客の情報を持ってきます」

実際に海外で使えるのか尋ねると…。

Q)警察には分からない?
「海外でばれることはないでしょう。安全だよ、もう4年もうちの店を利用している客がいるから」

Qどこのお客さんが多いですか?
「中国人が多いです。」

Aさんの免許証もこうして作られたのでしょうか。

明らかになった偽の国際運転免許証を使ったレンタカー利用の実態。

沖縄での取材中、Aさんは、持っていた国際免許証が偽物だとは思ってもいなかった様子でした。インターネット上には、中国人を対象に国際免許証の取得代行をうたう業者が数多くありますが、Aさんが利用したという業者は既にサイトが閉鎖されていました。

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取材を担当:寺川祐介ディレクター
現地で陸運局などに確認して初めてわかったことですが、結局、Aさんの免許証は一から偽造されたものでした。あれだけ堂々と、偽物が売られていることに非常に驚きました。

レンタカー協会では、車を貸す際に、国際免許証の有効期間や、条約に入っている国で発行されているかなどを、確認することとしています。ただ、偽物かを見破るためには、免許証を発行した国に直接、確認する必要があり、レンタカー会社がそこまでしているかというと、手が回っていないのが実状です。