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「文字がゆがむ…消える」 “読み書き障害”ディスレクシア 少年の学びは

こちら、ある小学生のノートです。本人は丁寧に書いたといいますが、文字が大きく乱れ、一部は、はみ出しています。この少年には先天的に読み書きに非常な困難を伴うディスレクシアという障害があるんですが、学校ではどのように学んでいるのでしょうか?
(TBS NEWS23 18年3月21日オンエア)

松谷知直さん、16歳。奈良県内の工業高校に通う、1年生です。松谷さんは機械工学科で学んでいます。

みんながペンを使う中で、彼だけがタブレットに打ち込んでいるのは、人よりも極端に苦手なことがあるからです。それは文字の読み書き。知的能力に問題がないにも関わらず、文字を読むことに人一倍時間がかかるというのです。

視力には問題がない松谷さんですが、文字を読もうとすると…

一番上の文章が真ん中のようにみえたり、ひどいときには一番下のように歪んで見えるといいます。

松谷さんは小学生のときに学習障害のひとつであるディスレクシアという障害があることがわかりました。

ディスレクシアとは知能に異常がないにも関わらず、文字の読み書きに困難を示す障害です。

その原因は言語を司る左脳の働きが弱いことにあるとされ、今の医学では治療することはできません。

そして、松谷さんは読むことに加えて、文字を書くことにも強い困難さを抱えています。

これは松谷さんが小学3・4年生のときに書いたノート。時間をかけ丁寧に書いたといいますが、文字が枠の外にはみ出していることがわかります。

「気持ち」という漢字の「持」という字のつくりの部分は逆さになっています。

これは「散歩」。

そしてこれは「照明」です。

松谷さんにとってはこうした文字を正確に書くことは難しく、日をまたぐまで宿題に追われ、友達と遊ぶ時間すらなかったといいます。

中学校3年生の時に書いた自分の名前は「知直」という字の位置が反対になっています。そして私たちが取材した日に書いた名前も、線からはずれています。

どうすれば読み書きが上達するのか、全く分からなかったという松谷さん。そんな松谷さんに大きな変化をもたらしたのがタブレット端末でした。

キーボードで入力することで漢字の変換もでき、手書きにくらべて宿題をする時間が10分の1にもなったという松谷さん。その分、友達と遊んだり部活動に参加したりする時間ができ、ようやく“努力が報われる”と思うようになったといいます。

松谷さんは将来技術者になりたいと工業高校を志望し、合格しました。しかし、そこにも壁が。当初、入試ではタブレットの使用は認められていなかったのです。

松谷さんや両親は教育委員会に対し、ディスレクシアへの理解や入試でのタブレットの使用を訴え続けました。奈良県ではタブレットの持ち込みの前例がなく、入試わずか4日前になって許可が出されました。

JNNが行ったアンケートでは去年、公立高校の受験でディスレクシアの生徒に対してタブレットなどの電子機器の使用を認めた、と回答した都道府県はわずか2つにとどまりました。

少しずつ学ぶことの喜びを感じられるようになったという松谷さん。

この日はディスレクシアの当事者らが集まるシンポジウムに参加し、今の思いを語りました。