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タイのゴルゴ13、M16にスコープ

 2010年5月15日、赤シャツ側で取材した前夜、陸軍から実弾をさんざん撃ち込まれたので、今日はその陸軍兵士たちについてみる。赤シャツが封鎖しているラマ4世通りに割り込むように陸軍が陣地を形成しているので、赤シャツに会うことなくたどり着く手段は2つ、地下鉄(MRT)に乗ってルムピニー駅で降りるか、緩衝地帯となっている在タイ日本国大使館前のウィッタユ(ワイヤレス)通りを歩くか、のどちらか。試しに日本国大使館前を歩いてみたが、向かいのルムピニー公園には相当な人数の赤シャツがいるにもかかわらず、あまりに静か過ぎて気味が悪かった。後日、同通りでは欧米人の記者が被弾した。

 午後一。銃撃戦は始まっていたが、赤シャツ側からは爆竹や火炎ビンが飛んでくるだけで、激しい衝突はない。タイ人記者が、「せいぜいM150、写真にならない」と冗談を言っている。小銃の「M16」、グレネードランチャーの「M79」という名称に引っ掛けて、火炎ビンを「M150」と呼ぶようになっていた。火炎ビンがドリンク剤のM150のビンで作られているからだ。記者の間では流行語になったが、19日の赤シャツ最後の日にそのジョークは消え去った。

 陸軍はというと、赤シャツ相手に撃ちまくっていると思いきや、隊長らしき兵士が部下に向かい、
「記者だから撃つな」
「1発だけ撃て」
と、冷静沈着に命令を出していた。双眼鏡で赤シャツを正確に確認している。もっと激しく撃ってくれないと写真にならないと思いつつ、兵士たちの真後ろで写真を撮っていたら、幹部らしき偉い人に「チョロチョロ前に出てくるな」と怒られた。

陸軍側から、赤シャツが火事を起こした銀行支店が見える。

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