見出し画像

そこにいればいつでも出会えるテロ Chapter 1 陸軍分隊を従軍取材① 陸軍広報幹部との腕時計交換

 1千キロも離れたバンコクから数カ月起きに訪れるだけでは、南部国境県を効率的に取材できるわけはない。テロにはある程度の波があって、各種報道を逐一追っていけば「次の山は来週だ」などと読めるようになってくる。

 ただそれだと、競輪や競馬の目を予想しているというか、(テロに巻き込まれる)人の不幸を期待しているというか、何となく後ろめたい。そんな自分の読みを頼って取材を決めても、現地で何も起きなければ「早く何か起きとくれ」とばかり願っている。自分が巻き込まれるなど思いもよらず、逆に巻き込まれるぐらいの引きの強さを期待している。取材は常に受動態でしかない。

 そんなとき、本業の日本語情報紙のタイ人スタッフが、タイ南部一帯を管轄する第4軍管区の広報担当幹部との線を繋いできた。それならば、正規に取材申請して従軍だ。待ちぼうけもなく、事件がなくても写真になり、人の生死で商売しているという後ろめたさもない。

軍事費が潤沢なのか、装備が最新。ドイツ製G36Kを持つ兵士

ここから先は

916字 / 2画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?