Chapter 10 日本より身近な役人② その日に会ってその日に取材
最初に会ったときにはパッターニー県知事、その次に会ったときには南部国境県5県を管轄する「南部国境県管轄センター」長官に昇進していたパーヌ・ウタイラット氏。南部国境県についていろいろ取材しているとはいえ、こちらは一介の記者に過ぎない。県のトップである県知事などにインタビューを申し込むほど、身の程知らずではない。ないのだが、タイでは往々にして企業でも役所でも政府でも、知らないうちにトップに行き着いてしまうことがある。パーヌ県知事のときもそうだ。
きっかけはパッターニーのセントラルモスクでの撮影。2006年7月15日、「タイ国王在位60周年」を祝う祈りが行われると聞いて出向いたら、「加トちゃん」に似た県庁広報課のムスリムが近づいてきて、
「おお、日本人か、よく来た。じきに県知事のスピーチが始まる。終わったらインタビューでもしろ」。
と勝手に決めてしまったのだ。
広報課というのはもちろん、メディアに県の出来事を取材してもらい、県民に広く知ってもらうのが仕事。職員は出世のために、県知事をはじめとする上司に「取材を受けてくださいよ」などと持ちかけ、「自分はしっかり仕事しています」とアピールする。この加トちゃんみたいな職員もしかり。「日本人記者を連れてきたぞ」という、実際にはモスクで偶然会っただけなのだが、とにかくそういう仕事ぶりを上司にアピールしたかったのだ。
パッターニー県のパーヌ県知事
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