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未成年飲酒

 大学生になりサークルに入ってから、何度か飲み会に参加する機会があった。大人数が苦手な僕にとっては、かなりストレスがたまるイベントだ。正直あまり行きたくない。

 飲み会では、普段はおとなしい人でも、羽目を外してわいわい騒いだりする人がいる。リミッターを解除して、ある種一夜の過ちを犯すのである。お酒の力を借りて。大学の飲み会では大概、飲める側の人と飲めない側の人の2つに分けられる。それはもちろん好き嫌いもあるが、ここでは年齢に重きを置きたい。

 最も若い大学生は、一八歳である。無論日本では二十歳未満は飲酒禁止であるため、飲み会でお酒を飲むことはできない。当たり前のことである。常識である。なぜならこれは法律で定められているから。これは暗黙の了解などではなく、日本国民共通のルールである。しかし僕が参加した飲み会では、半数以上の未成年者がお酒を飲んでいた。飲み会は、非日常的に賑やかであるということだけでなく、それを周りが止めないことも、僕にとってはマイルールに反するためストレスである。僕もこの状況を静観していたため同罪なのだが。

 この頃まったく飲み会に参加しなくなったが、最近バイト先の店長と飲み会の話になった。店長はお酒があまり飲めないうえに、飲み会時のみひどく騒ぐ人を引いて見てしまう自分がいるため、あまり楽しめたことがないらしい。

「大学の飲み会だと、飲んじゃいけない人でも飲んでる人いるんでしょ」

 と店長に聞かれ、大きくうなずいた。

「未成年飲酒って、わさびと同じだと思うんです。おすしにわさび入れて食べる人は、大人だっていう風潮あるじゃないですか。お酒飲んでる人って、わさび抜きで食べるなんてお子ちゃまだなーって自慢するのと同じ感覚でお酒飲んでるんじゃないですかね。もしくはわさびを食べられる自分に酔ってる感じ」

 持論を展開したら、店長は笑ってくれた。僕と同じように飲み会にあまり良い印象を持っていないため、同意を得られると思ったが、やはり僕の偏向的思考はあまり理解されないらしい。

 禁止されるとむしろやりたくなる心理は、心理的反応制御理論とよばれるが、未成年飲酒はまさにこれであると思う。本来やってはいけないことを犯すことは、スリリングで面白いことである。コンビニとかスーパーとかで万引きする心理もこれである。僕にはこうした心理は理解できないし、どちらかといえば、誰にも文句言われないほどに完璧に守ってやろうじゃないかというふうに思われるのである。

 「早く大人になりたい」と嘆く人が僕の友人の中にも何人かいるが、僕はできれば子供のままでいたい。子供だからと譲歩されることもあるし、様々特権もある。
 だから僕は、お酒は飲まないし、おすしにわさびも入れない。

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