新自由主義の危険性

  衰退する歴史を復活させる推進力が「新しい哲学」しかないことに気付いている人は少なくない。政治家では小泉純一郎や小沢一郎、橋本龍太郎、安倍晋三などは分かっていた。知識人も竹中平蔵や堺屋太一などは気付いていた。どちらかというと気付いていないのは従来の思想に依存する共産党や社会党の方だろう。自民党系は従来の思想の限界を知っていた。


 しかし、今までの日本が海外の新文化を輸入して推進剤としていたため、今回の激動期も海外から輸入しようとする方法はいささか間違っている。明治初期の欧州、昭和戦後の米国、で、今度はどこからとなるのか?

 確かに欧米ではケインズ主義とハイエクやフリードマンらの新自由主義が対立し、80年代にはレーガンが新自由主義を採用、イギリスのサッチャーや日本の中曽根も採用した。しかし90年代初頭にバブルが崩壊した。それでも新自由主義にこだわる竹中平蔵。何故か。彼をはじめ多くの日本の社会科学者が哲学に疎い点、哲学に疎いのにシカゴ大学で彼らなりの哲学史解釈を学び、新自由主義に傾倒した点が挙げられる。

 シカゴ学派の哲学についてはいずれ詳細を書くが、簡単に言うと「規制緩和」。規制を撤廃して「自生的秩序」のもと活力を上げるという。しかし現実は秩序が自生的に出来はしないし、活力も良い方向と悪い方向とがある。世界全体でみると管理が弱くなったことによる失敗の面が目立つ。

 それでも新自由主義者は簡単には引かない。それは、この哲学が一部の勢力にとって多大な利益と権力を生むからだ。国家秩序を撤廃して肥大化する勢力とは多国籍企業に他ならない。飲料メーカー、食糧関係、パソコン関係、アパレル、金融、保険などの多国籍企業が世界中に広がるためには、新自由主義者を国々の中枢に据えて、TPPを結ぶ手が一番である。


 本来、人間の生活を最も見るのは多国籍企業だろうか? 否。誕生から成長、教育、就職、療養、死まで面倒を見るのは国である。だから国や国境を否定する哲学が決して良い訳はない。TPPの危険性に気付く大勢の知性は正しい。


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