恋愛は服を買うようなもの。お試し感覚で付き合うニューヨーカー。
マンハッタンのZARAで買い物をしていたときのこと。
平日にもかかわらず長蛇の列ができているレジに並び、ようやく順番がやってきた。
店員に商品を渡すと「購入?」と聞くのでそうだと答えると、「ここは返品専用のレジ。購入は下の階だよ」と言われた。
え?
振り返ってみると、確かにみんな商品ではなく商品を買った袋を持って並んでいる…。
わたしはびっくりした。
かれこれ15分は待つほど長い列に並び、そしてわたしの後ろにもたくさんの人たちが並んでいる。これがすべて返品の列だなんて……日本では考えられない。
アメリカでは基本的に、期間内であれば大抵のものが返品が可能なのだそうだ。アパレルに限らず、スーパーや薬局、電化製品など、ほとんどのものが返品、または交換可能だ。
だから多くの人が、気軽に買って気軽に返品する。しかも無条件で、理由を告げることなく返品が可能なのだから、返品のレジに列ができるのも納得だ。
これはまさに「お試し期間」。
「よさそうだったからとりあえず買ってみたけど、やっぱいらないから返す」「ちょっと使ってみたけどしっくりこなかったから返す」くらいのノリなんじゃないだろうか。
この考え方は、彼らの恋愛観にも同じことが言える。
ニューヨークの人々は、少しでもいいなと思った人とデート期間を設けて、お試し感覚で付き合う。
デートはもちろん、キスやセックスをしてもまだなお真剣な交際ではなく、あくまで相手を見極めるお試し期間。
その後、本気でいいと思える相手とは真剣に付き合い、そうでなければさようなら。
軽く買って、使ってみてしっくりこなければ返品する。
軽く始めて、お互いを知ってしっくりこなければ別れる。
モノと比べるのもどうかと思うけれど、わたしは返品文化と男女関係に共通点を感じずにはいられない。
ニューヨークでは、「選ぶ」ことに対してのハードルがものすごく低いのだ。
軽く始めてみる。
とりあえず買ってみる。
知ってから好きになっていく。
そしてそのお試し期間を楽しむ。
良いか悪いかではなく、それがニューヨークスタイル。
あれこれ難しく考えず、気軽に生きていきたいと思う人にとっては心地良い環境なのかもしれない。
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