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至高のバンド「SUPERCAR」Vol.3:JUMP UP

この記事をご覧いただきましてありがとうございます。


さて、以前の投稿より、自分の好きなことを楽しく書いてみようということで、趣味の音楽について【短期集中連載】を開始しております。

テーマはズバリ、

”至高のバンド「SUPERCAR」”

SUPERCARは、90年代後半から2000年代にかけて日本の音楽シーンで活躍したバンドであり、数多のアーティストの中でも私がトップクラスで好きなバンドであります。

なお、SUPERCARの説明や魅力については、Vol.1でたっぷりと紹介していますで、ぜひご覧ください👇👇

Vol.2以降は、SUPERCARが発表したオリジナルアルバムについて1枚ずつ魅力を深掘りしていこうと思います。

ニッチなテーマですが、少しだけお付き合いいただけると幸いです。

ちなみに、Vol.1では想いが溢れすぎて、さっそくとんでもない文字数を書いてしまったので、これ以上ハードルをあげないようサクッと書くように意識します…
(結局、Vol.2でもすごい文字数でしたので、今度こそ気をつけます👇)

今回は、2ndアルバム「JUMP UP」について書いていきます。

1st.スリーアウトチェンジ
2nd.JUMP UP

3rd.Futurama
4th.HIGHVISION
5th.ANSWER

ちなみに、Vol.1でも書いたように、SUPERCARはアルバムごとに音楽性を大胆に変化させています。私自身も、解散後のシングル集「A」でその変化に衝撃を受け、まずはどのオリジナルアルバムから聴いていこうか悩みましたが、結果的にはオリジナルアルバムを発売順に聴くことになりました。

1stアルバム「スリーアウトチェンジ」を聴き、期待以上の大きな充実感を得ることができた流れで、次の2ndアルバム「JUMP UP」を聴くことになります。

「JUMP UP」の概要

「JUMP UP」ジャケット

「JUMP UP」は1999年に発売されたSUPERCARの2ndアルバムであり、シングル曲”Sunday People”、”My Girl”、”Love Forever”を含む全11曲が収録されています。

この「JUMP UP」というタイトルは、セカンドステップという単純明快な理由からきているそうです。

前作「スリーアウトチェンジ」で音楽シーンに存在感をアピールできたこともあり、今作ではチャート順位が大幅にアップしました。オリコンのサイトを見る限りでは、前作よりも多く売り上げたようです。


そして、私、このアルバム、けっこう好きです😊

恐らく、今後の投稿でも毎回言いそうですが(笑)

というのも、個人的に前作「スリーアウトチェンジ」よりも格段に聴きやすかったからです。

「スリーアウトチェンジ」では、洋楽を聴いているかのような驚きや面白さのほうが強く感じましたが、「JUMP UP」は少し角が取れたといいますか、それまで聴いてきたJ-POPのイメージにグンと近づいた、まとまりのあるアルバムに感じました。

個人的には、夜中に部屋で1人、しっぽりと酒を飲みながらゆっくり聴きたいアルバムです。

そういった作風のため、SUPERCARの他の作品と比べると若干埋もれがちであることは否定できませんが、作品群の中では1番抵抗なく聴けちゃうアルバムなのではと思っています。

とはいえ、このアルバムにも前作や後作にない面白さや魅力が溢れていますので、私なりに紹介していきます。

明確化した”コンセプト”

さて、このアルバムは1回聴くだけでも前作「スリーアウトチェンジ」との違いを感じることができるくらい、さまざまな面で変化がみられます。

まず、サウンドに打ち込みや電子音が取り入れられます。プロフィールによると、メンバー(多分ナカコーさんだと思うけど)が以前から興味があった打ち込みや電子音を、本作から大胆に取り入れたそうです。

厳密にいえば、先行リリースされたシングル曲「Sunday People」から、既にその片鱗を見せています。

サウンドアレンジの幅が広がり、MVの作りもなんだか以前より充実していて、バンドがノっているのがよく分かります。

また、このアルバムは全体的にメロウでスローテンポな曲が大部分を占めています。

強いていえば#8”Skyphone Speaker”などがアップテンポ寄りですが、前作の疾走感とはまた違う曲調になっています。

さらに、音源の再生が始まった瞬間から、かすかなノイズ音が聞こえてきます。このノイズ音は終始途切れることなく鳴り続け、まるでレコードをかけているかのような感覚になってしまいます。

私的にはこのノイズ音が雨音にも聞こえ、メロウでスローテンポな楽曲と相まって、まるで真夜中に雨の中を歩いているような、少し暗いイメージが持てます。

実際、このアルバムのジャケットデザインは「ゴアテックス(GORE-TEX)」のカタログをイメージして制作されており、トップ画のようにメンバーが雨の中で佇んでいる画像からも、そのイメージが増幅します。

また、先行リリースされたシングル曲「My Girl」のサウンドやMVからも、そのイメージがより強固なものになります。

最初の方に述べた、私が聴きやすいと感じたサウンドの典型例のようであり、このアルバムのイメージを凝縮したような曲です。

そういったことから、サウンド面において明確なコンセプトをもって制作されたのではないかと推測します。

なお、SUPERCARはデビューから3rdアルバム「Futurama」まで曲を制作していないという記述から、恐らく本作の収録曲もデビュー前のストックから出されたものと思われます。

それでも、前作のような終始鳴り響く轟音ギターとは異なり、楽曲のイメージやサウンドアレンジが大きく変化しています。

収録曲も今作は11曲と厳選され、1曲1曲が存在感を出しているような印象です。溢れんばかりのパワーを強引に閉じ込めたような前作とは異なり、非常にコンパクトでまとまりのあるアルバムなのではないでしょうか。

青春時代が過ぎ、大人への”成長”

先述のように、前作と比べてかなりボリュームが抑えられ、楽曲もそれぞれが際立つような印象があります。

まるで、昔は尖っていた人が丸くなったような、精神的に大人になったようなイメージを、前作からの流れを見ると感じます。

前作の特徴は残りつつ刺々しい部分が削ぎ落とされ、J-POPサウンドに一層近づいたようにも思えます。

それもあってか、前作と比べると少し暗くなったような印象は否めませんが、音楽的にはいい歳のとり方をしているのではないでしょうか。

サウンド面だけをみると「スリーアウトチェンジ」が”陽”で「JUMP UP」が”陰”という対の関係性だと思っているのですが、「JUMP UP」には不思議とマイナスのイメージがないんですよね。

鬱々としているというよりは、自ら好んで暗闇で孤独な世界を謳歌しているような印象があります。これもある意味、大人になったことで”独り”の世界の楽しみ方を覚えてきたということなのでしょうか。

また、歌詞についても、前作との変化が見られます。

前作では地に足がついているような、距離感の近い歌詞だったように思えますが、本作はどこか俯瞰している印象があり、大人として一歩引いたところから見ているような余裕を感じます。

曲の主人公にも成長が見られ、特に上記でも紹介した「My Girl」の歌詞が象徴的です。

「淡い願いの恋は叶ってたんだった。
 永い誓いの愛に構えてたんだった。
 期待を引いた分の甘いストーリーを
 ギターを弾いて今日は歌うつもりさ。」

素直になれずにすれ違いや衝突ばかりだった前作とは違い、こんなにもストレートにラブソングを歌い上げています。

青春時代を終えて、自分の気持ちは素直に伝えないといけないということを学んだのですね。

さらに、#7”Tonight”において、前作収録の”Lucky”からの成長も感じられます。

ナカコーさんとフルミキさんとのツインボーカルという点では”Lucky”と同じですが、サウンド面や歌詞からも少しアダルトな印象が持てます。

相変わらずお互いの不器用さは感じますが、それでも頑張って歩み寄ろう、寄り添っていこうという心情が見られます。大人になったねえ(←もう語彙力がありません)

ちなみに、一時期この曲が好きすぎて鬼リピートしていた時期があります。なんか、こういう雰囲気の曲が好きなんですよね。この曲を聴くと、出張帰りに新幹線を待つ夜の大宮駅を思い出します(笑)

キャリアにおける”過渡期”

本作について、初期のノイジーなギターサウンドが印象的な1stアルバムと後期のエレクトロサウンドに傾倒した3rdアルバムに挟まれた、バンドのキャリアにおける”過渡期”に制作されたアルバムであります。

私の感覚ですが、比率としては、ロック7:エレクトロ3くらいの割合でしょうか。その後は徐々に比率が逆転していきますが、本作ではまだロックサウンドがベースになっています。

ですが、最初にも書いたように、私的にはこのアルバムが非常に聴きやすい印象がありました。

というのも、バンドサウンドに打ち込みや電子音がエッセンスになっている本作のサウンドが、私がそれまで聴いてきた音楽に近しく、個人的に一番馴染みがあったからです。

メジャーシーンのJ-POPサウンドを聴いてきた身としては、1stアルバム「スリーアウトチェンジ」のサウンドは少々身に余るような感覚でしたが、このアルバムは前作のいい部分を残しつつ「静」を帯びたまとまり感があり、初めて聴いた時でもスルッと聴くことができました。

それでもまだ前作のような「シューゲイザー」チックなサウンドも残っていて、#10”Talk Talkなんてもう、歌詞カードを見ないとなんて言っているのか分かりません(笑)

なので、実はバンドのキャリア全体における”いいとこどり”なアルバムなのではないでしょうか。

また、先述の通り歌詞についても、このアルバムから徐々に変化が見られるようになったと思えます。

後期にかけて抽象的になっていく歌詞に近いような楽曲が、本作にはチラホラ見られます。#3”Jump”に至っては、歌詞カードを見たら2行ですからね(笑)

以前に面白い記事を見つけたのですが、作詞担当のいしわたりさんのインタビュー記事で、自身の作詞家としてのキャリアを振り返るという内容でした(取材は解散後何年も経過した時期です)。

いしわたりさん自身、デビュー当初は作詞のスキルを持ち合わせていない中で楽曲制作をされていたそうですが、その後は独学で作詞の勉強をしていったそうです。

その中でも特に洋楽を参考にされていたそうで、長文の日本語で歌う邦楽と異なり、端的な言葉を用いることで、強調性がありメロディに乗りやすい洋楽の作詞方法をSUPERCARの音楽に取り入れていったようです。

そう考えると、後期にかけて抽象的になっていく作詞の変化も頷けますし、作詞の面においても「JUMP UP」が”過渡期”であることが分かります。

企画盤を経て、次の”次元”へ

「JUMP UP」発売の直後に、企画盤「OOKeah!!」「OOYeah!!」がリリースされます。

「OOKeah‼︎」ジャケット
「OOYeah‼︎」ジャケット

(3Dメガネが欲しい…)

この2枚のアルバムで、デビュー前に制作された膨大なストック曲がさらに放出されることになります。個人的にこの2枚のアルバムにはあまりコンセプト要素を感じないため、あくまで企画盤としての立ち位置なのでしょう。

サウンド的には1st「スリーアウトチェンジ」に近いものが、これでもかと詰め込まれています。いや、むしろ「スリーアウトチェンジ」よりも荒々しさが目立つような…特にドラムの力強さが際立っています。

2枚ともパッと聴きは同じようなサウンドや構成ですが、なんとなく「OOYeah‼︎」のほうがひと癖あるような気がしています。

サウンドを前面に押し出したレコーディングだったようで、2枚とも歌詞がとにかく聴き取りづらいです。歌の世界観というよりは、サウンドを楽しむアルバムなのかなと思っています。

この2枚のアルバムに関しては、ライブで化けそうな曲ばかりです。ほんと、リアルタイムで追いかけてみたかったです。

「OOKeah!!」収録の”Desperade” かっこええ…
まさに、和製シューゲイザーとも言えるべきサウンドです。

個人的には、「OOYeah!!」収録の”MOTORBIKE”も大好きです。イントロだけでご飯が何杯もいけます🍚

当時、如何にこのようなバンドサウンドが斬新で新鮮だったことか。何なら、今の時代でもあまり見かけないような気がしています。

オリジナルアルバム発売直後のタイミングでこの企画盤を出すところを見ても、バンドがいかに充実していたかが分かります。

文献を見る限りでは、この2枚の企画盤で既存の楽曲ストックを大量放出し、次のステージへ進む足がかりとなったようです。

これだけの楽曲群を持ってすれば、まだまだアルバムを作れそうですが。

この潔さがSUPERCARらしいですね。

これにて、”前期”SUPERCARが終了します(個人の見解です)。

次のアルバム「Futurama」からはサウンド面で大きな変化が表れ、”後期”SUPERCARの幕開けとなります。

大袈裟ではなく、これまでとは完全に次元が違っていきます。

フルミキさんの後日談によると、それまでになかったような新しい音楽やサウンドの融合を、稚出でも構わずに作ってみたかったという想いがあったようです。

決して表には出さない旺盛な好奇心と、それを高いレベルでやり遂げてしまうバンドの底力には驚愕です。

ということで、大人へと成長し表現の幅を広げたSUPERCARが、さらに飛躍するきっかけとなる3rdアルバム「Futurama」について、次回のVol.4で紹介します。

それでは。


乱筆にて


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