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福丸小糸LPで失われたもの

 お疲れ様です。津の次です。次は目次。

まえがき

 LP。Landing Point。WING、ファン感謝祭、GRADに続くユニット単独ライブをテーマにしたシナリオです。様々なアイドルの様々な成長が描かれるLP編ですが、ここで取り上げたいのは福丸小糸のLPです。そして、彼女の成長ではなく、彼女が失ったものが何なのかを探りましょう。なぜなら、彼女はノクチルだから。さよなら、透明だった僕たち。彼女たちが描くのは、青春。特に喪失の物語です。福丸小糸は成長の中で、何を失っているのか。彼女がただのアイドルではなく、ノクチルの一員であることを示す重要な内容になると想定しています。それでは、見ていきましょう。


墨子糸に泣く

 タイトルの「墨子糸に泣く」とは、人間が、環境によって善人にも悪人にもなることを、嘆いた言葉です。これは、後々の伏線になっているようですね。内容も見ていきましょう。

 小糸は小さい頃のことをあまり覚えていないようです。どこかから落ちて両親をひどく心配させたことなどを思い出しています。場面としては、先生と母との三者面談のようです。ぼんやりしてんな。そりゃ母や先生に心配されますわ。私自身も前世はくらげかと言われるほどにぼんやりしているという評価を下されがちですが、別にぼんやりしているのではなく他のことを考えているだけなんですよね……(完全な余談)。事務所に寄ってから帰るという小糸に、母は「じゃあ、気を付けて行きなさい」と声をかけます。小糸母、小糸の言動から毒親なのではという推測がなされがちですが、普通の声かけに見えます。まぁ毒親って悪気はなくて、表面的には普通なんですよね。

 事務所ではワンマンライブに行う話が出ています。ここで、小糸は心のなかでこう発言しています。(求められている通りでいたい。そうじゃないと、ここに居ちゃいけないような気がして)。居場所を求めてアイドルになった小糸らしい発言ですね。まだ、自分自身で居場所を見つけることはできていないようです。例えば、親だったり先生だったり、またはプロデューサーだったり、彼らが求める子供やアイドルを演じようとしているのでしょう。小糸は器用なタイプではないので、求める理想像ばかりが大きくなり、それに向かって努力をし続けることになっています。小糸……。


ささくれた指先

 ささくれた指先って誰の指先なんでしょうね。私は、母の指先なのかなと思いますね。母の手先ってやっぱり家事とかで少し傷ができてたりするイメージがありませんか。ここの節では、小糸母は出てきませんが、小糸母を感じさせる会話が繰り広げられています。

 LP編のユニット単独ライブについて、良いライブにしたいと述べるプロデューサーと小糸。ここの、プロデューサーに同意してこくこくうなづく小糸ちゃんすこぶる可愛いですね。

 プロデューサーが小糸を家の近くまで送っていったのですが、ちょうど同じタイミングで帰宅する小糸妹と遭遇します。小糸妹、初登場ですね。小糸とは正反対のタイプです。学生らしい適当さとはっきり述べるところが小糸と違って小糸妹だなーと感じますね。プロデューサーにきちんと挨拶しているあたり、普通にいい子そうです。小糸は小糸妹と話しているときはちゃんとお姉ちゃんだな……特にちょっと口うるさいタイプのお姉ちゃんで、そこらへんちょっとノクチルのみんなといるときに似ていますね。小糸妹は雛菜が一番近いキャラなのかな。

 この中で語られた重要な要素は、小糸が全然アイドル活動について家族に話をしていないという点ですね。プロデューサーがワンマンライブについて話したとき(これも、小糸が言いよどんだのでプロデューサーが言ったかたちです)、小糸妹が「あんまわかんないけど、すごい」と言ってるあたり、あまり興味もないのかもしれませんね。


まだらな刺繍

 ワンマンライブの演出で、幼少期の写真を使う、という話が出てきました。どうやら大量のアルバムがあるようで、小糸も小糸妹も愛されてきたことが分かります。

 小糸妹がワンマンライブの家族席について小糸に聞きますが、小糸は言いよどんでいます。ライブに家族を呼びたくないのでしょうか。まあ気持ちは分かります。歌って踊ってを親族に見せるの正直勘弁って感じですよね。小糸はまだライブに対して課題点が見えているようなので、完璧にするまで見せたくない、という感情もあるかもしれません。小糸妹の方も、予定が無かったら行く、程度の感覚のようですが。

 タイトルのまだらな刺繍とは何を指しているのでしょうか。先ほどは母だったので次は妹かな。小糸と小糸妹の異なった性格の会話がまだらな刺繍にみえるような気もします。ところで、小糸妹ってどんな名前なんだろう。糸に関する名前…紬ちゃんとかどうでしょうかね。


縫い違えても

 小糸はたくさんのアルバムを事務所まで運んできました。プロデューサーと一緒に見て、ライブ演出に使うものを選ぶためです。たくさんあるアルバムに対して、「ご家族がたくさん写真を撮ってくれてたってことだな」と褒めるプロデューサーに対し、「……そう、だと思います」と述べる小糸。なんだ、ちょっと気になる言い方だな。小糸の自己肯定感の低さ故でしょうか、家族に愛されているかどうか、いまいち信じ切れていないのかもしれませんね。

 アルバムを見ていくと、公園で大泣きしている小糸の写真が見つかります。写真には、「小糸2歳、遊具から落下して号泣。これ以来公園を嫌がるようになってしまった」と書かれています。最初で思い出していたのは、この時のことだったのでしょう。プロデューサーは、「小糸があまり遊具で遊んだ記憶が無いって前に言ってたのは、こういうことだったのかもな」と言います。ここでつい泣いてしまいました。小糸があまり遊具で遊んだ記憶が無い、というのは1周目のP-SSR福丸小糸【ポシェットの中には】ででてきた内容です。

初めて乗った遊具にはしゃぐ16歳

スプリング遊具を、昔から一回やってみたいと思っていたと述べる福丸小糸は、小さいころから英才教育のために外で全然遊ばせてもらえてなかったのでは、なんて思っていたわけですが、そんなことなかったんですよね。福丸小糸は真っ直ぐに愛されて育っていた。それがここで伏線回収されるなんて……普通に泣きますが。なんてことしてくれるんだ高山……

 小糸が妹が生まれてからの話をしています。最初は、母を喜ばせるためだった。それが、「ちゃんと、ずっといい子でいないとって……もっともっとやらなきゃって、思っているうちに、求められている通りでいないと、そこに居ちゃいけないような気がして」。小糸の居場所のルーツはここにあったのです。お母さんのためにいい子でいようとか、誰かに居場所を作れるアイドルになりたいというのは、本当は誰かのためじゃなくて、小糸がただ褒められたいという気持ちによるものだったのだと小糸は言います。それを肯定したプロデューサーは最後に、ワンマンライブを成功させて、「すごい」とか「えらい」とか「かっこいい」って意味のファンの歓声を聞こうと提案します。すごくてえらくてかっこいいのはプロデューサーなんだよな……


愛しき糸たち

 プロデューサーの提案で、家族にワンマンライブのチケットを渡しいくことになりました。ライブの日程を伝えていなかったので、来れるか分からないだろうという小糸に対して、お母さんは既にライブのことを知っていると小糸妹が言います。小糸が言わない分お母さんはいろいろ調べて知っていると小糸妹は言います。小糸妹いわく、お母さんはいつもお姉ちゃんのことばっかりらしいのです。

 タイトルの愛しき糸たちは、母から子に向けてのセリフでしょう。愛しき糸たちをいつも見守る母。めっちゃよき母やん…毒親とかいうてすまんかった。


あなたの笑顔まで

 ライブを終えて。小糸母は、全然声出していなかったことを小糸妹から聞きます。小糸母はずっと不安そうに手を握って小糸の方を見ていました。少しくらいは喜んでもらえるんじゃないかと思っていた小糸は落ち込んでいます。しかし、プロデューサーはライブ後に小糸母から「これからよろしくお願いします」と言われたことを伝えます。楽しかったと喜んでもらえるライブを増やしていこう、とプロデューサーは言います。

 小糸は今回のライブを通じて、いつも近くに居る人とか、今応援してくれてるファンの人をもっと大事にしていきたいと言います。この目標が正しいか分からないけど、「ようやく、地面に足が着いたような気がする」。ここ、次の泣きポイントです。これは、単に地に足がついたという話をしているのではなく、ジャンプする手前の踏み込みに入ったということです。福丸小糸が飛べない話、以前してきたと思いますが、福丸小糸がとぶんです。次、福丸小糸が飛んでいける準備ができた。そう思うと涙がこぼれて溺れ死にます。


まとめ

 ここまでが福丸小糸LP編です。いかがだったでしょうか。福丸小糸と家族の話、めっちゃよかったですよね。めっちゃよかったね、で終わらないのがこの記事です。福丸小糸が失ったのは、「子供らしさ」です。親の心子知らず、という言葉がありますね。親の愛情や苦労は子供にはなかなか通じず、子供は好き勝手に生きている。しかし、今回のLP編で親の愛情や苦労を知りました。福丸小糸の子供らしさというのはその意味で失われたものです。そして、子供らしさというのは「青春」と言い換えてもいいかもしれません。

 あと、いつも近くに居る人とか、今応援してくれてるファンの人をもっと大事にしていきたいという目標を得た小糸は、何の意味もない練習にがむしゃらに練習していたあの頃も失ってしまったのかもしれません。


あとがき

福丸小糸の喪失、いかがだったでしょうか。個人的に福丸小糸LPは泣き所多くてめっちゃ好きなシナリオです。今回はいつもより丁寧めにシナリオを読み込んでみました。シャニマスのコミュはタイトルがよいんだなぁ。

またどこかでお会いしましょう。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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