見出し画像

#心に残った番組「ドキュメント72時間~絵本専門店 わたしの物語~」

3日間、どこかの街角で、カメラを回し、行き交う人たちに話を聞く。
この番組もまた、時々見ると、心に何かを残していく番組です。
2022年6月10日放送の、絵本専門店での3日間。放送後、SNSに上げた感想です。

= = = = = =

本屋さんて空間が好きです。
それが絵本専門店っていうだけで、なんだかワクワクします。
なんて言いながら、私自身は子どもの頃、絵本を読んでいた記憶はあまりないんですけど(^_^;)
だから逆に、憧れのようなものがあります。
大人になっちゃうと、自分のために買う…というのも、なかなかできなかったり……
まあいいや…そんな言い訳は置いといて。
「ドキュメント72時間」も、欠かさず見るというわけでもないけど、見ると胸に染みる、いい番組ですね。
特に今回は、ちょっとやられたなぁ…と思わされた回でした。
昼間は絵本専門店、夜は絵本バーという、一風変わったお店。
そこに訪れる様々な人たちに、ほんのひととき立ち止まってもらって話を聞く中で、特に印象的だった人たちがいました。
ひとり(ひと組)は、絵本バーに初めて訪れたという若いカップル。
絵本バーとは知らずに来たそうで、カウンター席で、男性は「こんなところがあったんだ…」と驚いた様子。
店主の女性が、カウンターの向こうから、大人におすすめの絵本を読み聞かせてくれます。
「わたしはあかねこ」(1)
しろねこのお母さんとくろねこのお父さんから生まれたあかねこ。
兄弟たちは、しろねこ、くろねこ、とらねこ、ぶちねこ。
ひとりだけ色がちがうから、みんなに「かわいそう」って言われる。
でも、あかねこは自分の赤い毛並みを気に入っている。「わたしはわたしのままがいいの」と。
大きくなって家を出て、外の世界のいろんなねこと知り合って、あかねこは、あおねこと出会う。
あおねこは「きみの赤い毛並み、すてきだね!」と、言ってくれた。
ありのままの自分を、受け入れてくれた。
あおねこの青い毛並みも、とてもきれいだった。
…大体そんな話でした。(記憶違いはご容赦をm(__)m)
カップルの男性は、絵本にあまり触れたことがなかったようで、奥が深い、と感慨深そうでした。
そして「自分も(自分で)いていいんだなって…」と、はにかむように笑った男性。(ニュアンスm(__)m)
次のカットで、店を出ていく彼は、車椅子に乗っていました。
そこまではずっと、アップだけだったのです。
彼女に車椅子を押してもらって、店を出ていく姿には、何もナレーションは乗せられていませんでした。
ハッと胸を突かれる、静かなワンシーンでした。
もうひとりは、ロシアの絵本「きりのなかの はりねずみ」(2)を探しに来た若い男性。
大学でロシア文学を学び、この春からロシアに留学するはずだった。
でも、戦争が起き、留学は叶わなくなって、周囲の人々のロシアに対する感情も変化していく中で、複雑な思いを抱えていた時、知人に勧められた絵本を探しに来た、と。
絵本は、全体がダークトーンで、くすんだ色味ですが、とてもやわらかいタッチで、やさしい絵です。
はりねずみが森を旅して、いろんな動物たちと出会う物語。
そこには、わるものはいません。
みんなやさしく、認めあい、干渉せず、おだやかに暮らしている。
絵本に目を通した彼は、少し救われたような様子で、いい絵本に出会えた、とその絵本を買って帰っていきました。
ドキュメント72時間は、その時たまたまそこにいた人たちとの、一期一会を切り取る番組です。
行き交い、すれ違い、二度と会うこともないかもしれない人たちの、それぞれの人生。
さらりと触れるだけで、多くが語られるわけではないけれど、時にその深淵を垣間見ることもある。
ほんのひとときの邂逅の中で、話を引き出し、淡々とおだやかなトーンで綴られていく物語。
胸に残る、やさしい影と、やわらかな哀しみと、あたたかなやさしさ。
その中に織り込まれた、ふと胸を突かれる瞬間。
演出、と言ってしまえば、それまでですが。
やはり、それぞれの人生の重みや思いがあってこそのことでしょう。
それを引き出す取材のうまさか。
編集の妙か。
切り取られた一瞬が、胸に残る。
やられたな。
と、思うのです。

(1)作/サトシン、絵/西村敏雄、出版社/文渓堂
(2)作/ユーリー・ノルシュテイン、セルゲイ・コズロフ、絵/フランチェスカ・ヤルブーソヴァ、出版社/福音館書店

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?