被害者遺族の感情は量刑に影響すべきか

裁判で、被害者遺族の感情が量刑に影響するのは公正かという疑問を村上春樹氏が毎日新聞で提起された
仮に被害者本人が脳死の事前意思表示のように、被害に遭った際にどのような量刑を望むかという意思を明示していたら、その意思は法の下の平等よりも優先されて、量刑に影響すべきだろう。
次に、被害者の遺族が本人の意思を明確に把握できている場合なら、本人の代理人として前述同様に優先されるべきだろう。しかし現実的には遺族であっても、本人の意思を明確に把握できない以上、遺族は代理人としては不適格であり、遺族感情が本人の意思とは対峙してしまうこともあるだろう。

論点を変える。被害者本人は既にこの世にいないにもかかわらず、遺族には本人を失った悲しみのみが残されることになる。その現実は長期間に及び、その悲しみの影響は大きいため、遺族の悲しみを少しでも多く取り除くことが優先されるべきである。その手段は多様ではなく、遺族感情の量刑への影響が一手段として機能するのであれば、影響することは好ましい。

影響することによって、裁判結果を遺族に沿った形にカスタムメイドすることになる。既製服よりもカスタムメイド服の方が身体に合う等の服の機能をより良く享受することができる。裁判結果という服が遺族の心身に合うことは、どのような行為をすればどれほどの刑を受けるのかを予測できるという法的安定性よりも社会全体の安定に繋がるのではないだろうか。悲しみに打ち拉(ひし)がれた遺族が、量刑に対して冷静に分析し、判断できるからではない。裁判が自分達の意思に沿ってくれたという思いが遺族を少しでも助けることになり、犯罪被害とは無関係な人々に対して、もし被害者遺族になってしまった場合に、裁判が自分達の意思を尊重してくれるという期待を持てるからである。

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