同じ未来を見つめる伴走者たちの素顔|vol.7(後編)

「直接民主的な経済圏の在り方を提案していきたい」

NCL西条(愛媛県・西条市)/マイクロワーク パートナー
林 篤志さん(Next Commons Lab Founder / COMMONS Co-Founder)

《PROFILE》
Atsushi Hayashi●2016年、ポスト資本主義社会を具現化するための社会OSを実装するため、Next Commons Labを設立。2017年より、それぞれの幸せを基準に誰もが小さな社会をつくれる共同体プラットフォーム「COMMONS」を発足。Commons inc. 共同代表。「日本財団 特別ソーシャルイノベーター」(2016)、「Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人」(2017)に選出。

社会自体を変える試みをスタート!

人口約10万人の愛媛県・西条市。ICTを利活用した豊かなまちづくりを目指しており、特に教育分野への導入では国内トップクラスを誇るほど。新しいテクノロジーを受け入れる土壌があるこの西条において、分散型のデータ管理技術といわれるブロックチェーンを用いたNCLのプロジェクトが動き出そうとしています。

それが、現在ラボメンバーを募集しているマイクロワークプロジェクトです。概要は後ほど説明するとして、「マイクロワークと小さな経済圏で地域をつなぐ」というこの構想は、社会そのものが大きく変わる、夢のような現実の話。同プロジェクトのメインパートナーであるCommons inc.とNCLの代表でもある林 篤志さんに、プロジェクトの具体的な構想やどんな未来が見られるのか語っていただきました。

≫前編→「自分たちで国家のようなものも、経済圏も作れるかもしれない」
https://note.mu/nextcommonslab/n/n3972dd10456c


多重層のコミュニティや経済圏の必要性

世の中には、生活の困りごとを仕事として請け負う「町の便利屋さん」という事業者や、健康な高齢者が活躍する「シルバー人材センター」といった組織もあります。マイクロワークとは、どのような位置づけになるのでしょうか?

「もちろん町の便利屋さんが頼まれるような仕事も含まれるかなと思っています。ただ、なんでもかんでも地域通貨でやればいいのかといえば、そうではないと思っていて。法定通貨で支払う仕事はプロに頼む。一方、地域通貨でお願いするのはプロじゃなくてもできそうな仕事で、みんなが自分の余っている時間やスキルみたいなことを交換し合いながら、補完し合えるようなものになっていくのかなとは思いますね。

もう少し踏み込んだ話をすると、たとえば西条市にマイクロワークを導入するといって、西条市民みんなが同じような価値観で、同じようなライフスタイルを過ごしている人たちかというと、もはやそうじゃないじゃないですか。これはどの地域にも共通することですが、かつては違ったんですよね。

小学校区単位150~300人くらいで、だいたい農村社会で、同じように働いて、誰々さんちの誰々はこうだよねとか、みんなの顔をわかっていた時代があったんですよね。でもそれがなくなってしまったし、大家族じゃなくなってしまったんです」

近隣の人たちや家族・親戚がお互いを気づかい、共助という精神が当たり前にあった時代と今では状況が違うというわけです。

「究極的にはみんな核家族化していっているので、非常に難しいです。なので、すべてお金を出して、いわゆるマーケットの論理で働いている業者にビジネスとしてお願いするということが当たり前になってしまっているんですよね」

林さんはここで共感性に左右されるマイクロワークについて、ベビーシッターを例に説明してくれました。

「たとえばアプリケーションに西条市民全員が入っているとして、『来週の週末ベビーシッター誰かお願いできないですか?』と投げかけたところ、全然知らないおじさんが『私できますよ!』と手を挙げてきたとしても非常に不安ですよね。ある一定の共通の価値観だとか、もしくは一度会ったことがあるとか…たぶん、そういう人たちの中で価値交換が起こり得ると思うんですよ。特にベビーシッターのような共感性が高くないとリスクがあってお願いできない仕事ってあると思うんですよね」

もし、病院の送り迎えだったとしたら、安全運転な人でさえあれば誰でもいいと思えるかもしれません。しかし、ベビーシッターや家事手伝いなどになると、共感性が高い人たち同士が、どうつながれるかというのが重要になってくるといいます。「コーディネーターは、そのあたりの仕掛けをやっていかないといけないんですよ」と林さんは続けます。

「お母さんたちが集まれるサロンみたいなものを、たとえば開くとします。そこに来たお母さん同士が、『あ、この人だったら安心してお願いできる』『この人たちだったら価値観が合うな』と感じる。ご高齢の方でもそうですよね。健康ウォーキングみたいなイベントで、一度会ったことがあって、コミュニケーションがなんとなく生まれている人たちとつながっているといった感じで」

「このコミュニティにいる人となら価値交換したくなる」という共感性を高めることが必要だといいます。

「マイクロワークと地域通貨を導入するということは、コミュニティを再構成していくためのツールであり、そのツールを広げていく意味においてもコミュニティを意図的に再構成していくようなトリガーをコーディネーターは作っていかなくてはならない。自治体の中にどれだけ多重層なコミュニティ、多重層な経済圏を生み出せるのか。そのあたりが仕事になってくるんだろうと思います」

必要不可欠な地域コーディネーターの現状

林さんは土佐山などでは、いわゆるコーディネーターという役割を仕事としてきました。地域の資源や課題を抽出し、外からやってくる人や外部企業などとうまくつなぎ合わせていく中で、報われない現実を目の当たりにしてきたといいます。

「お互いに良い接点を創出して、課題が解決されたとか、お金を生み出すような新しいプロジェクトが生まれたとするじゃないですか。でも、その結果が出る頃には、コーディネーションした僕らの役割はもう終わっているんですよ。だから、すごくお金になりにくい。必要不可欠な存在にも関わらず、キャッシュポイントがないというのが、いわゆる地域コーディネーターといわれる人たちなんですよ」

地方ではものすごく必要とされながらも、具体的な収入源がないという課題が、多くの地域コーディネーターたちが抱える悩みなんだとか。

「そういう人たちが日本中にいっぱいいるんですよね。とはいえ、コーディネーターという存在はもっと増やしていかなくてはならないとも思っています。だけど、市場価値がないので、お金にならないんですよね」

地域コーディネーターたちがきちんと食べていけるような仕組みやツールを作りたいという気持ちがこのプロジェクトの発端にもなったといいます。

「なので、新しい経済圏をつくるんです。ブロックチェーンを使って、独自のコミュニティトークンを使うことによって、どのくらいトランザクション、取引の回数がおこなわれているかというのが定量的に数値化できる。つまりいろんな人や資源を結びつけて、新しいものが生まれる回数だったりとか、そこから生まれるインパクトだったりを、見えるようにできるんです」

そのトランザクションの一部をコーディネーターの収益にする方法もあるといいます。

「直接的なキャッシュポイントは生み出していないかもしれないけれど、人と人を繋げるということであったり、新しいものを生み出すことをサポートしたりといったコーディネーター自身が関わったことが全体的な経済指標として数値化できるので、そこできちんと自分の食い扶持を稼げるようになる。コーディネーターの収入源となる、そういった現実的な手段を作りたいという思いもあったんですよね」

ラボメンバーは、最長3年間のベーシックインカムがなくなっても、収入を得る手段はアイデア次第でいろいろありそうです。

「仮に西条市のアクティブユーザーを2万人だと想定しますね。その2万人が月あたり3万円相当の地域通貨を使えば、それだけでトークンエコノミーとして年間72憶円です。その1%をコーディネーターの売上というか収益にすると仮定すれば、7200万円になるんですよ。つまり、コーディネーターが努力して経済圏が広がれば広がるほど、コーディネーターのもとに収入として入るような構造をつくっていくことは、現実的に可能なのではないかと考えています」

ラボメンバーが成し得る可能性とは?

「ほかにもいろんなビジネスが考えられると思いますよ。たとえば広告事業。西条市民全員が使っているアプリケーションやトークンに成長していけるならば、そこへ的確に配信していけます。インバウンド向けに外貨を取り入れていくという手段を使うのであれば、そこにチャンスはあると思いますし。いろんなやり方があるんじゃないでしょうか。

純粋に地域の経済圏を広げていくということをキャッシュポイントにするならば、トランザクションの一部をそういったことに貢献している人や組織に対して還元していけるようなスキームに持っていけたらいいなと思っています」

多様なビジネスチャンスが待っているマイクロワーク。未来にワクワクしながら、粘り強く取り組める人に応募してほしいと、林さんは話します。

「ラボメンバーは、マネタイズする仕組みづくりからやっていく必要があります。ただ、テクノロジーやアプリケーションというのはただのツールにすぎない。現場で地域ポイントをリアルに使っていただけるようになるかどうかというのは、別の話ですから」

ラボメンバーがやるべきミッションは、実際には地道なことの積み重ねだといいます。

「そのツールを使って、どうやったらもっと便利になるんだとか、どういう結果を出したいのかということが重要。そのために地域の人たちとコミュニケーションをとる場を作っていったり、地域の方々に使っていただけるように促していったり。どれだけ人と人をつないでいけるかということが、ラボメンバーには求められています」

これから新しい社会が生まれる予感

今回、西条と同時に石川県・加賀市でも同様のプロジェクトがスタートしようとしています。面白い事例を生み出した後は、NCLの拠点がある、なしに関わらず、いろんな自治体で段階的にこのシステムを導入できたらと考えているんだそうです。

「先ほど、『その1%をコーディネーターに…』という話をしましたけど、一方で『1%を地域ファンドにしましょう』という考え方もできます。たとえば、7200万貯まったとします。その7200万の使い道を自分たちで決めるんです。みんなで投票して。

つまり、今までは円を使っていて、なんとなく税金を納めて、行政や政治家・官僚たちがそれをどう使うのかを考えるというものでした。でも、自分たちの経済圏では、自分たちで価値を可視化して、自分たちで育てて、それを自分たちのためにどう使うかというところまで、自分たちで決められる。そんな直接民主的な経済圏の在り方みたいなものを提案していきたいですね」

資本主義国家である日本で、今まさに閉塞感や不公平さを感じている人も多いはず。でも、ただ嘆いているだけでは世の中は変わらない。NCLが立ち上げたマイクロワークによって、何層にも重なるコミュニティと経済圏が生まれれば、きっと、もっと生きやすい未来につながる予感がします。

新しい社会を望むなら、傍観者なんかになるんじゃなくて、伴走者たちと手と手を取り合って、ポスト資本主義社会を実現する立役者になってみてはいかがでしょうか。

→募集中のプロジェクトはこちら
http://project.nextcommonslab.jp/project/microwork/

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