く 苦楽を共にする

「死んでも美しい。」

昨年の祖母の葬儀の時。

94才になる僕の祖父が車椅子から身を乗り出して、棺の中いっぱいの花に包まれた、その妻の顔を見つめるなりそう言って泣き崩れた。

そして、初めて会ったとき一目惚れしてから今までずっと慕い続けてきたよ、子どもたちの良き母として本当によくやってくれた、と話しかけていた。

老衰して、孫の僕のことがだんだん分からなくなってきていた祖父だったけど、亡き妻に語りかける言葉のその確かさ、豊かさに心動かされた。

今年、戦後70年。・・・彼らは若きまぶしい時代を戦火の中で生きた。

「おばあちゃんの机を整理していたらこんなものが出てきた。」と叔母が古い封筒を持ち出してきた。封筒には赤い字で「保存」と書いてある。

中には、古い封筒や手紙が沢山入っていて、

宛名は祖母、差出人は・・・もちろん祖父。

超プライベートだけど、孫達一同、興味津々!

「おばあちゃん、僕たち孫だしいいよねっ!」と盗み読み、・・・ぢゃなく、

拝見させていただいた。

それは、2人が結婚する前、祖父が大阪帝国大学に親元を離れて学んでいたときの祖母との文通の手紙の数々だった。物資が不足し紙も貴重だった時代、ノートの切れ端や、雑紙にびっしりと文字が刻まれている。

戦争のことや心配事。

夫婦たるもの苦楽を共にして・・・と夫婦の目標や夢。

はたまた、手紙の隅にはへんなタコが扇子を持って踊っているイラストやら自画像などなど・・・。

率直な気持ちや希望や夢、ユーモアがたくさん、沢山綴られていた。

それまで祖父母に会いに幼い頃から行っていたけれど、2人がそんなにしゃべっている姿は記憶に無い。でも、手紙を読みながら、祖父の、棺に眠る妻へのことばを思い出しながら、この夫婦が苦楽を共にして信頼し合って生きてきたその生き様を垣間見た気がした。

楽しいことばかりではない、苦労を共にし、信頼と愛によって建てあげられてきた男と女の姿には、ことばに現しきれない麗しさがある。

「おばあちゃん、これは本当にかけがえの無い宝物だね。」

世の中に二つと無い、本当に美しいものを見た思いに心満たされながら、

「保存」と書かれた古い封筒をそっと棺の中に入れた。

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よしなしごとをそこはかとなく書きつくろう

「あ…といえば〜」五十音を頭文字にココロにうかんだよしなしごとをそこはかとなく書きつくろいます。
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