短歌まとめ 2023.3

(金網の向こうに野菊)金曜に映画を見れば無課金の愛
『Venus』

鯨幕 誰も知らない怪獣にバラードは無く、ただ石の降る
『Venus』

水底のアルコホリック月に手を手を手を手を手を、喉が渇いた
『Venus』

風が吹くAIに手紙が届く 風が確かに吹いた街より
『Venus』

「吐くエラー、夜の空気に触れる鰓」「瞼の震え、流星の群れ」
『Venus』

穴のあるお菓子も甘いどこまでもドーナツホールに閉じ込められて
『Sugarlight』

果物のケーキを買って待ってます袖のほつれを見ずに済むよう
『Sugarlight』

摩天楼 群れを追われた狼に、劣等生に、君に、煌めき
『Sugarlight』

消失点 すきぴは格差なぞ知らずバターとジャムを塗って、眩しい
『Sugarlight』

一トロイオンスの光 恒星になってしまった貴方が生んだ
『Sugarlight』

ネモフィラに翳すiPhone傷のない天使が死んで五十日目に

青年はガイノイドにキスをした(全て蕩かすような黒煙)

つみほろぼしあいしてるつみほろぼし さいごは同じ星で眠ろう

だめな子ね(まだあたたかいベランダがエンドロールの背景になる)

分け合ったものを愛って呼んでみる 積み木のお城、朝顔の種

大声で笑う人だったと思う 昨日、三回忌だったと思う

いい子だね 死ぬまで撫でてあげるから絶対に目を覚ましたらだめ

星二つ少し足りない何もかも床が汚いぽっかりと 穴

つみきくずしあいしてたつみきくずし 排水口へ落ちていく星

バースデーケーキが床に落ちるまで鸚鵡みたいに話をしろよ

子供部屋には子供の手、奴隷小屋には奴隷の手、今、何問目?

鶏の骸を抱え朝を待つ母は聖母のような目をして

空色に塗り潰したら空になる僕が芋虫になるところ見て

蝶々になれる気がした私には手も足もある。軽くて、脆い

ロードキル 黒猫の耳の薄紅の春一番の麻酔の夢の

クッキーの缶に詰め込む子供の絵 眼鏡を取って、蜘蛛を殺して

しあわせのおかけで毎日しあわせで早く私をしあわせにして


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