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【NJRPG/シナリオ】マグロ・コンピテンシー

(あらすじ:交流のあったアンダーニンジャ、インベスティゲイターが突如として消息を絶つ。彼は以前君が協力を断った、都市伝説「マグロ人間」調査に単独で向かっていたらしい。少しの罪悪感と好奇心に後押しされ、君は彼の行方を追い始めるが.....)

このシナリオは「ニンジャスレイヤーTRPG」に対応した、2~4人のプレイヤー向けのややハードなシナリオである。プレイヤーキャラクターはソウカイニンジャであることを想定しているが、ヨロシサンやオムラと契約する企業ニンジャ、親ソウカイヤのフリーランサーをチームに加えても構わない。

今回の物語は仕事ではなく、あくまでも余暇に起こった幕間の出来事となる。したがってシナリオの基本報酬として十分な報酬は用意されていないので、ニンジャマスターは事前にその旨をプレイヤーに伝えるか、相応しい報酬を別に用意してあげよう。

◇シナリオ本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター、PL:プレイヤー、PC:プレイヤーキャラクター
◆オプション:カラテブレイカー◆
NMあるいはPLがコロナやスシによりオーバードーズ状態に陥っているとき。なんか面倒になったとき。この特殊ルールを採用する。

このシナリオ中、PLは合計でPCの【カラテ】値の半分(端数切り上げ)と等しい回数だけ、何らかの判定を行う際に『カラテブレイカー』を宣言することができる。NMがそれを認めるとき、PLはあらゆる判定をPCの【カラテ】と等しい数のダイスロールで代用することができる。つまりハッキングも【カラテ】で解決できる。え?どうやって?そんなことはOKを出した君が責任を取って考えるんだ。(NMは中だるみが起きないよう、このジョークオプションをうまく活用して怪奇シナリオをテンポよく進行しよう!)

1:導入

君はオオモリ地区にあるアパートメントの一室を訪れようとしていた。ここはソウカイヤのアンダーニンジャ、インベスティゲイターの隠れ家のひとつであり、つい先日に合流先として指定された場所でもある。
本来なら君はここに来る必要はなかった。なぜなら『近頃噂されているというエンガワ・ストリートの都市伝説、マグロ人間の調査を手伝って欲しいという要請を断っていたからだ。バカバカしい、儲けにもならない話だ。
だが「単独で調査する」と言い残したのを最後に、彼はその消息を絶ってしまっていた。一体彼の身に何が起こったのか。少しの罪悪感と好奇心に後押しされ、君は彼の行方を追うことにした。

PCは過去にソウカイ・シンジケートの任務でインベスティゲイターと組んだことがあり、互いに面識があるものとする。彼はいつも何かを調べ回っている奇妙なニンジャだが、PCには好意的だった。現在、彼のIRCアカウントはオフライン状態で一切の返答がない。

2:インベスティゲイターの隠れ家

PC訪れたアパートメントの一室はかなり狭苦しい。ザゼン・ドリンクなどの空き容器が転がり、備えられた家具も作業机、小さな冷蔵庫、薄汚れたフートン程度しかない。PCが調べられるのは次のような箇所だ。

壁:ネオサイタマの地図が貼られている。地図上には大量のマーカーピンが打たれ、赤い文字で様々な注釈が書き込まれている。特に気になるのは、エンガワ・ストリートの一角を囲む大きな円と『マグロ』の文字だ。
作業机:様々なメンテナンス用の工具類が転がっている。そこに紛れて「ボロボロの日記帳」「ZBRアドレナリン注射器」を見つけることができる。

ボロボロの日記帳:不連続的な日付で、何らかの調査に関するメモが雑多に殴り書きされている。最も新しい日付はインベスティゲイターが失踪する直前のものだ。そこからは次のような情報が拾い出せる。

近頃エンガワ・ストリートで、二本脚で疾走する『マグロ人間』の目撃証言が相次いでいる。ジャンキーも多いエリアのため、幻覚という線もある。

目撃証言があがり始める数日前、マグロ運搬中のトレーラーが同地区で事故を起こしている。わざわざ危険なエリアを通過していた理由は不明だが、何らかの関係性が疑われる。

胡乱な証言を整理すると、マグロ人間は特定のルート上を移動しているように思われる。つまり、彼らは地上で回遊を行っていると仮定できる。
小さな冷蔵庫:タッパーに入った「オーガニックスシ」がひとつ収められている。タッパーには謎の数字が書き記されているが、意味はわからない。その他、NMの判断で「トロ粉末」が発見できても良い。
薄汚れたフートン:【ニューロン:HARD】判定に成功すると、フートンの下から「バクチク・グレネード」を発見する。【ワザマエ】で遠隔攻撃として投擲。【ジツ:2】のカトン・ジツと同じ効果を発揮する危険な武器だ。

3:エンガワ・ストリートの調査

君は手がかりを元にエンガワ・ストリートへとやってきた。古びた雑居ビルと無秩序に這い回る電線に囲まれた、ひどく治安の悪いエリアだ。路地の暗がりにはヨタモノの姿が見え隠れしている。

隠れ家で手に入れた情報を元に、PCはエンガワ・ストリートを調べようとするだろう。ここで彼らが取れる行動は、シンプルに「ヨタモノにインタビューする」「辛抱強く張り込みを行う」かの二択だ。

インタビューを行う場合、適当な路地でヨタモノを捕まえる。彼らは3人程度のグループで自生しており、PCたちより人数が多ければカスタム釘バットで襲いかかってくる。ステータスは全て1として扱おう。最後のひとりになった時点でヨタモノは戦意を失い逃げようとする。殺したヨタモノからはそれぞれ万札*1が手に入る。

インタビューは特に判定を挟まずに行ってもいいが、次のような残虐なミニゲームでDKKを稼いでもいい。

◆指折りトーチャリング(ミニゲーム)◆
プレイヤーは対象のどの指を折るか宣言し、【カラテ:EASY】で判定をおこなう。成功すれば対象は情報を吐き出す。判定結果に関わらずPCが宣言した指はへし折られる。指を3本へし折る毎に【DKK:1】を獲得する。

「XXXについて話せ。言わなければお前のYYY指を折る!」
→【カラテ】判定
成功:やめてください!話しますから!(対象は情報を吐く)→指を折る
→「アイエエ!」
失敗:やめてください!知りません!→指を折る
「アイエエ!」
→「XXXについて話せ。言わなければ次はお前のYYY指を折る!
(以降繰り返し)

知りたい情報が漠然としている場合、リスト化された情報から1D6でランダムに開示するか、事前に質問できる内容をPLに提示する。両手の指10本がへし折られるまでに、欲しい情報を全て引き出せれば尋問は成功だ。
◇ヨタモノから入手できる情報
1:数日前、遊び半分でマグロ運搬トレーラーを襲撃したのはここのヨタモノのグループのひとつだった。
2:マグロ人間を見たという噂話は聞いたことがある。
3:マグロ人間かは不明だが、誰かがこの界隈を走り回っているのは事実。
4:探偵を名乗る男がマグロ人間について聞き込みをして回っていた。
5:何人かが行方不明になり、マグロ人間にさらわれたと噂になっている。

4:行方不明者の住居

指折りトーチャリングで行方不明者の噂を聞き出すと、最終的に「マグロ人間にさらわれた」と噂される人物の住居を突き止められる。あくまでも"噂"なのは、問題に巻き込まれないよう住民たちが互いに無関心を貫くようにしているからだ。探偵を名乗る人物がそこを訪問していた、という情報からPCはこの場所に当たりをつけた。

ハンチング帽にトレンチコートという出で立ちの探偵の正体はインベスティゲイターであり、PCは外見の情報から彼に思い当たるかもしれない。NMは探偵=インベスティゲイターと断定せず、ニンジャスレイヤーやタカギ・ガンドーといった危険なNPCのミスリードとして緊張感を煽っても構わない。

行方不明になったとされるのはカサギという名の男で、彼は三流のハッカーとして働いていた。PCが住居を訪れたとき、部屋には彼の娘であるパンクス少女が在宅している。しかしこの治安の悪いエリアではロクな訪問客などいるはずもない。PCがそこを訪れた時、彼女は部屋の隅で息を殺して嵐が過ぎるのを待つ。

PCは【カラテ】もしくは【ワザマエ】でこの部屋に押し入ることができる。彼女はNRSでろくに話せる状態ではなくなるだろうが、仮にティーンエイジャーの扱いに長けたPCがいれば話は別だ。重要な情報は持っていないが、彼女はひとつの情報源になる。彼女を脅迫するなどの行為では【DKK:2】【万札:3】が手に入る。

◇パンクス少女の胡乱な話
・父親は数日前から家に帰ってきていない
・父親は失踪前から様子が変で、マグロがどうこうと言う話をしていた
・最近、コートに帽子を被った探偵が訪ねてきて、父を探すと言っていた
◇家探しをする
邪悪ニンジャであるPCは、この部屋で更に財産を強奪することもできる。ティーンエイジャーの生活は極限まで困窮するだろうが、それは君の知ったことではない。コモンランダム・トレジャー表を最大で2回までロールし、その回数分だけ【DKK】を獲得する。
◆コモンランダム・トレジャー表◆
出目1−3:【万札:1】 出目4−5:【万札:2】 出目6:トロ粉末
※トロ粉末はシナリオ終了後の余暇中に【万札:D3】で売却してもよい

カサギは部屋に複数のファイヤウォールを接続したUNIX端末を置いている。鋭いPCは彼がケチなハッカーであることにすぐ気がつくだろう。

UNIX端末は【ニューロン】でハッキングしてパスを割るか、パンクス少女からパスのヒントを聞き出してアクセスすることができる。端末からは次のような情報が手に入る。

◇カサギのUNIX端末
1:最近撮影されたマグロの頭の写真が複数保存されている。どれも薄暗い場所で撮影されており、画質は酷く悪い。マグロの眼光は鋭い。
2:複数の人影がストリートを走る様子を収めた写真が数枚保存されている。いずれも夜間帯に撮影されたものだ。
3:夜間帯に雑居ビルへと入る人影を撮影した写真が数枚保存されている。エンガワ・ストリートらしいということは分かるが、薄汚れた招き猫が写り込んでいること以外に手がかりはない。パンクス少女と友好的な関係を築けていれば、写真の場所「マネキネコビル」を特定できる。

5:張り込み調査

PCに与えられた選択肢として、インベスティゲイターの地図と目撃情報をもとに、マグロ人間の出没予想エリアで張り込み調査を行うことができる。

調査内容は特に大切ではないので、過程を無視してイベントを発生させるか、手分けして広域を調査するならD6で最も大きい出目を出したPCがイベントを発生させることにする。このイベントは決まったルーティンで定期的に発生するものなので、NMは再挑戦する機会をPLに用意してあげると良い。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ!薄暗闇の中、君のニンジャ聴力は規則正しい複数人の足音を聞き取る。こんな危険地域で夜間に外出とは、やや非現実的な話だ。しかもこの足音、どうやら走っているらしい。
まさかこれが噂のマグロ人間か?バカバカしいと感じながらも、若干の緊張は拭いきれない。一度息を落ち着けると、君は思い切ってその姿を確かめに飛び出した!

6:マグロ人間の恐怖

あれはマグロか?それともランナーか!?君はその両方を目撃する!その存在は、スプリントする人間の下半身からマグロの半身が生えた、邪悪ハイブリッド生物であった!
複数体のマグロ人間はクローンのごとく統率された動きで.....おお、ブッダよ!賢明なプレイヤー諸君は既にお気づきのことだろう。あのヤクザスラックス!あの冷酷なマグロ目!あれは殺人マグロであり、クローンヤクザであり......すなわちバイオ殺人クローンマグロヤクザであった!
◆殺人クローンマグロヤクザ(種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ/マグロ)	
カラテ		3	体力        2
ニューロン    	2	精神力		2
ワザマエ		3	脚力		3
ジツ		ー	万札		ー
◆装備や特記事項
『常人の三倍の脚力』:殺人クローンマグロヤクザはニンジャではないが、連続側転を行える。

PCは矢尻陣形を組んで疾走する5体のマグロ人間と遭遇する。彼らは実際凶暴だが、頭部が真上を向いているのでカラテを振るうことはできない。またマグロとクローンヤクザのハイブリッド存在であるが故に、攻撃を受けようとも習性として止まることなく走り続ける。

PCはスリケンで攻撃を仕掛けても、そのまま後をつけても構わない。ただし後者の場合は【脚力:3】以上が必要となる。彼らは最終的に「カサギのUNIX端末」に写真が保存されていた「マネキネコビル」に入っていく。

マグロ人間を目撃したPCは難易度:NORMALで「恐怖判定」を行う。恐怖判定に失敗したPCは動揺のあまり追跡行動を取れなくなる。

◆マグロ人間の恐怖
このシナリオでは【NJRPG/プレイエイド】恐怖判定を追加するから、簡易的な「恐怖判定」を採用する。マグロ人間との遭遇など、とんでもないものを目撃してしまったとき、PCは現在の【精神力】と同じ数のダイスを振ってこの判定を行う。記載がないときは難易度:EASYとなる。

判定に失敗したPCは【精神力】を1失い、次のリアクション表をD6でロールする。PLはその結果に応じて好きにロールプレイするとよい。

1~3:「ワッザ!?」動揺し、次の行動が遅れてしまう。
4:「アイエッ!?」動揺のあまり、ウカツを演じてしまう。
5:「アイエエエ!」恐怖!もはや逃げ惑うしか無い!
6:「あ……アアア!」「アイエエエ!」恐怖がニューロンを満たす!

※「恐怖判定」で【精神力】が0を下回ってもPCはロストしない。その代わり、マイナス値分だけ【ニューロン】にデバフを受ける。このデバフは【精神力】が0以上まで回復して初めて取り除かれる。

7:マネキネコビル

エンガワ・ストリートの荒んだ雑居ビルのひとつ。実際にこのような名前が付いているわけではないが、誰かが置いていった招き猫を由来に、シナリオ中ではこの通称で呼ばれる。

この場所には「カサギのUNIX端末」の写真から場所を推測するか、殺人クローンマグロヤクザを追跡することによって辿り着くことができる。

殺人クローンマグロヤクザたちは、扉の壊されたマネキネコビルの中まで駆け込んでいく。この場所は一見して朽ち果てた廃ビルだが、深部には偽装された電気式隔壁があり、殺人クローンマグロヤクザたちが近寄ると静かに展開して地下へと続くスロープが現れる。

◇隔壁に対処する
マネキネコビルの偽装障壁の先に進むには幾つかの方法がある。
1:マグロ人間の後をつけ、開いたタイミングで忍び込む。
2:外部から【ニューロン:NORMAL】でハッキングする。
3:外部から【カラテ:ULTRA-HARD】で破壊する。
4:マグロ人間を【カラテ】で倒し、「識別サイバネ素子」を手に入れる。
  障壁は「識別サイバネ素子」に反応して自動的に開閉する。

8:マネキネコビル地下

マネキネコビルは半円状の秘密施設を経由して、地下で別のビルと繋がっている。かつてのビル・テナントによる違法改築が度重なった結果がこれだ。

マグロ人間はこの空間を走り抜け、別のビルから再び地上へと走り出している。その途中ではムービングウォークめいたランニングマシンによって一時的に減速し、天井からスシを補給する。いわばここはマグロ人間の円形加速装置兼マグロピットだ。

このループ線を調査しようとしたなら、PCは途中でスシ補給中のマグロ人間に遭遇する。PCを視認したマグロはキリングオーラを放ち激しくのたうち回るが、走ることを優先するため実際に襲いかかってくることはない。

「「「AAAARGH!」」」

加速装置の数箇所には施設の中央に向かうメンテナンス通路が備わっている。PCはここを経由して実験棟に侵入することができる。

◇実験棟A
非常灯にうっすらと照らされた通路の先には、『医療行為
とプレートが掲げられた扉がある。これを恐る恐る押し開けた先は医務室のようであったが、謎の巨大シリンダーや水槽といった奇妙なオブジェクトも散見された。

もしヨロシサン製薬の企業ニンジャがチームにいるなら、そのPCはシリンダーなどからバイオ実験設備を連想する。ここには2つのトレジャー・オブジェクトがあり、それぞれ次のトレジャー表で中身を判定する。

◆トレジャー表(メディカル)◆
出目1−2:【万札:1】出目3-4:【万札:2】出目5-6:トロ粉末

9:セキュリティープール

実験棟Aは『関係者限定』と注意書きのある扉を介して、閑散とした部屋に繋がっている。この部屋は全体が水深3m程度のプールになっており、先の扉から対岸の扉まで幅2m程度の橋が辛うじてかけられている状態だ。壁には何らかの開閉機構の備わった円形の装置が設置されている。

この場所は実験設備であると同時に、対侵入者の防衛設備でもある。NMは単独で先に進もうとしたPCに罠の存在を警告し、パーティー全員で進むよう促そう。そのPCが十分に強力なキャラクターなら、そのまま罠に閉じ込めて分断してしまっても構わない。

橋の中腹に差し掛かった時、君の足は不意に水に触れる。足を踏み外したか?!いや、足は地についている.....だが同時に、水に触れてもいる!プールの水位が上がってきているのだ!これはまずい!
そして何らかの装置駆動音!両岸の扉がロックされ、壁の円形装置が展開!水が注ぎ込まれ始め......いや、水位は君の足首以上はあがろうとしない。円形装置の用途はすぐに判明する。そこから流れ落ちてきたのは、スキューバ・マスクを装着したクローンヤクザ軍団!?
否!見よ!クローンヤクザたちの下半身を!あれはマグロだ!ヤクザとマグロのハイブリッド存在。すなわち、クローンマグロヤクザマーメイド.....!ザッケンナ、コラー!』狂気のマーメイド軍団がアンダーウォーター・チャカ・ガンを構え、侵入者ニンジャに襲いかかる!

描写の通り、PCが橋の中腹に辿り着いた時点でトラップイベントが発生し、PCの倍の数だけクローンマグロヤクザマーメイド軍団が円形装置から投入されてくる。上半身はクローンヤクザ、下半身はマグロという奇怪な生命体だ。全てのPCは恐怖判定を行う。

◆クローンマグロヤクザマーメイド(種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ/マグロ)
カラテ		2	体力        1
ニューロン    	2	精神力		2
ワザマエ		3	脚力		4/0
ジツ		ー	万札		ー
◆装備や特記事項
◇アンダーウォーター・チャカ・ガン:水中でも使用できるチャカ・ガン
◇『水中移動』:水中では脚力4、地上では0として扱う。

セキュリティープールから脱出する方法は3つだ。【カラテ:HARD】で扉を破壊、【ニューロン:NORMAL】で扉をハッキング、もしくは全てのクローンマグロヤクザマーメイドを殺し尽くす。3番目の選択肢を取る場合『試験終了な』のアナウンスーンと共に扉のロックが解除される。

10:メインチャンバー

セキュリティープールを抜けた先は地下施設の中央区画になる。ここはエントランスエリアからT字状に分岐しており、PLには左右のどちらに向かうか選択する権利が与えられる。この選択によって以降のシナリオ展開が微妙に変化する。

◇探索のオプション
このシナリオではテンポを良くするために細かい区画割りを省略している。ただし、この地下施設には描写の他にも細かな部屋が存在していてもおかしくはないので、NMは任意に部屋を増設してアイテムを設置して構わない。

ひとつのアイデアは、このメインチャンバーから北側に大きな研究室を配置する、あるいは小さな研究室や工房を4区画ほど接続することだ。古い医療品やサイバネ部品のジャンクでも数があれば【万札】として扱えるだろう。

11:実験動物維持棟

白塗りのスイングドアを押し開けた先には、ラボめいた設備が接続されていた。鋼鉄の檻、泡立つ巨大水槽.....実験動物の維持設備だろうか。人工的な水流が生み出された水槽では、数匹のマグロが鱗を光らせている。

エントランスエリアから右側の通路を移動すると、スイングドアの先に実験動物維持棟が接続されている。ここには水槽や檻といった、様々な実験動物の類を生育および維持するための設備や機器が備えられている。ただし、実際に運用されているのはマグロの泳ぐ水槽のみだ。

ここにはメディカルボックスを2つ配置して、コモンランダム・トレジャー表でアイテムを獲得させるか、NMの判断で「シャカリキ・タブレット」を人数分配置しておいても構わない。このアイテムは使用者の【精神力】を1D3、使用時に【精神力】が0以下だった場合はさらに追加で1回復する。

PCが先にこちら側の調査をすることにした場合、鋼鉄の檻にはインベスティゲイターが囚われている。それも恐るべきジツによって上半身と下半身を切り離され、別々の檻に閉じ込められた状態でだ!コワイ!

インベスティゲイターの切り離された下半身は手持ち無沙汰(手はないが)に胡座をかき、上半身は壁に向かってコツコツと何らかの作業に没頭している。彼はスプーンを使って壁を掘っている

水槽には数匹のマグロ、檻には何も.....コツ.....コツ......この音は何だ。君は部屋の奥から聞こえる小さな金属音を聞き逃さなかった。足音を忍ばせ、恐る恐る異音の発生源へと順に檻を覗き込む。金属音は鳴り止んでいた。
(ア、アイエエッ?!)順に檻を覗き込む君は、ついに目にしてしまう。それは胡座をかいた人間......だが、腰から上がない!おおブッダよ、無残にも真っ二つに切断されているのだ!断面には謎の暗黒空間!?
「おお、やっと来てくれたか!」不意に隣の檻から声が響く。この声は.....インベスティゲイター=サン!!慌てて隣の檻を覗くと、そこには見覚えのあるニンジャの上半身が!「実際助かった!」生きている!

アイエエエ!トレンチコートを着たインベスティゲイターは上半身と下半身が切り離された状態で平然と活動している!その姿を目撃したPCは難易度:NORMALで恐怖判定を行う。

彼を檻から救出するには、【カラテ】か【ワザマエ】に2回成功しなくてはならない。彼の上半身と下半身の切断面を合わせると、驚くべきことにその体は平然と元通りに接合する

救出の有無にかかわらず、彼はマグロ人間騒動に関する重要な情報を提供してくれる。このシーンでは「PLの代表者がD6をロールしたあと、下記の表からNMが任意の未開示の内容をひとつ選択して開示する。」というプロセスを繰り返す。情報開示前のD6判定で二度同じ出目が出てしまった場合、侵入者に気がついた敵ニンジャが乱入してくる。残念ながら情報共有の時間は一時中断だ。

◇マグロ真実:インベスティゲイターの証言◇
1:一連の事件の背後には2人のニンジャが存在する。ニンジャの名は『スプライサー』と『シンクロトロン』。
2:スプライサーは直接手を触れずに、生物を"切断"するジツを持つ。切断された断面同士は接触するとスプライス(接合)される。
3:そのジツは奇妙な腕の構えを起点に、射程数mの不可視のイアイドめいて繰り出される。
4:マグロ人間はスプライサーのジツによって後天的に生み出された存在。
5:シンクロトロンは謎めいているが、稲妻のような強烈なカラテ使い。
6:彼は2忍の連携と初見殺しのジツにやられ、囚われてしまっていた。

12:マグロ・オン・ザ・ストレッチャー

ガラガラガラガラ!!騒々しい音と共に、スイングドアを勢いよく押し開けたストレッチャーが飛び込んでくる!その上にはマグロ!それを押しているは血塗れの手術衣を着たニンジャだ!
「ハーッ.....ハーッ.....!ドーモ、スプライサーです。私のラボに侵入者だと!?許さんぞ!そういうのは!」ニンジャはマグロストレッチャーを弾丸めいて君たちに突き飛ばすと、奇妙なカラテを構えた!
「気をつけろ!やつのジツは一撃必殺!不可視のイアイドと思え!」インベスティゲイターは君たちに警告する!

PCがメインチャンバーの実験動物維持棟を先に調査しに向かい、乱入イベントを発生させた場合、スプライサーとの戦闘に突入する。

◆スプライサー(種別:ニンジャ)	
カラテ		1	体力        2
ニューロン    	3	精神力		3
ワザマエ		2	脚力		1
ジツ		1	万札		5
◆装備や特記事項
◇ヨリツギ・ジツ
体の前面で両腕を上下平行に揃えた、奇妙な構えから繰り出されるイアイドめいたジツ。
【精神力】を1消費。非生物には影響を及ぼさない。
4マスの射程を持ち、『ボス級の敵』1体か、それ以外の敵3体までを対象に発動する。
ジツを受けた対象はNMが指定した箇所から人体切断され、即座に行動不能となる。
『ボス級の敵』は難易度:HARDで回避可能。

スプライサーはカラテこそ弱いが、一撃必殺のジツを持った危険なニンジャだ。メガコーポ崩れの闇サイバネ医師だった彼は、ニンジャと化して超常のジツに目覚めてから研究者時代の熱意を取り戻し、密かにおぞましいハイブリッド実験を繰り返していた。

殺人クローンマグロヤクザとクローンマグロヤクザマーメイドは、彼のヨリツギ・ジツが生み出した進化生命体である。

「このジツに目覚めてから色々と実験を繰り返してきた。何を繋ぐことができて、何が繋げないのか。一見万能に見えて、そうではないことが分かった。相性があるんだ。ザリガニと人間?繋げるさ。だが寿命は短い。拒絶反応だ。ではマグロと人間は?完璧な組み合わせだ。ほとんど拒絶反応が起きず、バイオインゴットも不要!何故か?それは人間とマグロのDNAが99.999%同じだからだ!つまり、人間とマグロは同一存在と言っても過言ではない!ではそれを繋ぐと?良い質問だね!両者は互いの有益な特性を受け継ぐ!単なるニューロン機能のブーストではない。つまり進化だ!彼らは始めは新たな環境に戸惑いを見せるが、驚異的な速度で順応し、コンピテンスを獲得する。すなわち、すなわちだよ、99.999%同一存在のハイブリッド進化生命体の超効率のコンピテンシーを精密に観測かつ分析することによって99.999%同一存在である人間とマグロの原種としてのさらなる進化を促す重要なファクターを解明できるかもしれない!さあそしてその法則はニンジャにも当てはまるのだろうか?ニンジャとは人なのか?私は試したい!興味が湧いてこないか?」 ーマグロ研究者のことば

この胡乱な敵ニンジャとの戦闘は通常通り行っても良いが、次のような緊迫感のあるオプションで決着をつけても構わない。ニンジャ同士のイクサは時として一瞬で雌雄を決する。

◆戦闘オプション:スリケンを抜きな◆
スプライサーは奇妙なイアイドめいた構えを取り、PCもまたそれを打ち破らんと油断なきカラテを構える。このオプションでは1ターンで決着のつく、ガンマンの決闘のような"早撃ち"勝負を行うことができる。

1:PC全員がギリギリ相手のジツの射程に入っているものとする。
2:スプライサーは精神力を人数分消費し、PC全員を一度に攻撃する。
3:PCはカラテ、スリケン、ジツなど攻撃する手段を選択する。
4:スプライサーとPCの【ニューロン】を比較して差を求める。
5:【ニューロン】が低い方のキャラクターは、その差と同じ値だけ、選択した判定のダイスを減らす。
6:マグロが水飛沫をあげた瞬間、全キャラクターは同時にダイスを振る!
7:判定に成功したダイスの数が多い方が早撃ちに勝つ!BLAM!
8:負けた側は回避不可のダメージを負い、行動はキャンセルされる。
9:戦闘終了

※カラテやジツで攻撃する場合、1ターンで射程に移動する必要がある。
※成功数が同じ場合、出目が大きいほうが早撃ちに勝つ。

13:バイオクリーン無菌手術室

白塗りのスイングドアを押し開けた先には、これまでとは明らかに違うアトモスフィアが漂っていた。様々な薬品やサイバネ器具が雑多に置かれた棚、横並びの赤い手術台、マグロの乗ったストレッチャー......そしてニンジャ!

エントランスエリアから左側の通路を移動すると、『接合作業』と表示灯が掲げられたスイングドアの先にバイオクリーン無菌手術室が接続されている。ここはスプライサーが邪悪なハイブリッド手術をおこなっているラボラトリでもある。

PCがここに踏み入ったとき、彼は何らかのサイバネをバイオマグロに取り付けようとしている。ストレッチャーのバイオマグロは、既にスプライサーのヨリツギ・ジツで肺呼吸を獲得した進化個体だ。

アンブッシュを認めると彼はアイサツすらできなさそうなので、PCがエントリーした瞬間から「12:マグロ・オン・ザ・ストレッチャー」と同様に戦闘シーンへ突入するものとして扱う。

14:さらなるニンジャのエントリー

そのとき!「イヤーッ!」スイングドアを蹴り開けて黒い稲妻がエントリー!スプライサーを守るようにツカハラ回転で鮮やかに着地した!「ドーモ、シンクロトロンです。無事か、スプライサー=サン!?」奇怪なメンポにニンジャ頭巾!

実験動物維持棟でスプライサーと決着をつけた場合、彼は即座には爆発四散せず、シンクロトロンによるインタラプトが発生する。

またスプライサーが重篤なダメージを負った時点でヨリツギ・ジツの行動不能デバフは解除され、インベスティゲイターの肉体も元に戻る。(ヨリツギ・ジツは副次的にカラテ循環を阻害し、切断対象を弱体化する。デバフから解放された彼は自力で檻を破壊し、胴体を繋ぎ直す。)

「死ぬな!スプライサー=サン!.....おのれ、賊敵め!」シンクロトロンは黒光りするニンジャスーツに油断無きカラテを漲らせる!圧倒的カラテ強者のアトモスフィア!だが!「フーッ.....ドーモ、また会ったな。インベスティゲイターです。必殺のジツはもう使えんぞ!諦めろ、カサギ=サン.....!」ジツから脱したニンジャ探偵が加勢!
◆シンクロトロン(種別:ニンジャ/マグロ)	
カラテ		14	体力        14
ニューロン    	8	精神力		8
ワザマエ		12	脚力		8
ジツ		0	万札		5
◆装備や特記事項
『カーボネイト・マグロ・ニンジャスーツ』、『連続攻撃3』、『常人の三倍の脚力』

◇カーボネイト・マグロ・ニンジャスーツ
シンクロトロンはオーガニックマグロの皮から生成した特殊なニンジャスーツを着用する。
射撃のダメージを受けるとき任意で、【精神力】を1消費し【ニューロン】+【ジツ】で判定を行う。
判定に成功すると特殊なムテキ・アティチュードが発動し、ダメージを無効化する。
このムテキはシンクロトロンの行動を一切阻害しない。

シンクロトロンはディセンションして間もないニンジャだが、その身にはアーチ級の強大なソウルを宿している。その正体はマグロ・トレーラーで秘密裏に運搬されていた知性マグロであり、ヨタモノのトレーラー襲撃時に重傷を負って生死の境をさまよっていた。

瀕死の知性マグロと他のマグロを回収し、イケスに放り込んだのはスプライサーだった。その目的はあくまでも被験体の確保であったが、回収したマグロが意思疎通を図れる相手だと知ったとき、彼は驚愕すると共に狂喜した。

知性マグロもまたスプライサーの常軌を逸した発想に、稲妻が落ちたかのような衝撃を受けた。彼は超常のジツというかつて無いアプローチによって、新たなハイブリッド存在の未来を開拓しようとしていたのだ.....!

両者は研究者として絆を深めていたが、重症を負った知性マグロの命は風前の灯火だった。彼の傷は専門家ではないスプライサーに治せるものではない。最終的に彼らが下した決断は、ジツによる頭部移植による延命だった。

新たなボディーには、スプライサーのマグロ実験に気がつきマネキネコビルをかぎまわっていたハッカーの男、カサギが選ばれた。不運な彼と知性マグロは新たなアプローチによって、マグロと人間のハイブリッド存在として再生することになる。

切り捨てられたそれぞれの半身は死を迎えた。誰にとっても予想外だったのは、その時、残されたマグロ人間という存在にニンジャソウルが憑依したことだ。こうして彼はシンクロトロンとなり、ヨリツギ・ジツに依存しない新種のニンジャ生命体となったのだ!

シンクロトロンを目撃したPCは難易度:HARDで恐怖判定を行う。

「フ、フハハハハ!!違うぞインベスティゲイター=サン!」憤怒から一転、ニンジャは笑う。「おれは、シンクロトロンだ!」その手は己の頭巾に掛けられ.....その下に隠された真の姿を明らかにする!
「おれは、シンクロトロンだ!」その素顔が暴かれる!それは.....おお!奇怪なメンポは、メンポではなかったのだ!頭巾から突き出していたメンポ、いや、彼の頭部は......マグロそのものだった!マグロの.....ニンジャ!

15:稲妻と探偵

その時だ!KABOOOOM!バクチク・グレネードで外部から扉粉砕!爆炎と共に2人のニンジャがエントリーする!「「イイイヤアアアアーーーーーーッ!」」稲妻めいた黒いカラテとアイキドーめいた破壊打撃の殺戮応酬!
片やトレンチコートをまとったニンジャ、片や黒光りするスーツをまとったニンジャ.....いや、あれは!?探偵ニンジャと殺人カラテ・ラリーを繰り返すニンジャの頭部は、マグロそのものであった!マグロの.....ニンジャ!

PCがバイオクリーン無菌手術室を先に調査し、スプライサーとのイクサに決着をつけたとき、破壊的なカラテ応酬を繰り返すインベスティゲイターとシンクロトロンがその場にエントリーする。

スプライサーが深刻なダメージを受けたことでジツが解除され、インベスティゲイターは自力で脱出に成功していた。

シンクロトロンを目撃したPCは難易度:HARDで恐怖判定を行う。

16:状況判断

「投降しろ、シンクロトロン=サン!もはや勝敗は決した!」君たちと探偵ニンジャは恐るべきマグロニンジャをカラテ包囲する.....!「ア、アバッ.....シンクロトロン=サン、逃げろ。私はもうダメだ。」重症のスプライサーはDHAのオーバードーズにより辛うじて生存!
「マグロテック.....私の研究のすべて、君に託す。未来を.....繋いでくれ!」ニンジャは震える手で黒いフロッピーディスクを取り出した。そのラベルには『マグロ』の文字!

シンクロトロンは実際かなり強力なニンジャで、数人がかりで挑んだとしても生半可なPCではなぶり殺しにされてしまうだろう。チームが十分に強力なニンジャたちで構成されているなら直接戦闘を挑んでもいいが、正規ルートとしてはこの場でシンクロトロンとの直接戦闘は発生しない。

シンクロトロンとインベスティゲイターのカラテ力量はほぼ拮抗しているが、彼はこの時点で数的不利を強いられている。通常であれば彼はスプライサーの声にも促され、「マグロテックの研究データ」の入ったフロッピーディスクを掴み取って稲妻のような速度で地上へと走り出す。

その姿を見て安堵したスプライサーは最後のジツを発動し、爆発四散する。PCとインベスティゲイターはシンクロトロンを追おうとするだろうが、その道筋には敵忍の最後のジツが生み出したマグロ・キマイラが立ち塞がる。

◇インベスティゲイター
彼はある種のメタフィクショナルなキャラクターであり、基本的にはステータスの類を持たない。そのカラテは若いアーチ憑依マグロであるシンクロトロンにも匹敵し、シカゴ・マシンガンや大量のバクチク・グレネードで完全武装した状態では互角以上に戦うことができるが、彼はただの舞台装置だ。存在がジョークなので真面目に考えてはいけない。

◆マグロ・キマイラ (種別:モータル/バイオ生物/ヤクザ/マグロ)
カラテ		8	体力		8
ニューロン    	1	精神力    	1
ワザマエ		4	脚力		4
ジツ		ー	万札		0
							
◇装備や特記事項				
装備:チャカ・ガン、スキル:『突撃』、『連続攻撃2』

マグロ・キマイラは、ジツの解除で分離してしまった複数の殺人クローンマグロヤクザを、ブーストしたヨリツギ・ジツがひとつに再結合した恐るべきポリメリゼーション生命体だ。

この存在はPCと遭遇するまでにジツの因子を有するクローンマグロヤクザマーメイドの残骸をも吸収し、ヤクザとマグロのモジョー・ガレットめいた姿に変貌している。このおぞましい姿が、あの研究者の求めた未来だとでも言うのだろうか.....!PCは難易度:HARDで恐怖判定を行う。

全員でマグロ・キマイラと戦ってもいいが、そうしている間にもシンクロトロンはマグロテックの技術と共にネオサイタマの闇に消えてしまうだろう。

◇どちらを選んでも結局マグロ
ここでPCのチームはマグロ・キマイラと戦うか、シンクロトロンを追いかけるか選択することができる。彼らが選ばなかった側はインベスティゲイターが引き受ける。前者の場合はマグロ・キマイラを始末した後、インベスティゲイターとの戦闘で弱体化したシンクロトロンとの決着をつけることになる。後者の場合マグロ・キマイラとの戦闘による消耗は避けられるが、ほぼ万全のシンクロトロンを追いかけなくてはならない。

17:ファスト・アズ・ライトニング

「ヘイヘイ!ヘイヘイ!」「お前ら、マグロ人間を取っ捕まえるぞ!報奨金はヒャクオクエンだ!」「「「ワオー!」」」黒い稲妻の駆けた痕跡を追い、君たちがマネキネコビルとは別の建物から外に飛び出すと、そこには違法改造バイクに跨った重武装ヨタモノアーマードが決起集会を開いていた!

シンクロトロンはそのカラテに加えて常人の3倍の脚力を有し、更には高濃度DHA循環によるニューロンブーストによって時速100kmを超える速度での移動を可能としている。並大抵のニンジャでは彼に追いすがることすらできないだろう。だが、乗り物があればどうだ!

PCはスナック感覚でヨタモノをなぎ倒し、違法改造バイクを奪うことができる。これさえあれば稲妻に追いつくことができる。後はカラテあるのみだ.....!

複数の違法改造バイクがハイウェイを駆ける!ただし、その搭乗者はいずれもニンジャだ!そして彼らが追うのもまたニンジャ!マグロのニンジャ.....黒い稲妻!彼は平然と車両を掻い潜りながら加速し、その速度は既に時速100kmに達していた!

違法改造バイクに跨ったPCは車両が騒々しく走るハイウェイで、ようやくシンクロトロンを攻撃射程圏内に捉えることができる。

もしマグロ・キマイラを倒してからの追跡劇なら、シンクロトロンはインベスティゲイターとカラテ交戦中だ。探偵ニンジャはPCが辿り着いた時点で追跡劇から脱落してしまうが、シンクロトロンの【体力】と【精神力】は半分まで低下している。

「「「イイヤーッ!!!」」」時速100kmで駆けるマグロニンジャと探偵ニンジャのカラテが交錯する!両者ほぼ互角か!?「グワーッ!」マグロニンジャがやや上回る!カラテ打撃を受け、探偵はハイウェイ下に落下!「イヤーッ!」KRATOOM!!「グワーッ!?」際にバクチク大量散布!

以降はお互いにほぼ等速で移動するものとして、縦スクロールシューティングめいた状況で、下記の特殊ルールに従って戦闘処理を行う。なおシンクロトロンに匹敵する脚力のPCは、自分の脚で走って移動しているものとして構わない。

◆マグロチェイスのルール1:PCの行動処理◆
シンクロトロンは恐るべきニンジャ敏捷性で、車両を掻い潜りながらひたすらに走り続ける。同じく高速移動中のPCがそこに接近してカラテを叩き込むのは非常に難易度が高い。PCの主な攻撃手段は射撃になるだろう。

この戦闘では主に次のようなことができる。

◇ハンドル捌きを判定する:バイクのドライバーは【ワザマエ】判定を行う。走って移動しているキャラクターはこれを【連続側転】に読み替えて処理する。この効果は次のターンの手番直前まで持続する。
◇敵に接近する:ハンドル捌きを判定する。成功すると敵に接近し【カラテ】や【ジツ】の射程に持ち込むことができる。ただし前者の場合、敵の【カラテ】距離に踏み入ったということでもある。
◇敵を射撃する:何らかの手段で敵を射撃する。走行中の車両が遮蔽物となるため、判定難易度は+1される。
◇前方の車両を狙撃する:射撃で前方を走る車両のタイヤを破壊する。判定難易度は+1される。(『◇敵を射撃する』の補正も加算され、合計で難易度+2となることに注意。ただしカラテ・ミサイルやカトン、バクチク・グレネードなど強力なジツや武器は正確な狙いが不要なのでこの難易度補正を無視する。)成功すると車両は横転し、破壊的な質量兵器として後方の敵味方全員に襲いかかる。対象となるキャラクターは【回避:HARD】で判定し、失敗すると1D6のダメージを受ける。
◇位置取りを調整する:ハンドル捌きを判定する。成功した場合、次の2つの効果からどちらかを選択する。1:射線の通る場所に移動し、『◇敵を射撃する』の難易度補正を無視する。2:『◇前方の車両を狙撃する』の攻撃対象から逃れる。これらの効果は次のターンの手番直前まで持続する。

※バイクを操縦しているPCは、敵を狙うあらゆる判定難易度を+1する。
 2忍乗りをしている場合、後ろのPCは通常通り判定を行える。
※二忍乗りの場合『◇前方の車両を狙撃する』でドライバーが回避判定に失敗しても、後ろのPCは【回避:HARD】によって別の車両に乗り移ることでダメージを回避できる。
マグロチェイスのルール2:シンクロトロンの行動処理◆
シンクロトロンの行動方針は極力シンプルにするとよい。彼は射撃に対して最小限のダイスやムテキで対処し、大ダメージの車両にはダイスを慎重に配分する。

◇マス・レッカー:シンクロトロンは【カラテ:HARD】によって走行中の車両を叩き壊し、後方のPCへ危険な障害物を生み出す。基本は『◇前方の車両を狙撃する』と同様だが、これは『◇位置取りを調整する』の影響を受けない。この攻撃には1D3忍がランダムで巻き込まれる。厳密に位置を管理するNMは、これが幅3マスの直線的な当たり判定を持つとして処理する。
◇稲妻めいたカラテ:接近して【カラテ】を行ったPCがいるなら、彼はマス・レッカーの代わりに、その対象に3連続攻撃の【カラテ】を叩き込む。
◇カウンタースリケン:カナシバリ・ジツなどで体の動きを阻害されると、高速移動中の彼は転倒して即死する。故に、そうしたPCがいる場合は優先的にスリケン迎撃を行なう。このとき『連射2』と『時間差』を適用する。

18:マグロはセンチメントに涙を流すか

(なんだ、この虚無感は。おれは、これで良かったのか。)恐るべきマグロニンジャは油断ならぬカラテを奮い、追跡者を迎え撃つ。その脚が止まることはない。だが彼の心は曇り、戸惑いを感じていた。

ソウル憑依からそれほど時間が経っていないシンクロトロンだが、ヤモトやショーゴーの例とは異なり、マイグレーション・トレーニングによるDHAとカラテの高速循環に起因して高いカラテ学習を行っている。走れば走るほど、彼はソウルに相応しいカラテをその身に宿していくだろう。

一方でPCと交戦している彼はスプライサーを後に残してきたことを後悔しており、またニンジャと化してなお走りつづけていることに疑問と虚無を感じ始めている。DHAによるニューロン機能向上がもたらす弊害だ。

ニューロンの深刻な乱れは彼のパフォーマンスにも影響を及ぼす。戦闘の2ターン目、3ターン目にそれぞれ回避ダイスが半減し、最終的にはダイスの数が1/4になってしまうのだ。

このルールにより、おおよそ3~4ターンで決着がつくことを想定している。戦闘が長引くようなら、シンクロトロンは更に加速してマグロテックと共にネオサイタマの闇に消えてしまうだろう。

「グワーッ!?」ニューロンの深刻な乱れが彼のウカツを招いた!その速度を支えていた両脚は最早地面にない!顔面が濡れたアスファルトに最接近!アブナイ!このままではネギトロの運命だ!
(おお、スプライサー=サン、すまぬ。今わかった。君はおれをニンジャではなく、人間に戻してくれたのだ!おれはシンクロトロンだ。だが、加速すべきだったのはきっとおれ自身ではなく.....)彼のカラテがあれば、受け身程度は容易に取れたことだろう。だが!
おお!彼はそうせず、この結末を受け入れた!「サヨナラ!」ゼンめいた悟りに到達しかけたその時、彼は大地に触れ、爆発四散した!

恐るべきマグロニンジャとのイクサは、PCたちが与り知らないところにセンチメントな余韻を残して幕を閉じる。PCは爆発四散痕から舞い上がる「家族の写真」を手に取ることだろう。ALAS!そこには「くたびれた中年男性と不機嫌そうなパンクス少女」が写っている!

選択したルートやダイスの出目によっては、PCはこの写真が意味するところに全く気が付かないかもしれない。役に立たないアイテムは、その場で放り捨てられて行く定めだろう。これもまた、マッポーの一側面.....!

19:結末

重金属酸性雨が今日も淡々とネオサイタマの闇に注ぎ込まれる。この闇には今も、昔も、多くの物が飲み込まれていった。君たちの余暇、危険なマグロテック、マグロの、ニンジャ。それらが今後、顧みられることは決して無い。サヨナラだけが人生なのだから。だが.....

好奇心から危険な目に遭っただけのPCには、本来何の報酬も与えられない。だがPCたちの助力と活躍に感謝するインベスティゲイターは、個人的に全員の口座に【万札:10】を入金し、回収していた【トロ粉末】を人数分提供してくれる。

またパンクス少女が生存しており、PCが「家族の写真」を回収していた場合、それは【万札:10】で彼に買い取ってもらえる。

自称探偵ニンジャは写真を受け取ると、ひらひらと手を振りどこかに去っていった。ニンジャの癖に甘い奴だ。しかしその眼には、ドロドロした黒いなにかが渦巻いていた。きっとまた何か妙なものを調べに行くのだろう。
奇妙極まりないが、少なくとも彼に関して退屈することはないだろう。その好奇心が次は何を暴いてしまうのか、想像もつかないが。君は今回の出来事を思い返し、小さく疲れた笑みをこぼすと、残る余暇を楽しむことにした。


◆◇◆


◆忍◆ ニンジャRPG名鑑#XXX 【インベスティゲイター】 ◆殺◆
自称探偵の奇妙なニンジャ。その瞳の奥底には邪悪な何かが渦巻く。
常人の三倍の好奇心で常に何かを調査し、大体いつも酷い目に遭っている。
◆忍◆ ニンジャRPG名鑑#XXX 【スプライサー】 ◆殺◆
メガコーポ崩れの闇サイバネ医師に邪悪なニンジャソウルが憑依。
生物を切断し再結合するヨリツギ・ジツを用いて、おぞましいハイブリッド研究を行っていた。
彼のマグロテックが実用化されたならば、マグロが地上に進出していたかもしれない。
◆忍◆ ニンジャRPG名鑑#XXX 【シンクロトロン】 ◆殺◆
知性マグロと人間を素体としたハイブリッドニンジャ生命体。
マイグレーション・トレーニングによるDHAカラテ循環により超効率のカラテ学習を行なう。


「マグロ・コンピテンシー」 終わり

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