ラスティ・ドールズ

……がりがり、ざりざり。がりがり、ざりざり。
自動人形AM-967A”クロナ”は、砂と錆だらけの関節を軋ませ、瓦礫と砂塵の原野を歩んでいた。
「もっとキリキリ歩けや、阿婆擦れめ」
衛星通信を介して野卑た音声が届く。
「ったく、俺なら半日もかかんねえ距離だぞ。直接降りられりゃあな」
なら自分でやればいいだろう。
クロナは怒りを覚えたが、それを表現する罵倒の言語アセットは持ち合わせていない。
だから、黙って歩き続けることにした。

クロナは軌道移民の”漁り屋”にサルベージされて以来、この「遺跡荒らし」に従事している。
汚染された地表の廃墟から資源を「盗掘」する、最低の仕事。
クロナの情動エミュレータはずっとこの仕事に不満を示しているが、”漁り屋”は他の仕事をくれようとしない。そのくせクロナのスペックには文句を垂れる。要するに最低の所有者だった。

がりがり、ざりざり。
整備不良の脚を引きずり、クロナは歩き続けた。

【続く】

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