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6月33日 腕時計カバーって何

6月23日(木)

U-NEXTの無料期間を使って、映画「街の上で」を観る。「愛がなんだ」で若葉竜也を知り、今回ので完全に惚れた。完惚れ。


6月24日(金)

金曜ロードショーで「トイ・ストーリー4」放送。トイ・ストーリーシリーズは好きだが、4はあまり評判がよくなくて、公開時に映画館へ観に行った夫も「めっちゃモヤモヤする」との感想だったので、この恋はきれいな思い出のままにしておきたい的な心境で私の中のトイ・ストーリーは3のまま終わらせようかとも思っていたのだが、夫が私の肩をポンと叩き、ゆっくり頷きながら「見届けるべきだ」などと言うので、意を決して観ることにした。

どんな駄作だと覚悟しながら鑑賞したが、結果、そんなに嫌じゃなかった。むしろ結構好き。確かにウッディとバズたちの友情に重きを置いて今までの作品を観ていた人たちにとっては裏切られた終わり方であろう。しかし、ウッディが「おもちゃはこうあるべき」という考えから脱却したことは、多様性を認め合おうという今の世相を捉えたものだと思うし、おもちゃが子どものそばに寄り添う喜びについてはフォーキーが身投げしなくなったことで十分伝えられており軽んじられてはいない。ウッディはずっと悩んでいたわけで、ああいう選択に至ったことにも納得感がある。あの人はそんなことしない!という周囲の勝手な期待は、時に人を苦しめる。

そういえば、「SEX AND THE CITY」の続編「AND JUST LIKE THAT」(これまた評判が悪い)の感想の中にも、最終的に仕事より恋を優先したミランダに対して「ミランダが仕事を捨てるなんておかしい!今までの彼女は何だったのか?」という声が多かった。それまでバリバリ仕事をやってきたミランダ像とは確かに異なる結末ではあった。しかし、一昔前の「女性だってバリバリ働くんだ!」という時代を超えて、今は「女性も男性も好きなように生きられるのがいいよね」という社会を目指すフェーズに入ってきているのではないか。バリバリ働く人がいてもいいし、主夫・主婦になる人がいてもいい。キャリーに「ミランダらしくない」というようなことを言われたミランダが「変わっちゃいけないわけ!?」と反論していたが、もちろん変わっていいのだ。ミランダも、ウッディも、そして私も。


6月25日(土)

仕事中、アンパンマンのキャラクターカートに乗った小さい女の子が、右手に握りしめた天丼マンのフィギュアを私に突き付け、真剣な眼差しで、「てんてん!どんどん!てんどん!てんどん!」と訴えかけるように何度も何度も叫んだ。何を求められていたのだろう。釜飯丼をやればよかったのだろうか。


6月26日(日)

今日ついにあの台詞を口にした。アパレル店員の十八番、「私もこれ履いてます」である。私が履いていたスニーカーと同じものをちょうどお客さんが見ていたので、ここだ!とばかりに発言した。働きはじめる前までは、アパレル店員に「私もこれ持ってます」などと言われると内心「へっ、だからどうした」と斜に構えてしまっていたのだが、店員の立場になってみると、自分自身が実験台になっている分、自信をもっておすすめできるので接客しやすい。やりすぎは禁物だが、多用したくなる気持ちもちょっとわかる。有難いことに今日のお客さんは私のように斜に構えることもなく、「あら、いいね!」と気に入って買ってくれた。これで私も名実ともにアパレル店員の仲間入りと言えよう。


6月27日(月)

セブンイレブンの冷凍コーナーに、蒙古タンメン中本の汁なし麻辛麺という商品があり、我々夫婦の間ではそれを通称「辛い麺」と呼んで親しんでいる。辛い麺はうまい。すごく辛くてすごくうまい。夫はこの辛い麺のことを思うだけで汗をかく。それくらい人体に影響力がある辛い麺。今日も夫が「辛い麺食べたい」というので、買ってきて二人で食べた。辛い麺はその味がうまいのは勿論だが、麺がとってもモチモチしていることがうまさの70%くらいを占めていると思う。そういう意味では「辛い麺」よりも「モチモチの麺」と呼ぶ方が相応しいのかもしれないが、やはり蒙古タンメン中本のあの社長のことを思うと、モチモチの麺よりは辛い麺と呼ぶ方が正しいような気がする。いや、そもそも辛い麺という呼び方の雑さ。


6月28日(火)

踊りたくない芸人を見て爆笑していたが、たぶん私も踊るとああなる。


6月29日(水)

細長い袋の片栗粉の新しいやつを開けて、料理に使おうとしたら手が滑り、袋が落っこちそうになったので焦ってギュッと掴み直したら、先端からバフッと勢いよく片栗粉が噴射して、台所の壁まで到達した。壁に雪玉を投げつけたみたいに粉が張り付いていた。到達点までの軌道上にあるもの全てがふんわりと粉にまみれていた。片栗粉砲、最悪の兵器だ。


6月30日(木)

私がバイトしている店は大型商業施設内にあり、従業員はその商業施設の入館許可証というものを一人一枚持っている。顔写真付きのカードで、出勤の際、入り口に設置された店ごとのケースの中に自分の入館許可証を入れ、帰りにそれを持って帰ることになっている。

今日、出勤してバッグから入館許可証を取り出してみると、別人の顔面が出てきて思わず二度見した。うちの社員さんの許可証が、私のバッグから出てきた。つまり、前回退勤したときに間違えて持ってきてしまったのだ。しかも昨日まで三連休だったので、三日間も人の許可証を持ち歩いていたことになる。なんということだ。テンパりながら許可証のケースをみると、そこには私の顔面が取り残されていた。三日間ずっとここにいたらしい。社員さんに平謝りスタートの一日。


7月1日(金)

歯医者の日。車で歯医者の前に到着すると、横一列の駐車スペースに、シルバーの車が三台並んで駐車していた。形もよく似た三台で、一瞬この歯医者の営業車か何かなのかと思うくらいだった。

歯医者の中に入ると、待合の椅子に一席間隔で似たような風貌のおじいが三人座っていた。三人共ポロシャツにスラックスを履いており、生え際の後退の仕方まで似通っていた。駐車場に停まっていた三台のシルバーの車は、この三人のものに違いない。全く根拠はないがそう確信した。


7月2日(土)

田舎に住んでいるので、夜に窓を開けていると蛙の鳴き声がすごい。更に、週末は近所のカラオケスナックからおじいの歌声が漏れ聞こえて来る。更に、床下からは我が家の下の階の住人(カビゴン体型)の壮大ないびきが響いてくる。夏の夜。蛙といびきとおじいの歌と、みんな違ってみんなうるさい。


7月3日(日)

久しぶりに母方の祖母に会った。元気そうでよかった。祖母は、私が手首につけていた太くてゴツいブレスレットを見て、「何それ?腕時計カバー?」と言った。腕時計カバーって何。そんな商品は聞いたことがない。腕時計にカバーをしたら、もはや腕時計の役目を果たせないではないか。腕時計カバーって何。

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