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【ノーサイド・ゲーム】〈グ〉と〈ク〉のはざまで思うこと。【第3話】

「GM会議、毎週やればいいのにね!」と思ってはいたけど、かろうじて口に出さないだけの分別は持っていましたよ…で(私的には)おなじみの『ノーサイドゲーム』。
ええ、大泉さんそっちのけで尾藤にきゃーきゃー言っちゃったのが道民としてなんとなくもうしわけない…でおなじみの『ノーサイドゲーム』です。

スーツ!ネクタイ!ってかピンストライプ(※これは最終話ね)!! あと髪型。やっぱ前髪上がってるの好き、完璧。ちょっと見て、あの日本蹴球協会のえらいひと、完璧じゃないですか? 完璧にかっこよくないですか? 一応言いますが、この場合の〈ないですか?〉は修辞疑問です、完璧か完璧じゃないかを世に問うているわけではありません、『木戸専務理事、完璧ですよね!?』って推しに推してるだけ!!!!
ああ、念のためもう一回叫んでおこう。ピ ン ス ト ラ イ プ!(yyyes!)


ええと私、どっちの方角に向けて感謝の礼拝をしたら良いですか。特にキャスティングしたひとに。キャスティングをしたひとに、五体投地してありがとうと言いたいのですが。天才かよ、と言いたい。天才だ。


(落ち着け。)
…その完璧にかっこいい日本蹴球協会のえらいひとの名は「木戸祥助」。下の名前一回も呼ばれなかったけど、しょうすけ、っていうらしいよ。いい名前。「尾藤イサオ」の次くらいにいい名前。

ええと、ざっくり言うと、日本蹴球協会(=ドラマ内で日本ラグビーを仕切っている架空の団体)のえらいひとなんだけど、いちばんえらいひとではなくて、にばんめくらいにえらいひとで、協会を改革したい主人公の君嶋(=大泉さん)からすると、ラスボス前の防波堤!みたいな感じの役どころ。…いやちょっと待ってあんなかっこいい防波堤って。あんな完璧にかっこいいピンストライプの防波堤って。そんな防波堤ある?あり得る?……というようにいちいち私情をさしはさむと情報が錯綜してわかりづらくしかならないが、

とにかくそんな感じ。完璧にかっこいいピンストライプの何かの役なのだ。


初登場です第3話!
場面は、噂のGM会議。
前シーンで、アストロズサイドから〈ちょっと悪そう〉情報の前フリというナイスアシストを受けつつ、本当に美しい流れで登場…こういうの考えてるひとすごいとおもう。
まずは蹴球協会のエンブレムにかぶせ、ちょっと声だけ聞かせてくれる。会議の締め的ご挨拶らしい。エンブレムは会議室の背景幕のもので、そのまま視点が横に流れるとそこには、完璧にかっこいい木戸専務理事(≒尾藤)が。ダークスーツ。ネクタイはダークレッドベースの三色切り替え。あと襟元に、たぶん蹴球協会のバッジ(すごく欲しい)。全貌が視界に入った瞬間に崩れ落ちそうにカッコイイ。完璧。


しかしよくよく考えると、おうた歌うときとか、フォーマルな場面とか、尾藤のスーツ姿自体はそんなにレアでもないのだった。なんだけど、この〈木戸専務理事フォーム〉には、なんだかものすごく尾藤好きの者(私か。)の尾藤好き心をざわつかせるパワーがあるのも、ほんとうだとおもう。
たぶんだけど、そのザワザワはあのフォームの「社会的にちゃんとしてますよ感」がまきおこしているのではないかしら。なんだったらその「ちゃんとしてますよ」により、「やや威圧しちゃいますよあくまで下品にならないレベルですけどね感」すらこぼれ落ちそうなああいう〈成功したビジネスマン風〉のスタイルは、服装そのものというより、その出発地点の〈思想〉みたいなもの、強さ、とか、美しさ、とか、もしくはそれらが内包する威圧感、等々のよって立つところが、“ロックっぽくしてるときの尾藤”(もしくはその緊張感を“ダジャレでまぜっかえす尾藤”)が発散する〈それら〉のよりどころと対極をなしているもんね、みたいな大げさなことを言ってみたりもするけど、
要するに、いつもはネクタイ緩めがちであるところの尾藤イサオ(※おおよその印象による私調べ。)が、「きっちり大人の格好をしている」というだけで、もう、この上なく心地良い違和感が生じている。ていうか、もっと要するに、こういう服を着てもカッコイイところがカッコイイ。つまりカッコイイ。


ドラマに戻ろっと。
ええとそう、主人公サイドから、〈ちょっと困った団体〉の〈主に困ったひと〉として誘導的に紹介されたのち、にっこにこの初登場。ふふふ、はやくも完璧にうさんくさい。あ、いい意味でね!いい意味でうさんくさいんだからね!
…3話ではおおむね、まろやか極まりないうそんこスマイル(かわいいし!)で、いかにもお題目なキレイゴトを並べる(いい声だし!)木戸専務理事。どどどど、どうしよう、好きだ。大好きだ。あんなにいい意味のうさんくささをこれまで目にしたことがない。
私だったらこの時点で、〈イエッサ、一生ついていきます!〉一択なんだけど、君嶋は心が強いので、ちゃんと挙手してドラマを先に進める。えらいとおもった。

★挙手して立ち上がる君嶋を見上げる、「ん?」て顔がかわいいので見てほしい。


さてここで、〈「ああ」がいい音すぎる件〉についてすこし語らせてほしい。ていうか語る。
君嶋の自己紹介に対する木戸さんのお返事、「ああ、トキワの」の「ああ、」について語る。

「ああ、トキワの」→表情も語尾も絶妙にぼやぼやさせられている。「ああ、トキワの」…なんて続くんだろうか。ああ、トキワの…ラグビーやったことない子…かな…。思えば〈ラグビー未経験〉がマイノリティ要素になるっていう会議すげぇな。君嶋のアウェイ感を思うと気が遠くなるけど、それは、まあ、おいといて。
このセリフのですね、間投詞「ああ、」が、出た瞬間ふるふるっとなるくらいいい音なんで、あまねく万人に聞いてほしいとおもってるわけですよ!!
なんだろう、ひょっとしてこのまま歌い出すんじゃないかしら、と思うくらいいい音。わたくしはつねづね、尾藤が歌うと〈歌詞にない部分が聞こえる〉と主張しているんだけれども、その音マジックっつか声マジックっつか尾藤マジック?は、ある種類のセリフの場合でも成立するんだな、と知った。
『ノーサイドゲーム』を全話見終えた状態で3話までもどり、この「ああ、」を聞くとだね、この一声の中に、木戸さんのうさんくささだとか追従だとか葛藤だとかラグビー愛だとかほんのりした強さだとか業界人としての立場だとか義理だとか人情だとか秘められた情熱だとか大人としての弱さだとかそれでもやっぱりもっかいラグビー愛だとか、そういうものの全体が、すでに聞こえていた気さえする!
 ……いやちょっと言い過ぎた。
すみませんちょっと言い過ぎました、さすがにそこまで全部は聞こえないかもしれないけれども、つまりはこんくらい言い過ぎたくなっちゃうほどに、私はこの、「ああ、」が、だいすき。

★(君嶋の質問に答えるときに)手を組み替えるしぐさがかわいいから見てほしい。


おおむね素直な視聴者なので、木戸さんが出ていないときはもちろん君嶋/アストロズ方面に感情移入しているわけだけど、第3話に関して言えば、
それまでにっこにこでうさんくさかわいかった専務理事が、君嶋が大人の(マネーの)話をはじめることにより、しゅわんと顔を曇らせるので、「ちょ、君嶋さん…!」ってなったのはいたしかたないとおもうんだ。
この際のこころもちはおそらく、その会議室の長テーブルにひっそりと着席しているどこかのチームの名もなきGMに近いだろう。サイクロンズさんほどとんがってもないし重要でもないしなんなら優勝争いにもぜんぜん絡んでこないどこかのチームの名もなきGMのこころもちである。つまりは、
「言ってることはわからないでもないが! 今ここでそんなこと言いだして僕たちの木戸先輩を困惑させるのはやめてください!」
みたいなこころもちだ。あくまで想像上のGMの想像上のこころもちだけどね。…たぶん大学ラグビーの後輩とかなんですよ名もなきGMはね。彼にとっては、20期くらい上の大先輩で雲上人なわけですよ木戸専務理事はね。「ちょ…!」てなるもの。なったもの。

★腕時計してる!ことすらなんか嬉しい。
(このあたりの歓びは説明のしようがないのでやや個人的なフェティッシュであることを認める。)

★君嶋に「ラグビーのご経験は?」と尋ね、あっさり「ありません。」と答えられたあとの顔がかわいいので見てほしい。


この、「ご経験は?」って、知ってて聞いてるよね?なお姑さんゼリフなんだけど、ここで前提とされてる建前(僕たち全員ラグビー大好きです、みたいな)が、建前でありつつ噓ではない、というギリギリ美しいラインなので、やな感じがうすい。
〈ラグビーはアマチュアのスポーツ〉も、〈ここは会社ではありませんよ〉も、あるレベルまでは本気で言ってるから、(その階層を共有しない君嶋が登場するまでは)呪文として成立する。キレイゴトに雑味がない。雑味がないキレイゴトというのは、要するにきれいなんだと思う。


それからね、「ラグビーのご経験は?」のくだりで、改めて思ったんだけども。
『ノーサイドゲーム』の尾藤、きちんと“むかしラグビーしてたひと”ぽく見えるのね。
というのも、ドラマと同時進行で、&ドーン時代のキレキレダンス動画をヘビロテし、「腰ほっそいな!」とか言ってる系ファン(俺か。)の身とすればですよ、該当年代頃の尾藤イサオのシルエットがよぎりすぎて、「いやいやいや、あんなおっきいひとたちに乗っかられたら折れちゃう!ラグビーとかだめだから!やめてやめてむり!」って懇願してもおかしくないくらいじゃないかとおもうんだけど(いやおかしいけど)、ところがどっこい、ぜんぜん違和感なかったな。あれはなんの魔法ですかね。演技力ですかね、衣装とかですかね。私が知らないだけでほんとはラグビーやってたんですかね。
種明かししてほしくはないんだけど、魔法だとしたら、すっごく善い魔法!

★(登場シーンの)いっちばんさいごで、一回だけ〈悪いお顔〉するよ!
やっほう、ようこそ池井戸ワールドへ。


(もうひとつだけ聞いてほしい。)
すごいマニアックに聞こえると思うんですけど……聞こえるだけじゃなくてたぶんマニアックなんでしょうけど……尾藤が「ラグビー」って言うときの、「グ」の音が、たいへんに好きです。
これ、うまく表記できないんだよな。「グ」と「ク」の中間くらいの音に聞こえるの。鼻濁音ともちょっと違う。
その音が、すごく、いいのです。誤解をおそれず言えば、セクシーなんだとおもう。色っぽい音なの。自分ではどうしても出せない音なので、たぶんフェロモンが足りてない。

その「グ」と「ク」のあいだの音をもちいて、〈ラグビーはもっと神聖なものです〉とかおっしゃるので、そのたびに〈イエッサ〉と思っていた第3話の感想をおわります。


(ラグビーの写真 ↓ )
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