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まさか私が!?ラジオドラマで脚本家デビュー

私「僕、実はずっと脚本を書いてまして…だけど、ラジオドラマとか…そんなの無理ですよね。」
千葉アナ「ラジオドラマ…希望を捨てちゃいけません。あきらめたらそこで試合終了ですよ。」
私「千葉先生…!!…ラジオドラマの脚本を、書きたいです…。」

さて、いきなり某バスケ漫画のように書き出してしまいました。昨年末のことなのでうろ覚えなのですが、確かこのようなやり取りがあって、すべては始まった気がします。(※若干脚色あり)

2010年にNHKに就職して以来、ずっとイベントの運営や企画を中心にやってきた私が、このたびラジオドラマで脚本家デビューすることになりました!!

これまで“イベント”を仕事にして生きてきました

私は就職して以来、NHKの公開番組・イベントの運営・企画を仕事にしています。記事をお読みの皆さんは、「公開番組」というと何を思い浮かべるでしょうか。一番知られているものは「NHKのど自慢」でしょうか。他のイベントでは、例えば、「おかあさんといっしょ」のコンサート、「NHK全国学校音楽コンクール」、「ラジオ体操」などはご存じの方も多いと思います。

私の業務は…、
まず、イベントをここで実施しますよ!という情報発信。そして、出場者や観覧者の募集、宿泊・弁当・移動手段の手配など、さまざま。

そうしたイベントの中で、私は特に福祉に関するテーマに関心を持つようになりました。例えば「障害のある方が社会で生きていくうえで抱える困難や生きづらさを、自分の仕事を通してどうにか解消していけないだろうか」、そう考えて企画したのがことし1月に開催した「NHK手話ニュースキャスター ファンミーティングin仙台」。

手話ニュースキャスターのみなさんが、ニュース制作の舞台裏や苦労したことを話したり、手話によるコントやお芝居などを披露したりする、というものでした。

画像 イベントのようす
今年1月に開催した「NHK手話ニュースキャスター ファンミーティングin仙台」

当日は、来場者の7割が聴覚に障害がある方でした。本番中は客席からよく笑い声が起こるなど盛り上がりを見せ、私はホッと一安心…。終演後笑顔で帰っていく方々の姿を目にして、「実施できてよかった!」と心の底からやりがいを感じることができました。

さて、このようにイベントをメインで担当してきた私ですが、ほかに広報業務も担当しています。昨年末、新年度番組の広報担当だった私は、ポスターのビジュアルなどについて打ち合わせをすることに…。図らずも、そこからラジオドラマの企画は動き始めたのです!

子育て世代に寄り添うラジオ番組

企画のきっかけになった番組は、その名も「Nandaryナンダリー」。今年4月に始まったばかりの、平日の午後5時5分から東北地方向けに放送している生放送のラジオ番組です(ラジオ第1)。番組名の由来は「なんでもかんでも」と「ダイアリー」を掛け合わせた造語で、東北のゆうどきを目一杯使って、さまざまな楽しみを見つけていってほしいという思いを込めています。

画像 番組ポスター

パーソナリティーは、千葉美乃梨アナウンサー。千葉アナウンサーは2児の母、つまり働くママということもあって、「Nandary」は「子育て世代に寄り添うラジオ番組」をコンセプトにしています。

さて、昨年末、新番組「Nandary」が始まるにあたり、関係者で打ち合わせを行いました。その中で、千葉アナウンサーから思いがけない話が飛び出しました。

「『Nandary』は、子育て世代などのリスナーに寄り添い、ホッと一息ついてもらったり、元気になってもらったりする番組を目指していきたい。そのためには番組をどんどんパワーアップ、成長させていくことが必要!だから、アナウンサーだけではなく、いろいろな人に番組作りに参加してもらい、それぞれ得意なことを活かしてもらいたい」

それを聞いて私には何ができるだろう?と自分に問いかけてみて思いついたのが、子育てをテーマにしたラジオドラマだったのです。実は私は学生時代から演劇活動をしていて、脚本も書いていました。そこで「ドラマの脚本だったら書けるぞ!」という思いが湧いてきたのでした。

繰り返しになりますが、「Nandary」のコンセプトは子育て世代に寄り添うラジオ番組。放送時間は午後5時台。つまり、子育てまっただ中の多くの保護者の方は、仕事から帰る途中だったり、夕食の準備をしたりと、忙しい時間帯です。例えば車の中で、あるいはキッチンでイヤホンをしながらラジオを聞いている方も多いのでは…。それならば、そういった子育て世代のリスナーの方が思わず共感したり、クスッと笑ってしまったりするような、家族を主役としたラジオドラマが展開できないか、と話は進んでいきました。

また、千葉アナウンサーから聞いた育児休暇中のエピソードも私の頭の中に残っていました。千葉アナウンサーはお子さんの夜泣きで目が覚めた時、お子さんをあやしながらよく深夜のラジオを聞いていたそうです。人気の歌手やタレントが楽しく進行していくラジオを聞いて、「自分は1人じゃない」と勇気づけられた、と彼女は話していました。

新番組「Nandary」も、そしてラジオドラマコーナーも、そんな子育て中の方に寄り添える存在になれれば…と強く思いました。

そんなこんなで、ついにラジオドラマの企画はスタートしたのです!

企画から実現までの道のり

ドラマの主要キャラクターはこちらの4人。

・主人公は、千葉アナウンサーの分身の灘田利なんだりみのりママ、35歳。夫と共働きしながら2人の子どもを育てている。
・お姉ちゃんは5歳の女の子、椿つばきちゃん。愛称は「つーちゃん」。ちょっとおませな女の子。
・弟は、生後10か月の男の子の赤ちゃん、憲伸けんしんくん。愛称は「けんちゃん」。自分のかわいさを自覚し、家族の中で実は、いちばん周りをよく見ている。
・最後に、灘田利なんだり一真パパ、36歳。仕事にも、家事・育児にも 一生懸命だが、不器用でどこか頼りない。


画像 なんだり一家のイメージイラスト
灘田利なんだり一家のイメージイラスト

基本は4人の家族ドラマで、さまざまな「育児あるある」をテーマに、笑いあり、ちょっと涙ありのストーリーを展開していく、という方向性が固まりました!

タイトルは「なんだり一家 ドタバタ日記」です。

ただ、企画は順調に進んだわけではありませんでした。上記の設定をもとにサンプルの台本1・2稿を書いて、「Nandary」制作チームのメンバーに見せたところ…。

育児の大変な所ばかりクローズアップされていて、ああ大変だな、という
感想しか出てこない

笑うところが1か所もない

といった厳しいコメントが返ってきたのです。

しかし、ここで助け舟がありました。それは「Nandary」チームからの「育児の大変あるあるばかりを脚本にするのでなく、楽しい要素を入れて」というアドバイス。また、私と同じ部署のスタッフ(2人の大学生のお子さんがいるベテランママ)からは「そもそも親から子に対する愛情が感じられない!もっと愛を描いてほしい!」という助言がありました。

「そうか!それなら登場人物のママ・パパを、かなりの親バカにしよう。そして子どもたちがやんちゃで大変なことをしでかしても、つい許してしまうようなキャラにしていこう」と考えがまとまりました。

そうすることでストーリー全体を明るくし、子育て世代のリスナーの方にも笑って心晴れ晴れとした気分になってもらおう、というねらいが見えてきました。そこからは書くべきことが明確になり、脚本を仕上げるスピードも上がっていったように記憶しています。具体的に脚本がどう変わっていったかというと…例えば、子どもたちがファッションショーをして遊んでいるのを見て、みのりママが2人を叱るシーン。セリフが以下のようになりました。

・ビフォー
みのりママ「お、おのれ。次はファッションショーしとる!こらー!また散らかして!」

・アフター
みのりママ「や、やだっ!2人でファッションショーしとるっ!ちょう可愛いんだけどっ!ああっ、しかもけんちゃんがワンピース着てる!たまらんっ!…ねえ!ママもまーぜーて!」
「うっ!…ひゃあっ!もうけんちゃんしか勝たんっ!勝たんのよっ!」

画像 脚本のセリフ変更箇所

このように子どもを好きで好きでたまらない親の気持ちを表現しました。

次に提出した脚本は、千葉アナウンサー含む「Nandary」制作チームからもOKが!そしてついに!放送に向けて準備を進めていくことになったのです!

ついに記念すべき1回目の放送!

9月9日(金)放送の「Nandary」で、記念すべき「なんだり一家 ドタバタ日記」の第1話が放送されました!エピソードタイトルは「永遠のお片づけ」。夜、寝る時間になっても遊び続ける、つーちゃん(5歳)とけんちゃん(10か月)。主人公のみのりママは、子どもたちが移動するたびに、その場所を片づけるが、いっこうに終わらない…というストーリーです。自分が脚本を書いたラジオドラマが初めて放送される…それはとても大きな緊張と感動がともなう、かけがえのない時間でした。そしてなにより、今この瞬間、家事・育児に奮闘し、孤独感や生きづらさを感じている保護者の方に聞いていただき、少しでも皆さんの心が軽くなればいいな、という気持ちでいっぱいでした。

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「なんだり一家 ドタバタ日記」の第1話放送中のラジオスタジオ

過去に放送したエピソードは、「Nandary」のホームページから聞くことができます。ぜひ聞いてみてください。

せっかくなので、手前みそではありますが、各エピソードについて私のオススメポイントを紹介します。

① 男性アナウンサーが赤ちゃん役!?
今回のラジオドラマは、登場人物全員の声を、仙台放送局のアナウンサーが担当することになっています。第1話の「永遠のお片づけ」では、生後10か月のけんちゃんを、なんと新人の黒澤太朗アナウンサーが担当! 赤ちゃんならではの「だあだあ!」「きゃいっ!」といった甲高い声のセリフを、黒澤アナが熱演する様子を想像しながらお聞きください。

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黒澤太朗アナウンサー、生後10か月の赤ちゃん役の声を収録

②おませな女の子、つーちゃんの秘策とは!?
第2話の「永遠のなんでなんで」では、5歳の女の子、つーちゃんが、ママに「なんでなんで」と子どもらしくさまざまな疑問をぶつけます。しかし夜、寝る時間になっても質問が止まらないため、みのりママは寝たふりをして、つーちゃんを寝かしつけようとします。そこでつーちゃんがとった大人顔負けの作戦とは...!?終盤のつーちゃんのセリフをお聞き逃しなく!!

③ 赤ちゃんが大人に語りかけてくる!?
第3話「けんちゃんからのエール」では、生後10か月のけんちゃんが、どうしても伝えたいことがあったため、パパの心に語りかけてくるというストーリー。けんちゃんを演じる手嶌真吾アナウンサーの、冒頭の赤ちゃん語、そして、それ以降の語りかけパートの演じ分けにもぜひご注目ください!

脚本まだまだ執筆中!

さて、ラジオドラマ「なんだり一家 ドタバタ日記」ですが、10月7日(金)から本格スタートとなり、現在は週1回(毎週金曜日)のペースで放送中!来年3月の最終回まで継続する予定です。

「Nandary」は、東北地方向けの生放送ですが、NHKラジオのアプリ「らじる★らじる」では、リアルタイムでも聞いていただけますし、聴き逃し配信もしています。日本全国どこからでも聴けます!

ドラマの脚本が完成してから放送されるまでには、セリフ収録や、編集などで多くのスタッフが関わり、熱い想いを注いでいることを今回あらためて実感しました。

ラジオドラマが放送中のいま思うこと、それは…やはり1人でも多くの視聴者の方に番組を聴いていただきたい!そして私たちの想いよ、届け!!ということです。私が当初から持っていた「子育て世代の方などに聴いていただき、少しでも心軽やかに、明るくなってほしい!」という目標はより強くなっています。

みなさまにはぜひ一度、放送やアーカイブページで聴いていただき、ご意見・ご感想などお寄せいただければ幸いです…。

今後とも「Nandary」と「なんだり一家 ドタバタ日記」をなにとぞよろしくお願いします!!

画像 筆者

沼邉 茂希
仙台放送局 視聴者リレーションセンター メディア展開グループ 
2010年入局。出身は宮城県。初任地は鳥取放送局で2019年から仙台放送局に勤務。趣味は映画観賞で、三度の飯より映画好き。好きな映画監督は、スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・ベイ、黒澤明。尊敬している俳優は仲代達矢。

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