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Nantes Food Forumとは - 1.食の未来をフランスの地方都市、ナントから考える。

Nantes Food Forum。
地元民以外で、このイベントを知っている人がどれだけいることか。

ナント市と食の総合ウェブ日刊紙「Alimentation Generale」が共催し、第一回目が2017年6月に開催、今年は10月3日〜7日の5日間開催されました。建築大学や美術学校のキャンパスなど、ナント島の7ヶ所で会議、ラウンドテーブル、アトリエ、展示会、食事会などが開催され、多くは無料で参加できるものでした。
同イベントは、「一般来客が世界中から招聘する主要アクターたちと席を分かち合うことを通じて、よりよい食事を目指すことが決して一部の人に限られたものではない…ということを示す」ことが目的。今年は「米」がメインテーマでした。
先月頭にパリの知人ジャンくんと話しをした際にこのフォーラムが話題になり改めてプログラムを見たら、これが興味深い。実際に見に行けたのは1日だけでしたが、忘れられない経験をすることが出来ました。しかも食に精通しているエキスパートの方々とご一緒させて頂いたので、一人ではわからなかった色々なことも理解することができました。
とても素晴らしいこのイベント、サイトは仏語オンリーで英語もなし。勿体無いので、簡単に日本語でまとめてみる事にしました。

が、そもそも「ナント」…と聞いて、「ナントの勅令」しか思いつかない方々へ。

ナントは西フランスにある地方都市、パリから電車で2時間、ロワール河沿いにあります。町としての人口は30万人ですが、都市圏人口は100万人近く、フランスでは大きな都市になります。
古くからケルト民族が住み、ローマ帝国の一部となる時代を経ながらも、ブルターニュ公国の政治的中心都市としての役割を長く果たしていました。近代に入り、三角貿易が港町に経済的繁栄をもたらし、南米から砂糖やラムなどを輸入していた名残が砂糖精製工場やビスケット工場の歴史に見て取れます。
尚、港湾機能は現在ではロワール河河口のわが町サンナゼール市周辺に移動しています。

さて、Nantes Food Forum。フランスのみならず中国、アメリカ、欧州各地からゲストスピーカーや有名料理人を招聘していますが、コンセプトはあくまでもカジュアルに、難しいことは言わず楽しく食を一緒に考えようという内容。地元民としては、いかにもナント市っぽいなあと思いましたが、そもそも、何故このようなテーマのイベントを始めたのでしょう?

同イベントの担当者のリシャール・ボッセイ氏にお話を伺ってみました。
リシャールさんはナントの文化施設のプロモーションを通じた観光誘致を行う地方公社Le Voyage à Nantesで食プロモーションの責任者です。市が2011年から発行しているナント市食ガイドLes Tables de Nantesの担当者でもあります。
ナント市は戦略として、日々の食を通じて食の未来を考えることをテーマの中心に据えることにしたとの事。リヨンの「美食」、ボルドーの「ワイン」などとの差別化の方法が「日々の普通の」食。これと言った突出した特徴があまりないナントだからこそ選んだ戦略ですね。
この「普通さ」が、とても快感に感じました。私自身の主な仕事は、日本食材のプロモーションや販売活動です。日本食材プロモーションに当たって、有名シェフやレストランに使ってもらうことの効果の大きさは十分理解しています。それでも、パリの一等地で500万円かけて有名シェフによるイベントをするのであれば、50万の予算で十人の地方在住の料理の先生にイベントをやってもらう方に魅力を感じるタイプです。なので日々の食卓を通しての食の未来を考えるという、等身大で野心的なことを行う姿勢にとても共感を覚えました。
かつ今回衝撃的だったのが、オリビエ・ロランジェ氏やアリス・ウォーター氏と言った著名人が登壇しながらも、ごく等身大のイベントを作り上げていること。これはナントという街の性質によるところも大きいでしょうが、これら有名人の方々のお人柄と、オーガナイザーの腕前…ということができるでしょう。
次のnoteでは、これらのメインゲストの方々の紹介をしていきたいと思います。

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