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Nantes Food Forumとは - 2.「日々の食卓から食の未来を考える」に登壇する人たち

「日々の食卓から食の未来を考える」ことを目的として開催されるNantes Food Forum。Nantes Food Forumとは1では、ナント市の紹介も加えながら、同イベントのコンセプトを紹介させていただきました。

第2回目では、こちらに参加されたメインゲストたちを、ナント市の食ガイドLes Tables de Nantesの別冊2018年秋冬号に掲載される「リーダーたち〜NFF2018に参加する6名の紹介」から抜粋してご紹介。私は世界的に有名なCarolyn SteelさんやAlice Watersさんを今回このイベントを通じて初めて知ったという、恥ずかしい話…。
写真は別冊P4-5に掲載されているものを使っています。

Carolyn STEEL
イギリスの建築家、研究者、ライター。かつてはケンブリッジ大学やLSEで教鞭をとっていたキャロリン。2009年にHungry City - How Food shapes our Livesという、都市形成の歴史を食の観点から描きだした話題作を出版、同年TEDにも登壇しています。なお、Hungry Cityは2016年に仏語に訳されて出版されていますが、日本語訳はまだなのでしょうか。

Michel NEUNLIST
ナント大学所属の学者で、脳神経消化器の専門家。消化器には脳に負けない数の神経が通っています。消化器の異常は行動・気分に対して影響を与えます。お腹とは、正に第二の脳なのです…ということで、食を体の観点から考える講演を行われました。

LA SAUGE
産直共同購入マッチングサイトLa Ruche qui dit oui!の元CFOのSwen Déral氏と農業エンジニアのAntoine DEVINS氏が運営する、都市農園を推進する社団法人。NPOも並行して運営、こちらに1万人加盟、既に5万人が参加しているとのこと。フランスでは夏至の日に野外でみんなで楽しく音楽を楽しもう!をモットーに各地で音楽祭が行われるのですが、同じようにみんなで楽しく農業を楽しもう!というノリで「都市農園48時間」というイベントを実施しています。
パリ北部のいわゆる郊外にて農園を運営、ナントでは2020年から農業と社会活動を一体化した場所の運営に関わるそうです。


Alice Waters
サンフランシスコ近郊の町バークレーに1971年に創業のレストランChez Panisseオーナー。日本からいらしたエキスパートのお二人に、この素晴らしい女性について色々教えて頂き、また英語のサイトもいくつか読んでみました。
オープン当時から有機で季節の食材を使った、地産地消のコンセプトで運営されるレストランは、米国で最も予約を取るのが難しいレストランの一つなのだそうです。19歳の時に訪れたフランスの食文化にも触発されたとのこと。彼女の米国での人気は、一人で食事をとる子供が多い同国食習慣とも密接な関わりがある気がするので、家族で食事の食習慣を守るフランスでの受け止められ方も、今後ウォッチしてみたいです。
日本語のサイトも色々あるのを(今更!)拝見しました。「美味しい革命」という言葉で知られているのですね。トークショーのお話を観客として伺い、その美しい佇まい、話し方、パッションに感動し、また、経営者としてのビジョンとアクションにも感銘を受けました。生き方革命以上に、働き方革命をされている方の気もします。

Xavier Hamon
Slow food Chef's Allianceのフランス支部会長。2017年11月に立ち上げられたたNPOで、第一回目の集まりはパリのワインバーで行われ、目指すのは高級レストランではなく、スローフードの概念に沿ったお料理を提供すること…に、オリビエ・ロランジェ氏やミッシェル・ブラ氏などスター料理人も参加しています。
ザヴィエ・ハモン氏は長年カンペールの「Comptoir du Théâtre」のシェフを26年間勤められた方です。現在はボランティアとしてSlow Food Chef's Allianceに関わられています。同連盟には全世界で千人以上のレストラン・料理人が加盟しています。これらのお店では材料の生産者名を明記し、生産者さんたちの仕事を明示・価値化することが求められます。
以下で世界中の加盟店を検索ができますので、レストラン選びのご参考に。日本ではまだどなたも加盟されていない様ですが、きっとこれからですね。

BERJAC(Joël BLANCHARD)
BERJACは食材卸専門業者で、ナント、レンヌ、ソミュールの卸市場に居を構えています。創始者の一人、ジョエル・ブランシャール氏が登壇します。
「BERJACはプロの卸業者として、プロの飲食業者との仕事をする企業です。お客様の要望にオーダーメードでお応えします。例えば140gのランプ肉のステーキを1000枚のオーダーにも直ぐに対応ができます」
尚、BERJACをはじめナント国益市場(MIN de Nantes)に居を構えているのは全て零細・中小企業です。これはほとんどのフランスの国益市場についても言えることなのではないでしょうか。地産地消の動きの中で彼らの役割はなんなのでしょうか?

番外編1:Olivier ROELLINGER
オリヴィエ・ロランジェ氏は別冊の6名…の中には入っていませんでしたが、この方を語らずにはNFFを語れないので、紹介させてください。
ブルターニュで3つ星を返上したシェフ…で有名なオリヴィエさん。日本でも「スパイスの魔術師」として良く知られています。今回、直接お会いする機会があり、通訳もあったので事前の勉強を通じて彼のフィロソフィーについて学んだこともあり、すっかりファンになってしまいました。
地元の素材をスパイスを使いながら美味しく作り上げる料理がオリヴィエさんの特徴。本拠地カンカルは要塞都市サンマロに近く、ここはフランス国王公認の海賊コルセールが寄港する港でした。彼らがスパイスを遠くインドから運んできた名残があり、このスパイスを使う…ということも、地元文化に根ざした調理だったのですね。
現在はこれらのスパイスを世界各地から自らセレクトしたものを販売するスパイス店を含む、飲食・宿泊施設を運営するLes Maisons de  Bricourtというグループの経営者であると共に、社会運動家でもあります。現代社会では、食は我々の手を離れ工業生産にゆだねる様になってしまいましたが、それを自らの手に戻すことで、地球の未来を守っていくことを伝授する活動を続けられています。その偉大さには畏敬の念すら覚えますが、彼の眼差しと行動は市井の人々の立場で、かつてのグランシェフの謙虚さに頭の下がる想いしかありません。私の中の「グランシェフ」に対する漠然とした違和感を見事に取り払ってくださいました。何かの機会にオリビエさん特集もして見たいです。

番外編2:ウェブ日刊紙Alimentation GénéraleのPierreとElisabeth
バックステージで活躍されている方々もちょっとだけご紹介。
今回、トークショーの担当をしていたジャーナリストのStéphaneさんとのお話をきっかけに、日本から来てくださった方々を編集長のPierre HIVERNAT氏とイベント担当のElisabeth MARTIN氏と引き合わせることができました。Pierreさんはジャーナリストとして長く活躍されていらした方、Elisabethさんは欧州文化都市のプロジェクトを担当するなど、イベントのプロです。このお二人が中心なって食を横断的に考えるウェブジャーナルとイベント企画運営をされています。メンバーは目的に応じて有機的に集まっている人たちで、普段は会社員だったり、フリーランスだったりと色々な様です。
これまで、生産から食卓までのバリューチェーン全てに関係する食についての記事をメディアというのはこれまでなかったとのこと。拝見すると確かに、色々なテーマで興味深く読み応えがあり、私たち一般人が知りたいことを色々な切り口で紹介してくれています。早速購読することにしました。
気さくなお二人のおかげで私たちは雨の中夕食会への移動をPasacaleさんに同乗させていただき、夕食会ではAlimentation Generaleのチームの縁の下の力持の皆さんと楽しくご一緒させていただくことができました。
こちらの記事も、いずれ日本語にして紹介させて頂きたいです。


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