ニア日記 #1 ニアとの出会い
2023年3月27日
私の28回目の誕生日の次の日
引越しのための手続きで、はるばる1時間以上かけて向かった街のペットショップにその子はいた。
黒混じりの焦茶の毛色
不安と期待が入りまじった瞳
小さな小さな体を震わせて、その子は私の膝の上に乗っかった。
「先代犬のアンちゃんに似てる」
一目見てすぐに思った。
小学生の時に飼い始めて、社会人二年目の時に亡くなったミニチュアダックスのアンちゃん。
学校や会社ばかりで、ほとんど構ってあげられなかったあの子。
飼い主としてちゃんとお世話できないまま死なせてしまったことが、今までの人生で1番の後悔だった。
アンちゃんを亡くしても悲しむ資格なんかないと思うくらい、わたしは彼女に何もしてあげられなかったんじゃないかと思う。
それでも、どうしようもなく犬が好きなのだ。
私にそんなことを言う資格はないけれど。
それでも、また犬を迎える機会が来たならば、もう2度と同じような思いはさせたくないと思っていた。
だから、あの日そのカニンヘンダックスと出会った時、心は大きく揺れたし、同じくらい迷いや葛藤がふくらんだ。
なんとなしにペットショップ内を見回すと、そのカニンヘンダックスが他の子犬よりもかなり値下げされていることに気づいた。
「もうだいぶ売れ残っちゃってるんですよ」
そのペットショップの店員が言う。
その時にハッとした。
ペットショップで売れ残った子犬は、その後どうなるのか。
気になって一度調べたことがある。
「保護犬として譲渡される」
「繁殖犬として引き取られる」
「悪質なペットショップだと殺処分」
デマだと信じている(信じたい)が、いやな妄想がぐるぐる頭の中を駆け回った。
気づいた時には、私は旦那を説得しそのカニンヘンダックスをの売買契約を結んでいた。
幸いにも4月いっぱいで会社を退職し、そこからは家業をやりつつのんびり勉強でもしようと思っていたところだった。
つまり、基本的には家にいられる。
子犬を迎えるにはまたとない絶好の機会だったのかもしれない。
そうして、結婚一年を迎えた夫婦とカニンヘンダックスのニアとの暮らしが始まったのだ。
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