見出し画像

一人目の息子の話

私はバツニだ。

バツイチは変換候補に出てくるのにバツニは出てこないのね(笑)


元嫁それぞれに息子が一人ずつ居る。

最初の離婚は、私の病気が再発した時だった。

この記事の話から数年後。

安静にしなくてはいけなくて、現場(探偵)に出ることもできなくなった。

だが、当時勤めていた興信所の社長は、

「基本給は払ってやるから、休んでしっかり治せ」

と言ってくれた。

まだ2才の子供を抱えた私にはこれ以上ない心遣いだった。


家に帰り奥さんに社長の話を伝えると、

「生活できないから出ていきます」

と荷造りを始め、二時間後に息子を連れて出ていった。


その足で私の実家に行き(地元がおなじなのだ)、
私の親に、

「ネリケシの病気がこんなに大変だと思わなかった、離婚します」

と告げたらしい。

親から連絡が来てそのことを知った。


その時は、ただ呆然としていて何が起きたか理解できなくて、

大好きだった息子が突然居なくなってしまったことに、


現実を受け入れられなくて、

病気でトイレ以外は極力横になっていないといけなくて、


会社の仲間が様子をみにきてくれなかったら、ひっそりそのまま死んでいたと思う。


元嫁1が出ていったのはたぶんいろんな事が重なって、
限界だったところに病気が再発して、

それがトリガーになっただけだと、だいぶ経ってから理解した。
違うかも知れんけどな(笑)


探偵の仕事が忙しくて時間は不規則だったし、田舎から出てきて友達も居なくて、一人で子育てして、

ストレスが相当たまってたんだろうとおもう。

家族の繋がりがとても強い家だったから、田舎に帰りたかったんだと思う。

離婚届が郵送で届き、なんだかわからないまま当時は離婚となった。


なんとか病気も落ち着き、仕事にも復帰して、

やがて独立して探偵事務所を開き、時はあっという間に過ぎた。


ひどい話だが息子に会おうとは思わなかった。

まだ2才だった息子はもう父のことなんて忘れてるだろうから、

私は死んだことになってると元嫁に言われてたから、

会ってはいけないと考えてた。

息子が高校に入るとき、戸籍を見たらしく私の生存を知ったらしい。

「会ってあげてくれませんか?」

と連絡が来た。


息子が会いたいと言ってくれるなら会わない理由がない。


久しぶりに田舎に帰り、息子と対面した。

私よりはるかに背の高い、イケメンの男子(笑)が緊張した顔で待っていた。

私も当然緊張しかない。
死んだことになってたしな(笑)

「俺よりでかいのかよ(笑)許せんな(笑)」

と、笑わせるのがやっとだったよ。

元嫁がしっかり育ててくれたおかげで、息子はとてもいい子だった。

三人で会ったのはそれが最初で最後になったが、

大学に進んだ息子の一人暮らしの家に遊びに行ったり、
LINEや電話でお互いの近況を伝えあったりしていた。


息子から

「飲みにいかん?」

と連絡がきて、二人で初めて酒を交わすことになった。

息子は東京の会社に就職したのだ。

私のお気に入りの、下町の酒場で待ち合わせをした。もつ煮込みが絶品なのだ。


久しぶりに会った息子とビールジョッキをカチンと合わせると、

「じつは、結婚したんだ」

と、恥ずかしそうに指輪を見せてきた。


「まじかよ!おめでとう!」

と乾杯をし、グビグビと旨いビールを飲んでる最中に、

「実は…。嫁が浮気してるかも」

と切り出してきやがった。

あやうくビールを吹き出すところだ。

結婚報告の数秒後に嫁の浮気疑惑て。

「展開早すぎだっつーの(笑)」

と頭を小突き、詳しく聞いてみると、元探偵でなくても、クロだとわかる状況だ。


「オヤジとツーショット撮っていい?」
「顔バレしたら尾行しづらいから、奥さんには見せるなよ」

そんなことを話ながら、二人ともヘベレケになるまで飲んだ。

探偵に依頼したら自分のなかでなにかが変わってしまう。

踏み越えてしまったって感覚にきっとなる。

自分がもうほんとにダメだと思ったらまた相談してきな。

そう言って別れた。

それから何度か「証拠の集め方」を聞いてきたり(笑)してたけど、
今のところまだ別れてないようだ。


そんな息子が最近やたらと、

「オヤジの血だわ~」

とか、

「血は争えんなぁ」

とか、言ってくる。

今回登場しなかった息子2も、

「最近、とうちゃんにそっくりになってきた、やだやだ、ってかあちゃんによく言われる~」

などと言ってくる。


こんなオヤジの血を引いてもろくなことはないぞ…。
と思いながらもなんだか嬉しいんだよな。
ごめんよ息子たち。

愛してるぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?