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フリーなわたしとサタデーナイト


今から10年以上前だから、私がまだ40代でピチピチだったころの話。

ある山に独りで登り、途中の休憩小屋に入ると先客が居た。
薄くなった白髪と顔に深く刻まれたシワの様子から70近い男性に見えた。

挨拶だけ交わしてお互い無言でくつろいでいたのだが、
彼が私をチラチラ見ながらこう話しかけてきた。

「おたくもフリーでしょ?フリーですよね?」


私は離婚して独り者だったし、単独登山だったし、フリー?と聞かれたら、まぁフリーなので、

「まぁ、そんなもんっす」

と返事をしたのだが、
途端にそのオヤジは、うんうんと頷きながら、

「わたしもです、もう勤めていたころと比べると時間が有り余っちゃってねぇ」

などと遠い目をしながら、これからのコースや帰り方、見所などを滔々と語り始めたのだが、

いやいや待て待て…。

ここで、理解した。オヤジの言う「フリー」。
どうも定年後に趣味で山登りしているお仲間に見られている40前半のあたし(笑)

「私も似たようなもんすよ。退職した途端に部下からも取引先からも年賀状すら送ってきませんわ。さみしいもんですなぁ。じゃ、お先に」

と話を合わせ、小屋を早々にあとにしたものの、身も心もすっかり70歳な気分になり、そのままとぼとぼと下山しました。

とりあえず年相応くらいは保ててるべと思っていた、あの頃。
白髪も染めてた頃なのに、40代で見た目70歳て。

若作りはそんなに興味ないけどせめて年相応に保ちたい。
あれ以来、痛切にそう思い、かといって特にお肌のお手入れなどせずに

ただ気持ちは老け込まないようにやってきた。
ほら、内面から滲み出るもの大事じゃない?

ようやく時代?が追いついた。
いや、当時に比べるとそりゃあ劣化してるが許容範囲だ、ギリギリ。

鏡を見て白髪交じりの髭を手入れし、
最近増殖著しい眉毛の白髪に一抹の不安を覚えながらも、

なかなかいい感じになってきたと自分に言い聞かせてるサタデーナイト。






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